1 / 4
1
しおりを挟む
「━━別れよう、リディア。
元々、この結婚は間違いだった。なかったことにしよう……。お互いの、いや、私達三人のために。
私の署名はもう記入してある。
リディア、後は君の署名だけだ。
署名を終えたら、私が責任を持って今日中に離縁届を提出してくる。早い方がいいだろう?」
「━━間違い?」
「あぁ、そうだ」
開口一番、夫であるフレデリックから離縁宣言をされる。あぁ……先程聞いた噂は事実なのね。どうして、今頃になってそんなことを言うの。 こんなにも、私はあなたのことが好きなのに……
「フレディ、本当に間違いだと思っているの?」
「リディア、私のことは、今後はフレデリックと呼んだほうがいい。アーサーが勘違いするといけない……私達が、愛し合っていると。
私達は、アーサーを裏切ってはいないのだから。
勿論きちんと、私の口からもアーサーには説明する。リディア、君は心配しなくてもいい。
私達は白い結婚なのだから。アーサーも理解してくれる。」
「アーサーが?」
「あぁ、リディアも新聞をみただろう?
アーサーが帰ってくる。7年だ……
無事で良かった。リディアも……本当は待っていたのだろう?
私は、君の気持ちを大切にしたい。
もう、私の役目は終わった。君を自由にしたい。アーサーの元に……戻るといい。」
じゃあどうして、そんなに苦悶の表情を浮かべているの?
ほんの少しも私への愛情はないの?
どんなに手を伸ばして触れようとしても、あなたはいつも私の手を取ってはくれない。
フレディの手元に置かれた新聞の見出しが、目に飛び込んでくる。
7年前、遠征に行って行方不明となっていた隊員が発見保護されたと。
ずらりと並ぶ名前の中に、私の元夫であるアーサーの名前もある。
━━生きていたのだ。
あれは7年前、隣国との諍いが絶えなかった頃。アーサーも国境付近の警備強化の為、駆り出されたのだ。緊張状態が続いて、隣国に捕虜として捕えられたり、殺された者もいる。1年後、和平条約が無事に結ばれて、徐々に兵士達も戻ってきた。
が、戻ってこない者もいた。アーサーもそのうちの一人。捕虜として連れて行かれたのかも不明。遺体を見た者もいなかったので、人目につかない場所で息絶えたのかもしれなかった。
2年、3年、4年と何の音沙汰もなく月日が流れた。この国では、配偶者が5年行方不明の場合は、離縁が認められる。
そんな5年目のある日、フレディから結婚の申し出を受けた。
「リディアが、いつまでもアーサーの帰りを待てるように結婚してほしい」と。
いつまでも、行方しれずの夫の帰りを待つかわいそうな妻。
実は、夫に捨てられたんじゃないかとか。
世間では色々と噂されていた。
世間の目から守るように、フレディは契約結婚の提案をしてきた。
「絶対に、あなたには触れません。白い結婚を貫きますから」と。
リディアとアーサーは、私の大切な友人だからだと。
元々、この結婚は間違いだった。なかったことにしよう……。お互いの、いや、私達三人のために。
私の署名はもう記入してある。
リディア、後は君の署名だけだ。
署名を終えたら、私が責任を持って今日中に離縁届を提出してくる。早い方がいいだろう?」
「━━間違い?」
「あぁ、そうだ」
開口一番、夫であるフレデリックから離縁宣言をされる。あぁ……先程聞いた噂は事実なのね。どうして、今頃になってそんなことを言うの。 こんなにも、私はあなたのことが好きなのに……
「フレディ、本当に間違いだと思っているの?」
「リディア、私のことは、今後はフレデリックと呼んだほうがいい。アーサーが勘違いするといけない……私達が、愛し合っていると。
私達は、アーサーを裏切ってはいないのだから。
勿論きちんと、私の口からもアーサーには説明する。リディア、君は心配しなくてもいい。
私達は白い結婚なのだから。アーサーも理解してくれる。」
「アーサーが?」
「あぁ、リディアも新聞をみただろう?
アーサーが帰ってくる。7年だ……
無事で良かった。リディアも……本当は待っていたのだろう?
私は、君の気持ちを大切にしたい。
もう、私の役目は終わった。君を自由にしたい。アーサーの元に……戻るといい。」
じゃあどうして、そんなに苦悶の表情を浮かべているの?
ほんの少しも私への愛情はないの?
