11 / 29
⑧
しおりを挟む
✳︎✳︎✳︎
部屋の中では、フィオナがおとなしく拘束されていた。
すると、ドン! っと扉が叩かれる。
「わっ、な、何? あぁ、きっと合図だわ。旦那様達が通りすぎたのよ、いきましょう、モアナ」
「マーシャル! 待って、まず確認してから」
「大丈夫よ、モアナは心配性ね。さぁ、行くわよ!」
「あのですね、手を放してもらえませんか、行きますから」
フィオナは軽い抵抗を試みる。
「はぁ、とりあえずメアリーと合流しましょうか、ほらさっさと歩く」
フィオナは二人に両腕を掴まれて扉の外へと連れ出された。
「ちょ、なんで出てくるの!」
メアリーは、口に出した後に「しまった!」と後悔する。
モアナは、瞬時に状況を把握すると、フィオナの背後に素早く回り込み、マーシャルを後ろから突き飛ばした。
「きゃぁ」
何が起こったか分からずに転倒するマーシャル。
その姿を確認すると、モアナは自身も急いで元の立ち位置に戻りフィオナの腕をそっと開かせて転倒する。
「乱暴はやめてください、フィオーリ様、突き飛ばすなんて」
んん?
フィオナは困惑していた。
自身の両側に倒れこんでいるマーシャルとモアナ。 そして、自身の腕は軽く上がっている…… って、これではまるで私が突き飛ばしたように見えるではないですかっ⁉︎
「そ、そ、そうですわ、ひどいですわ、フィオーリ様、旦那様、ご覧になりましたでしょう? こんな感じで私たちはフィオーリ様にいじわるをされているのです!」
なんてことを言うのですかー、ほんとにあなた達は! 色々と言いたいのですが、旦那様の前では話し方などでバレてしまう恐れがありますのでっ。
こちらにも事情があるので、ここは、お淑やかに……黙っておきましょう。そうでした、旦那様!
そこでふとフィオナは二人の男性がいることを認識する。
一人の男性は見たことがありません。
もう一人の男性は 「──旦那様?」
昨日は驚き発言しか記憶に残っていませんでしたが、改めてみると、なんて……
美形なのでしょう。
黒くサラサラとした髪、ほどよく引き締まった身体、すらりとした身長、
かっこいい
いえいえいえ、フィオ姉様、ごめんなさい! フィオ姉様の旦那様になるお方のことをそんな目で見てはいませんっ。
ちょっと、素敵だなぁと思っただけです。隣の男性も整った顔立ちをされていますね。きっと私達に縁のない社交会では、このような方が沢山いるのでしょう。恐るべし世の中です。
パチリと視線が合ったフィオナとアラン。
「旦那様、あの━━」
フィオナは続きの言葉をためらう。
アランの顔がみるみる曇っていったからだ。
眉間に皺をよせて、これ以上見るのも耐えられないとでも言わんばかりに。
そうでした、旦那様は私と間違えたとおっしゃっていました。 今の私はフィオ姉様なのでした。
というか、カミングアウトしたら全て解決のような……。
ですが、お会いした記憶がありません。
そもそも、人違いという可能性も。
「後は、任せる、ルーク」
「かしこまりました、アラン様。」
アランは踵を返すとスタスタと去って行った。
アランの雰囲気に、話すタイミングを逃したフィオナは軽いため息をつく。
「いつまでそうしているのです? さっさとここを片付ける!」
ルークは三人の侍女を叱咤する。
「フィオーリ様、私はルーク・カシウス。一応アラン様の従兄弟にありますが、今はアラン様の補佐をしております。どうぞお見知り置きを。部屋でお寛ぎください、すぐに軽食をお持ちいたします。」
ルークは、フィオナをまっすぐに見つめた後、一礼してその場を後にした。
部屋の中では、フィオナがおとなしく拘束されていた。
すると、ドン! っと扉が叩かれる。
「わっ、な、何? あぁ、きっと合図だわ。旦那様達が通りすぎたのよ、いきましょう、モアナ」
「マーシャル! 待って、まず確認してから」
「大丈夫よ、モアナは心配性ね。さぁ、行くわよ!」
「あのですね、手を放してもらえませんか、行きますから」
フィオナは軽い抵抗を試みる。
「はぁ、とりあえずメアリーと合流しましょうか、ほらさっさと歩く」
フィオナは二人に両腕を掴まれて扉の外へと連れ出された。
「ちょ、なんで出てくるの!」
メアリーは、口に出した後に「しまった!」と後悔する。
モアナは、瞬時に状況を把握すると、フィオナの背後に素早く回り込み、マーシャルを後ろから突き飛ばした。
「きゃぁ」
何が起こったか分からずに転倒するマーシャル。
その姿を確認すると、モアナは自身も急いで元の立ち位置に戻りフィオナの腕をそっと開かせて転倒する。
「乱暴はやめてください、フィオーリ様、突き飛ばすなんて」
んん?
