想っていたのは私だけでした

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「うぅ…」

 気がつくとスミレは硬い床の上に寝転がっていた

 モゾモゾと身体を動かすが、身動きがとれない。
 両手は後ろ手に縛られていた

「んーんーうー」

 助けを呼ぼうにもさるぐつわをかまされて声が出せない

 幸いにも目隠しはされていなかったので部屋の中を見ることができた

 そこは5.6人がやっと入れるかというくらいの狭い部屋だった

 調度品など何もなく、真っ白い壁に敷物のない板張りの床だけの空虚な場所だった


 あの大きな袋からは解放されていたのでほっとする。先程の袋を被せられた時の恐怖が蘇り、じんわりと目に涙が浮かぶ

 けれど感情をぐっと抑えてなんとか平常心を保とうとした

 震えるものの、足は縛られていなかったので、何とか起きあがれないものかと試みた

 痛い!

 身体をよじると腹部に痛みが走る
 そういえば気を失うまえに殴られていたことを思い出す

 芋虫のような体勢になりながら、痛みを堪えて腹部に力を入れて、ええいっと上半身を起き上がらせることに成功した

(起きれた)
心の中でつぶやいた

 出入口はあそこの扉ただ一つ

ゆっくり歩を進めて扉にピッタリとくっつき、聞き耳をたてる


どうやら扉は薄いようで、外の声がよく聞こえた

「━━やばいっすよ」
「心配すんな」
「━お嬢さんじゃないっすか」
「あぁ、ついてるぜ」


声の主は2人

スミレは扉を観察すると、鍵穴があるのを見つけた。

そこから外の様子を窺えないかと思い、しゃがんで鍵穴を覗く

後ろ手のため気をつけないとバランスを崩して転んでしまう

慎重に身を屈めて覗いた

正面にはテーブルがある
向かい合って2人がいることが分かるが、顔はこの角度からは見えない

手前に座っている男性の後ろ姿は、がっしりとした大きな背中だ

向かい側の男性はちょうどすっぽりと隠れて見えない

テーブルの横を見るとそこには扉があった

あそこから外に出られるのだろうか

脱出の方法が何かないかと思いくいいるように見回した

「そろそろ準備の時間ですよ」

扉が開き正装した男性が入ってくるのが見えた
髪をオールバックに整えきっちりとした男性だ

「おう行くぞ」
「どうなっても知らねぇっすよ」
「あん?てめぇ逃げるつもりか?」
「違いますよ、どこまでもついていくっすよ、ぐひひひ」

スミレは既視感を覚えた

(あれ?なんだかどこかで聞いたことある声だわ どこだったか…
うーん、絶対に気のせいではない気がする)

スミレは思い出せないモヤモヤが気になって、注意を怠っていた
男達が席を立ち上がりこちらへ近づいていたのだ

(わっ)

心の中で声を上げる

扉にくっつくようにいたので、突然開けられた扉に突き飛ばされた形で後ろに倒れこむ

(やばい。 早く起き上がらなきゃ)

ジタバタもがけばもがくほど焦りと恐怖が倍増する

男達がスミレを両側から立ち上がらせようと手を伸ばす


(やめて!やめて!)

「んーんー!」

声を上げれないけれど必死に叫ぶ

「大人しくしなよお嬢ちゃん」

「そうですぜ、じっとしてるのがいいですぜ、ぐひひひ」

「ん!」
(あっ!)


抱え起こされたスミレは
暴れながら両側の男性達を見て驚愕した

「んー!」
(あなた達は!)





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