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聞き間違いでなくって?

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「ルアーナ、お前との婚約を破棄する。お前はもう二度と俺の前に姿を現すな」
頭の湧いてしまった元婚約者のこの言葉から1週間。
私は積読されていた本を読むことに精を出していた。

「は~それにしても本はいいわね。物語に集中してるとすぐに時間が経ってくれるわ」

あの発言の後、茫然とする私の代わりに怒り狂ったお父様が経済的制裁、もとい超高額な慰謝料の請求と取り立てに、お母さまは人脈を駆使してこの顛末をお茶会の話題のトレンドに乗せた。
おかげでもし、今社交界に戻っても私はズルい女に最愛の人を取られ、婚約破棄された哀れな人として優しくしてもらえること間違いなしだ。
しかもなんのツテを使ったのか、元婚約者の彼よりも位の高い人からのお手紙、つまり縁談も持ちかけられている。
今のところ、すべて心の傷がいえるまでお時間を下さいと伝えてあるけど。

まあでも。

彼の実家は豪商で、やっと貴族の仲間入りをした程度。
貴族としてはまだまだ赤ちゃんもいいところです。
元々私の属するグループの発言力が目当てで私に近づいてきた訳だから、もっといいグループに入れるとなればそりゃそちらに行きますよね。
まあ、新しい女の子よりこちらのグループの発言権が強い子の方が社交界での顔も広いんですけど。
この噂の早さは分かってなかっただろうなぁ。
今頃新しい子のグループのトップがうちは悪くないって頑張ってるんだろうか。

しばらくは顔を出さないつもりだから、そんなのは今はどうでもいいんだけどさ。

そうやってまた本を読み始めると、ドアをノックしてメイドが入ってきた。
「お嬢様、教会より知らせの者が来ています。お嬢様が聖女の候補となったそうです。詳しいことは対面でのお話とのことですので、ご準備をさせていただきます」
「教会?聖女?この私が?」
「はい。有力候補とのことでございます。」
「私は最近婚約破棄されたばかりなのよ?聞き間違いではなくって?」

そう言って腑に落ちないまま、私は支度をはじめることになった。
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