フィオナは困惑していた。
自身の両側に倒れこんでいるマーシャルとモアナ。 そして、自身の腕は軽く上がっている…… って、これではまるで私が突き飛ばしたように見えるではないですかっ⁉︎
「そ、そ、そうですわ、ひどいですわ、フィオーリ様、旦那様、ご覧になりましたでしょう? こんな感じで私たちはフィオーリ様にいじわるをされているのです!」
なんてことを言うのですかー、ほんとにあなた達は! 色々と言いたいのですが、旦那様の前では話し方などでバレてしまう恐れがありますのでっ。
こちらにも事情があるので、ここは、お淑やかに……黙っておきましょう。そうでした、旦那様!
そこでふとフィオナは二人の男性がいることを認識する。
一人の男性は見たことがありません。
もう一人の男性は 「──旦那様?」
昨日は驚き発言しか記憶に残っていませんでしたが、改めてみると、なんて……
美形なのでしょう。
黒くサラサラとした髪、ほどよく引き締まった身体、すらりとした身長、
かっこいい
いえいえいえ、フィオ姉様、ごめんなさい! フィオ姉様の旦那様になるお方のことをそんな目で見てはいませんっ。
ちょっと、素敵だなぁと思っただけです。隣の男性も整った顔立ちをされていますね。きっと私達に縁のない社交会では、このような方が沢山いるのでしょう。恐るべし世の中です。
パチリと視線が合ったフィオナとアラン。
「旦那様、あの━━」
フィオナは続きの言葉をためらう。
アランの顔がみるみる曇っていったからだ。
眉間に皺をよせて、これ以上見るのも耐えられないとでも言わんばかりに。
そうでした、旦那様は私と間違えたとおっしゃっていました。 今の私はフィオ姉様なのでした。
というか、カミングアウトしたら全て解決のような……。
ですが、お会いした記憶がありません。
そもそも、人違いという可能性も。
「後は、任せる、ルーク」
「かしこまりました、アラン様。」
アランは踵を返すとスタスタと去って行った。
アランの雰囲気に、話すタイミングを逃したフィオナは軽いため息をつく。
「いつまでそうしているのです? さっさとここを片付ける!」
ルークは三人の侍女を叱咤する。
「フィオーリ様、私はルーク・カシウス。一応アラン様の従兄弟にありますが、今はアラン様の補佐をしております。どうぞお見知り置きを。部屋でお寛ぎください、すぐに軽食をお持ちいたします。」
ルークは、フィオナをまっすぐに見つめた後、一礼してその場を後にした。
166
お気に入りに追加
368
あなたにおすすめの小説
(完結)婚約者の勇者に忘れられた王女様――行方不明になった勇者は妻と子供を伴い戻って来た
青空一夏
恋愛
私はジョージア王国の王女でレイラ・ジョージア。護衛騎士のアルフィーは私の憧れの男性だった。彼はローガンナ男爵家の三男で到底私とは結婚できる身分ではない。
それでも私は彼にお嫁さんにしてほしいと告白し勇者になってくれるようにお願いした。勇者は望めば王女とも婚姻できるからだ。
彼は私の為に勇者になり私と婚約。その後、魔物討伐に向かった。
ところが彼は行方不明となりおよそ2年後やっと戻って来た。しかし、彼の横には子供を抱いた見知らぬ女性が立っており・・・・・・
ハッピーエンドではない悲恋になるかもしれません。もやもやエンドの追記あり。ちょっとしたざまぁになっています。
【完結】旦那様、契約妻の私は放っておいてくださいませ
青空一夏
恋愛
※愛犬家おすすめ! こちらは以前書いたもののリメイク版です。「続きを書いて」と、希望する声があったので、いっそのこと最初から書き直すことにしました。アルファポリスの規約により旧作は非公開にします。
私はエルナン男爵家の長女のアイビーです。両親は人が良いだけで友人の保証人になって大借金を背負うお人好しです。今回もお父様は親友の保証人になってしまい大借金をつくりました。どうしたら良いもにかと悩んでいると、格上貴族が訪ねてきて私に契約を持ちかけるのでした。いわゆる契約妻というお仕事のお話でした。お金の為ですもの。私、頑張りますね!
これはお金が大好きで、綺麗な男性が苦手なヒロインが契約妻の仕事を引き受ける物語です。
ありがちなストーリーのコメディーです。
※作者独自の異世界恋愛物語。
※コメディです。
※途中でタグの変更・追加の可能性あり。
※最終話に子犬が登場します。
(完結)お姉様、私を捨てるの?
