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あなたの瞳の奥には、光の粒子が見えますね。キラキラととても綺麗。治癒魔法を使っている時は金色に輝くのではないかしら」
「えっ」
そういえばガヴェインも、昔同じことを言っていた気がする
普段訪れる患者さんは、私の瞳など気にしない。というかそもそも容姿なんて見ていないと思う。治癒師を求めて訪ねてくるから。
「むか~しね、私も同じことを言われたのです。いたたっ、ちょっと待ってくださいね」
女性は、両方の眼から何かを取り出していた
ガラスのようなものを
「あ、これはコンタクトレンズです。色付きのね」
女性の瞳の色は、私と同じ黒だった
先程まではブルーだったのに
「コンタクト…?」
「あぁ、視力が悪い人がつけるものなんだけど、瞳の色を変えたくてつける人もいるのです。」
「都会にはすごいものがあるのですね!」
「ふふふ、都会…そうね、都会というのかもしれませんね。ここではないところだけれど」
女性はスミレに顔を近づけてきた
「ねぇ、のぞいて見て下さい。私の瞳。
こっちの世界に来てからこんな風になったのです。ほらキラキラ分かります?」
スミレは突然の申し出に戸惑いながらも、女性の瞳を覗いてみた
患者さんを診察する時と同じく真剣に
「あぁ、本当ですね。瞳の奥にきらめくものがあります!」
「そうみたいですね」
女性は、スミレから距離をとると、両方の眼に先程のレンズを嵌めてしまった
「そのせいで、ちょっと、色々ありまして…だからあなたは、ここに迷い込んだのかもしれませんね」
女性は、飲み終えたカップを下げると、スミレに入り口とは違う扉を指し示す
「あちらからお行きなさい。」
「は、はい。あの」
「ねぇ、ガヴェインのこと、助けたいですか?」
「え?えぇ、いつか王都に行って捜索を依頼しようと思っています。だからお金を貯めてるんです。」
「誘拐でもないのに、誰に頼むつもりなのですか?」
「腕のいい方にです!だからお金を貯めて何でもやってくれそうな人に」
「ふふふ、熱意はあるけれど、ちょっと計画が甘いですよ。逆にあなたが売り飛ばされるかもしれまさんね」
「そ、それでも、何もしないよりはいいから。だって、お金があれば!
ガヴェインだって、お金で売られたようなものじゃないですか!
だから、私も…お金があれば」
「さぁ落ち着いて。あなたはそのまま真っ直ぐに生きて行ってください。
大丈夫です。
あなたの力になってくれそうな方に心当たりがあります。
もしかしたら、あなたももう出会っているかもしれませんね。
慣れないことはしない方が賢明ですよ。
軽い気持ちでやったことでも、一度踏み外したら戻れなくなることもありますから。
逃げたくて逃げたのに、
やっぱり戻りたくなって…
なのに、ここから出ることの出来ない私みたいに」
「出ることの出来ない?
あの、良ければ私の小屋にお茶に来ませんか?今度は私がご馳走したいです」
女性が寂しそうに見えて誘ってみる
「行きたくても行けないのです。私は…ごめんなさい。
さぁさぁもう時間ですよ。
お話し聞かせてくれてありがとう。それじゃあね。このまま真っ直ぐですよ」
女性が扉を開けてくれたので、外へと出た
「ありがとうござい…」
霧がたちこめて、まだ辺りは真っ白だった。
振り向いてお礼を言うつもりが、女性も扉も何も見えなかった
言葉は最後まで発することはできなかった
こんなに酷い霧ならば、方向感覚が狂ってしまう
色々と気になるけれど、女性に言われた通りに、今は真っ直ぐ進むことだけを考えることにした
「えっ」
そういえばガヴェインも、昔同じことを言っていた気がする
普段訪れる患者さんは、私の瞳など気にしない。というかそもそも容姿なんて見ていないと思う。治癒師を求めて訪ねてくるから。
「むか~しね、私も同じことを言われたのです。いたたっ、ちょっと待ってくださいね」
女性は、両方の眼から何かを取り出していた
ガラスのようなものを
「あ、これはコンタクトレンズです。色付きのね」
女性の瞳の色は、私と同じ黒だった
先程まではブルーだったのに
「コンタクト…?」
「あぁ、視力が悪い人がつけるものなんだけど、瞳の色を変えたくてつける人もいるのです。」
「都会にはすごいものがあるのですね!」
「ふふふ、都会…そうね、都会というのかもしれませんね。ここではないところだけれど」
女性はスミレに顔を近づけてきた
「ねぇ、のぞいて見て下さい。私の瞳。
こっちの世界に来てからこんな風になったのです。ほらキラキラ分かります?」
スミレは突然の申し出に戸惑いながらも、女性の瞳を覗いてみた
患者さんを診察する時と同じく真剣に
「あぁ、本当ですね。瞳の奥にきらめくものがあります!」
「そうみたいですね」
女性は、スミレから距離をとると、両方の眼に先程のレンズを嵌めてしまった
「そのせいで、ちょっと、色々ありまして…だからあなたは、ここに迷い込んだのかもしれませんね」
女性は、飲み終えたカップを下げると、スミレに入り口とは違う扉を指し示す
「あちらからお行きなさい。」
「は、はい。あの」
「ねぇ、ガヴェインのこと、助けたいですか?」
「え?えぇ、いつか王都に行って捜索を依頼しようと思っています。だからお金を貯めてるんです。」
「誘拐でもないのに、誰に頼むつもりなのですか?」
「腕のいい方にです!だからお金を貯めて何でもやってくれそうな人に」
「ふふふ、熱意はあるけれど、ちょっと計画が甘いですよ。逆にあなたが売り飛ばされるかもしれまさんね」
「そ、それでも、何もしないよりはいいから。だって、お金があれば!
ガヴェインだって、お金で売られたようなものじゃないですか!
だから、私も…お金があれば」
「さぁ落ち着いて。あなたはそのまま真っ直ぐに生きて行ってください。
大丈夫です。
あなたの力になってくれそうな方に心当たりがあります。
もしかしたら、あなたももう出会っているかもしれませんね。
慣れないことはしない方が賢明ですよ。
軽い気持ちでやったことでも、一度踏み外したら戻れなくなることもありますから。
逃げたくて逃げたのに、
やっぱり戻りたくなって…
なのに、ここから出ることの出来ない私みたいに」
「出ることの出来ない?
あの、良ければ私の小屋にお茶に来ませんか?今度は私がご馳走したいです」
女性が寂しそうに見えて誘ってみる
「行きたくても行けないのです。私は…ごめんなさい。
さぁさぁもう時間ですよ。
お話し聞かせてくれてありがとう。それじゃあね。このまま真っ直ぐですよ」
女性が扉を開けてくれたので、外へと出た
「ありがとうござい…」
霧がたちこめて、まだ辺りは真っ白だった。
振り向いてお礼を言うつもりが、女性も扉も何も見えなかった
言葉は最後まで発することはできなかった
こんなに酷い霧ならば、方向感覚が狂ってしまう
色々と気になるけれど、女性に言われた通りに、今は真っ直ぐ進むことだけを考えることにした
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