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最悪の餞別と線香花火

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一睡もできずに迎えた朝日は目に痛かった。
でも、それ以上に家族の目が痛かった。
ゴミを見るような、家族に向けるとは思えない目。

準備のために着替えさせられたドレスもドレスと言って良いのかと思うほど飾り気のないもの。
髪は櫛を通してただひっつめただけ。
このまま町に出て平民と言っても差し支えない状態だ。
お父様は黙って何も言われず、お母様には無視され、お兄様は暴言の嵐。
最悪の餞別せんべつをいただいて乗り込んだ馬車はボロボロでなんだかもう最高のあつらえだと思った。


目的の村までは道中1週間。
御者、馬車の中にいてくれる見張り、町までの護衛依頼を受けてくれた冒険者が1グループ。
最初はお互い警戒してほとんど口も聞かずに出発したけれど、冒険者の作ったご飯が覚悟していたより美味しかったり話が合う人がいたりして、2日目の昼にはみんな和やかな雰囲気になっていた。

魔力よわよわでも魔法の使える私は珍しいらしい。
火魔法は小さくはぜる位しか出せないと見せると、みんな線香花火みたいだと喜んでくれた。

線香花火は平民の間では子どもの憧れなんだとか。
作るのが難しくて、流れの商人から売り出されるとあっという間になくなるらしい。

「そんなの聞いたこと無かったわ」
「そりゃ、お貴族様はこんなちんまいのやんないだろ」
「ねぇ、もう1回見せて!!」


私の手ではぜるそれに似たものを買うために子どもたちは一生懸命お駄賃を稼いでいるらしい。
それを聞いて、私はなぜかすごく羨ましくなった。
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