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回復と崩壊

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挨拶が終わって部屋に戻ろうとしたらさっきとは違う部屋に通された。
なんでもさっきの部屋は手違いだったらしい。
通された部屋は装飾がごてっごてできついお香までたかれていた。

「ちょっとこれは落ち着きませんね。壁の装飾はそこの絵を一枚残してすべて片付けてちょうだい。
家具はもうこれは仕方ないけれど、このお香はどうにかならないの?窓を開けて空気を入れ替えて」

むせかえるほど強烈に焚いていたらどんなに良い香木も台無し、ということをよく体験できました。
あー、きっつい。

周りの使用人も服に香りが染みついていたので総入れ替え。
ようやく深呼吸が出来るようになった時にはもう夕食の時間が迫っていた。

「失礼いたします。お夕食のお仕度をさせていただきます」
「いえ、祈りの前は食事はとりません。それよりも早く聖堂に案内してくださると嬉しいです」
使用人がドレスをもってくるのを制止して、城の端に位置する塔に向かう。
聖堂の一番上の部屋が今回の私の舞台だ。
さあ、きれいな花火を打ち上げましょう。

*****

リリィが聖堂に到着し祈りの準備を始めたころ、城の大広間では大々的なパーティーが開かれていた。
聖女の祈りを直接受けられる数少ない機会に、いつもは顔を出さない貴族までもが盛装して押しかけ大広間は過密w極めていた。

今日の特等席は小さなベランダのバルコニー。
いつもならば風通しもよいとは言えず、ひっそりとしているために不逞な逢引きに使われるような場所だったが、こここならばリリィの祈る塔が良く見える。
それにここならば泥のような顔色の悪さも暗がりですぐには目立たない。

不意に微かな鈴の音が響いた。
微かで、ほとんど消え入るようなのになぜがとてもよく聞こえる。

シャリ、シャリシャリリリ……という音の響きと共に塔の最上部から光の細い渦が空に立ちのぼっていく。
そしていく筋にも分かれて花のように広がり、遠くの方へ消えていく。

光の渦からは絶え間なく枝が分かれ、広いはずの空を狭いと言わんばかりに光の花が咲く。

そしてその残滓が波打つように遠く遠くへと広がっていく。

「これが……聖女の祈り」
「さすがは聖女さまだ……」

王も、先ほどまで喧々諤々としていた貴族たちも、狭いバルコニーからただただ空を眺めていた。

その光は国の最も遠い村まで届き、ひそやかな鈴の音は眠っている人や植物に等しく降り注いだという。
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