青空一夏
恋愛
大好きなお姉様の為に貴族学園に行かず奉公に出た私。なのに、お姉様は・・・・・・
中世ヨーロッパ風の異世界ですがここは貴族学園の上に上級学園があり、そこに行かなければ女官や文官になれない世界です。現代で言うところの大学のようなもので、文官や女官は○○省で働くキャリア官僚のようなものと考えてください。日本的な価値観も混ざった異世界の姉妹のお話。番の話も混じったショートショート。※獣人の貴族もいますがどちらかというと人間より下に見られている世界観です。
(完結)貴女は私の親友だったのに・・・・・・
青空一夏
恋愛
私、リネータ・エヴァーツはエヴァーツ伯爵家の長女だ。私には幼い頃から一緒に遊んできた親友マージ・ドゥルイット伯爵令嬢がいる。
彼女と私が親友になったのは領地が隣同志で、お母様達が仲良しだったこともあるけれど、本とバターたっぷりの甘いお菓子が大好きという共通点があったからよ。
大好きな親友とはずっと仲良くしていけると思っていた。けれど私に好きな男の子ができると・・・・・・
ゆるふわ設定、ご都合主義です。異世界で、現代的表現があります。タグの追加・変更の可能性あります。ショートショートの予定。
(完)僕は醜すぎて愛せないでしょう? と俯く夫。まさか、貴男はむしろイケメン最高じゃないの!
青空一夏
恋愛
私は不幸だと自分を思ったことがない。大体が良い方にしか考えられないし、天然とも言われるけれどこれでいいと思っているの。
お父様に婚約者を押しつけられた時も、途中でそれを妹に譲ってまた返された時も、全ては考え方次第だと思うわ。
だって、生きてるだけでもこの世は楽しい!
これはそんなヒロインが楽しく生きていくうちに自然にざまぁな仕返しをしてしまっているコメディ路線のお話です。
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。転生者の天然無双物語。
(完結)伯爵家嫡男様、あなたの相手はお姉様ではなく私です
青空一夏
恋愛
私はティベリア・ウォーク。ウォーク公爵家の次女で、私にはすごい美貌のお姉様がいる。妖艶な体つきに色っぽくて綺麗な顔立ち。髪は淡いピンクで瞳は鮮やかなグリーン。
目の覚めるようなお姉様の容姿に比べて私の身体は小柄で華奢だ。髪も瞳もありふれたブラウンだし、鼻の頭にはそばかすがたくさん。それでも絵を描くことだけは大好きで、家族は私の絵の才能をとても高く評価してくれていた。
私とお姉様は少しも似ていないけれど仲良しだし、私はお姉様が大好きなの。
ある日、お姉様よりも早く私に婚約者ができた。相手はエルズバー伯爵家を継ぐ予定の嫡男ワイアット様。初めての顔あわせの時のこと。初めは好印象だったワイアット様だけれど、お姉様が途中で同席したらお姉様の顔ばかりをチラチラ見てお姉様にばかり話しかける。まるで私が見えなくなってしまったみたい。
あなたの婚約相手は私なんですけど? 不安になるのを堪えて我慢していたわ。でも、お姉様も曖昧な態度をとり続けて少しもワイアット様を注意してくださらない。
(お姉様は味方だと思っていたのに。もしかしたら敵なの? なぜワイアット様を注意してくれないの? お母様もお父様もどうして笑っているの?)
途中、タグの変更や追加の可能性があります。ファンタジーラブコメディー。
※異世界の物語です。ゆるふわ設定。ご都合主義です。この小説独自の解釈でのファンタジー世界の生き物が出てくる場合があります。他の小説とは異なった性質をもっている場合がありますのでご了承くださいませ。
婚約者に裏切られた女騎士は皇帝の側妃になれと命じられた
ミカン♬
恋愛
小国クライン国に帝国から<妖精姫>と名高いマリエッタ王女を側妃として差し出すよう命令が来た。
マリエッタ王女の侍女兼護衛のミーティアは嘆く王女の監視を命ぜられるが、ある日王女は失踪してしまった。
義兄と婚約者に裏切られたと知ったミーティアに「マリエッタとして帝国に嫁ぐように」と国王に命じられた。母を人質にされて仕方なく受け入れたミーティアを帝国のベルクール第二皇子が迎えに来た。
二人の出会いが帝国の運命を変えていく。
ふわっとした世界観です。サクッと終わります。他サイトにも投稿。完結後にリカルドとベルクールの閑話を入れました、宜しくお願いします。
2024/01/19
閑話リカルド少し加筆しました。
デブスの伯爵令嬢と冷酷将軍が両思いになるまで~痩せたら死ぬと刷り込まれてました~
バナナマヨネーズ
恋愛
伯爵令嬢のアンリエットは、死なないために必死だった。
幼い頃、姉のジェシカに言われたのだ。
「アンリエット、よく聞いて。あなたは、普通の人よりも体の中のマナが少ないの。このままでは、すぐマナが枯渇して……。死んでしまうわ」
その言葉を信じたアンリエットは、日々死なないために努力を重ねた。
そんなある日のことだった。アンリエットは、とあるパーティーで国の英雄である将軍の気を引く行動を取ったのだ。
これは、デブスの伯爵令嬢と冷酷将軍が両思いになるまでの物語。
全14話
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる