上 下
9 / 13

聖女候補、秋の新作が王妃様のお気に召したようです

しおりを挟む
お茶会の度に求婚と新作の催促をかわしていたらたちまち季節が巡って秋物売り出しの季節になりました。
ええ、まだまだ暑いです。
今日は新作のお披露目の為に王妃様を訪ねます。

「今日はまた新作を見せに来てくれたのね。ずっと楽しみだったからうれしいわ」
「ありがとうございます。僭越ながらご紹介させて頂いてもよろしいでしょうか?」
「ええ、ええ、もちろん!早速お茶の準備をさせましょう。もう整っているわ」

今回の新作ドレスは肩が出そうなボートネックにスリット入りの袖が印象的なものがアイコンに設定してある。
ドレスの裾もスリットが入っていたり、チュールを重ねて透けるような色の重なりを作ってあったりとみんなのアイディアがふんだんに盛り込まれている。

「あら、これはずいぶんきれいな生地を裏地に使っているのね」
「こちらはダンスの際にスリットでひるがえるようになっていますので、その際きれいに見えるようにと設定しております。もちろん、気になる場合は隠しボタン等でおさえることも出来ます」
「この袖もなかなか挑戦的で良いわね。秋冬はなかなか肌を見せるものがないから誘惑には覿面てきめんだわ」

王妃様はお茶に少し手をつけた後はひたすら新作を手に取り、オーダーを進めてくださった。
1週間後、秋物売り出しの日に開かれるお茶会にあわせて一式揃えられたのでどれか使って頂けるのだろう。
あまり贔屓目は良くないのでなかなか一式揃えられた状態でお召しになることはないけれど、それでもやっぱり手に取っていただけることは嬉しい。

「今日はありがとう。とても楽しかったわ」
「ありがたき幸せにございます」
「また私が話しすぎてお腹がすいたでしょう。お茶菓子を包んであるからどうぞ召し上がってね」
「ありがとうございます。つつしんでお受けします。職人たちも喜びます」

その日帰って商店の皆と盛大にパーティーをしたことは皆のモチベーションになりました。
それになにより、久しぶりにゆっくり楽しい時間を過ごす事が出来て良かったです。
さあ、明日からまた新作の売り出し最終調整です。
馬車馬のように稼いで、聖女像から距離を取りましょう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女に雨が降って婚約破棄する

tartan321
恋愛
タイトル通りです

王太子から愛することはないと言われた侯爵令嬢は、そんなことないわと強気で答える

綾森れん
恋愛
「オリヴィア、君を愛することはない」 結婚初夜、聖女の力を持つオリヴィア・デュレー侯爵令嬢は、カミーユ王太子からそう告げられた。 だがオリヴィアは、 「そんなことないわ」 と強気で答え、カミーユが愛さないと言った原因を調べることにした。 その結果、オリヴィアは思いもかけない事実と、カミーユの深い愛を知るのだった。

聖女が醜くて臭いのは王子がクズだからです~隣国で善人イケメンに拾われたら美貌と良い匂いを取り戻しました~

サイコちゃん
恋愛
汚物――そう呼ばれるのはこの国の聖女ルシアナだ。彼女はネガティブなものを体に取り込んで国を守る聖女である。しかし悪臭に耐えきれなくなった王子がルシアナを森へ捨ててしまう。捨てられたルシアナは隣国の美しき薬師に拾われ、助かる。彼に甲斐甲斐しく世話をされているうちに元々の美貌が戻ってきて――

王太子に婚約破棄され塔に幽閉されてしまい、守護神に祈れません。このままでは国が滅んでしまいます。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 リドス公爵家の長女ダイアナは、ラステ王国の守護神に選ばれた聖女だった。 守護神との契約で、穢れない乙女が毎日祈りを行うことになっていた。 だがダイアナの婚約者チャールズ王太子は守護神を蔑ろにして、ダイアナに婚前交渉を迫り平手打ちを喰らった。 それを逆恨みしたチャールズ王太子は、ダイアナの妹で愛人のカミラと謀り、ダイアナが守護神との契約を蔑ろにして、リドス公爵家で入りの庭師と不義密通したと罪を捏造し、何の罪もない庭師を殺害して反論を封じたうえで、ダイアナを塔に幽閉してしまった。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

ケダモノ王子との婚約を強制された令嬢の身代わりにされましたが、彼に溺愛されて私は幸せです。

ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
「ミーア=キャッツレイ。そなたを我が息子、シルヴィニアス王子の婚約者とする!」 王城で開かれたパーティに参加していたミーアは、国王によって婚約を一方的に決められてしまう。 その婚約者は神獣の血を引く者、シルヴィニアス。 彼は第二王子にもかかわらず、次期国王となる運命にあった。 一夜にして王妃候補となったミーアは、他の令嬢たちから羨望の眼差しを向けられる。 しかし当のミーアは、王太子との婚約を拒んでしまう。なぜならば、彼女にはすでに別の婚約者がいたのだ。 それでも国王はミーアの恋を許さず、婚約を破棄してしまう。 娘を嫁に出したくない侯爵。 幼馴染に想いを寄せる令嬢。 親に捨てられ、救われた少女。 家族の愛に飢えた、呪われた王子。 そして玉座を狙う者たち……。 それぞれの思いや企みが交錯する中で、神獣の力を持つ王子と身代わりの少女は真実の愛を見つけることができるのか――!? 表紙イラスト/イトノコ(@misokooekaki)様より

【完結】え?王太子妃になりたい?どうぞどうぞ。

櫻野くるみ
恋愛
10名の令嬢で3年もの間、争われてーーいや、押し付け合ってきた王太子妃の座。 ここバラン王国では、とある理由によって王太子妃のなり手がいなかった。 いよいよ決定しなければならないタイムリミットが訪れ、公爵令嬢のアイリーンは父親の爵位が一番高い自分が犠牲になるべきだと覚悟を決めた。 しかし、仲間意識が芽生え、アイリーンに押し付けるのが心苦しくなった令嬢たちが「だったら自分が王太子妃に」と主張し始め、今度は取り合う事態に。 そんな中、急に現れたピンク髪の男爵令嬢ユリア。 ユリアが「じゃあ私がなります」と言い出して……? 全6話で終わる短編です。 最後が長くなりました……。 ストレスフリーに、さらっと読んでいただければ嬉しいです。 ダ◯ョウ倶楽部さんの伝統芸から思い付いた話です。

【完結】忌み子と呼ばれた公爵令嬢

美原風香
恋愛
「ティアフレア・ローズ・フィーン嬢に使節団への同行を命じる」  かつて、忌み子と呼ばれた公爵令嬢がいた。  誰からも嫌われ、疎まれ、生まれてきたことすら祝福されなかった1人の令嬢が、王国から追放され帝国に行った。  そこで彼女はある1人の人物と出会う。  彼のおかげで冷え切った心は温められて、彼女は生まれて初めて心の底から笑みを浮かべた。  ーー蜂蜜みたい。  これは金色の瞳に魅せられた令嬢が幸せになる、そんなお話。

処理中です...