どんなに手を伸ばして触れようとしても、あなたはいつも私の手を取ってはくれない。
フレディの手元に置かれた新聞の見出しが、目に飛び込んでくる。
7年前、遠征に行って行方不明となっていた隊員が発見保護されたと。
ずらりと並ぶ名前の中に、私の元夫であるアーサーの名前もある。
━━生きていたのだ。
あれは7年前、隣国との諍いが絶えなかった頃。アーサーも国境付近の警備強化の為、駆り出されたのだ。緊張状態が続いて、隣国に捕虜として捕えられたり、殺された者もいる。1年後、和平条約が無事に結ばれて、徐々に兵士達も戻ってきた。
が、戻ってこない者もいた。アーサーもそのうちの一人。捕虜として連れて行かれたのかも不明。遺体を見た者もいなかったので、人目につかない場所で息絶えたのかもしれなかった。
2年、3年、4年と何の音沙汰もなく月日が流れた。この国では、配偶者が5年行方不明の場合は、離縁が認められる。
そんな5年目のある日、フレディから結婚の申し出を受けた。
「リディアが、いつまでもアーサーの帰りを待てるように結婚してほしい」と。
いつまでも、行方しれずの夫の帰りを待つかわいそうな妻。
実は、夫に捨てられたんじゃないかとか。
世間では色々と噂されていた。
世間の目から守るように、フレディは契約結婚の提案をしてきた。
「絶対に、あなたには触れません。白い結婚を貫きますから」と。
リディアとアーサーは、私の大切な友人だからだと。
64
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
この婚約破棄は、神に誓いますの
編端みどり
恋愛
隣国のスーパーウーマン、エミリー様がいきなり婚約破棄された!
やばいやばい!!
エミリー様の扇子がっ!!
怒らせたらこの国終わるって!
なんとかお怒りを鎮めたいモブ令嬢視点でお送りします。
君を自由にしたくて婚約破棄したのに
佐崎咲
恋愛
「婚約を解消しよう」
幼い頃に決められた婚約者であるルーシー=ファロウにそう告げると、何故か彼女はショックを受けたように身体をこわばらせ、顔面が蒼白になった。
でもそれは一瞬のことだった。
「わかりました。では両親には私の方から伝えておきます」
なんでもないようにすぐにそう言って彼女はくるりと背を向けた。
その顔はいつもの淡々としたものだった。
だけどその一瞬見せたその顔が頭から離れなかった。
彼女は自由になりたがっている。そう思ったから苦汁の決断をしたのに。
============
注意)ほぼコメディです。
軽い気持ちで読んでいただければと思います。
※無断転載・複写はお断りいたします。
【完結】巻き戻りを望みましたが、それでもあなたは遠い人
白雨 音
恋愛
14歳のリリアーヌは、淡い恋をしていた。相手は家同士付き合いのある、幼馴染みのレーニエ。
だが、その年、彼はリリアーヌを庇い酷い傷を負ってしまった。その所為で、二人の運命は狂い始める。
罪悪感に苛まれるリリアーヌは、時が戻れば良いと切に願うのだった。
そして、それは現実になったのだが…短編、全6話。
切ないですが、最後はハッピーエンドです☆《完結しました》
婚約破棄されたので、契約不履行により、秘密を明かします
tartan321
恋愛
婚約はある種の口止めだった。
だが、その婚約が破棄されてしまった以上、効力はない。しかも、婚約者は、悪役令嬢のスーザンだったのだ。
「へへへ、全部話しちゃいますか!!!」
悪役令嬢っぷりを発揮します!!!
【完結】溺愛婚約者の裏の顔 ~そろそろ婚約破棄してくれませんか~
瀬里
恋愛
(なろうの異世界恋愛ジャンルで日刊7位頂きました)
ニナには、幼い頃からの婚約者がいる。
3歳年下のティーノ様だ。
本人に「お前が行き遅れになった頃に終わりだ」と宣言されるような、典型的な「婚約破棄前提の格差婚約」だ。
行き遅れになる前に何とか婚約破棄できないかと頑張ってはみるが、うまくいかず、最近ではもうそれもいいか、と半ばあきらめている。
なぜなら、現在16歳のティーノ様は、匂いたつような色香と初々しさとを併せ持つ、美青年へと成長してしまったのだ。おまけに人前では、誰もがうらやむような溺愛ぶりだ。それが偽物だったとしても、こんな風に夢を見させてもらえる体験なんて、そうそうできやしない。
もちろん人前でだけで、裏ではひどいものだけど。
そんな中、第三王女殿下が、ティーノ様をお気に召したらしいという噂が飛び込んできて、あきらめかけていた婚約破棄がかなうかもしれないと、ニナは行動を起こすことにするのだが――。
全7話の短編です 完結確約です。
傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
悪役令嬢アンジェリカの最後の悪あがき
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【追放決定の悪役令嬢に転生したので、最後に悪あがきをしてみよう】
乙女ゲームのシナリオライターとして活躍していた私。ハードワークで意識を失い、次に目覚めた場所は自分のシナリオの乙女ゲームの世界の中。しかも悪役令嬢アンジェリカ・デーゼナーとして断罪されている真っ最中だった。そして下された罰は爵位を取られ、へき地への追放。けれど、ここは私の書き上げたシナリオのゲーム世界。なので作者として、最後の悪あがきをしてみることにした――。
※他サイトでも投稿中
【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる