透明な心にて

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24話

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フランスの街で日本の街で世界の街の隅々まで冬心のLOVEが流れている。冬心はクロードの協力で自分の芸能会社、株式会社ジャンを立ち上げた。テレビやラジオで積極的に出演してLOVEを歌い、5月に発売される予定のアルバム、ジャンを宣伝している。

テオは冬空に会ってから、また遊びに行きたいと強請るようになった。1月23日に日本へ帰る予定のジャンダ教授からいつでも遊びに来ていいと言われたが、家族団欒の時間を邪魔したくないと思った冬心は躊躇っていた。でも、テオがグズグズして癇癪を起し、冬空に会いたいと懇願する。

ジャンダ教授はほとんど外出しないで、家に友達や知人を招いて楽しく過ごしている。甥や姪がよく遊びに来て冬空と風馬と遊んでくれるから嬉し。姪のミレイユは冬空を人形みたいにリボンで髪を綺麗に飾たり、色んなドレスを着せたりして遊んだ。双子のジェラールとマクソンスは風馬とボール遊びに夢中だ。微笑ましい日々が過ぎてゆく。

天命は誰よりも早く冬心に連絡して、日本での歌手活動を支援する契約を結んだ。J&Jエンターテインメント会社とJ&Jミュージック社を所有しているピースグループで冬心の初デビュー後、直ぐに手を打った。天命は再び冬心を助けることができるのを楽しみにしている。

春馬の祖母、イザベル・マルソーは1月18日、ローゼホテルのカフェで大変優秀な凄腕探偵、エイと会っている。彼は年末年始のパリのシャルルドゴール国際空港とオルリー国際空港を複数の調査員と調べていた。運よく、日本から到着する飛行機が毎日3便のみあるから、昨年の12月25日からずっと国際空港に出てパリを訪れる人々を見張っていた。29日、午後15時過ぎに、とてもスラっとして背が高い女が赤ちゃん二人とネゴを連れて、出口に現れた瞬間、勘が働いだ。大きなマスクと帽子を被っているから、女の顔はよく見えなかったけれど、手を繋いで歩いていた女の子がブロンドヘアにエメラルドブルーの瞳でとても綺麗でジャンダ教授の面影が濃くあった。

その後、事務所に帰ってきて、AI画像探知システムにて分析した結果、女の子とジャンダ教授の写真が親子として99.9%で一致した。慎重なエイは各航空会社の29日の乗客名簿を入手して念入りに調べた。でも、ジャンダ・ローゼは何処の乗客リストにもなかった。

頭のさえているエイはジャンダ教授が改名されたことも頭に入れて、数日、念入りに検討した結果、齋藤美香、齋藤冬空、齋藤風馬の親子に目をやった。山形の山形空港からの入国で52歳の年も合っている。女の子だと思われた齋藤冬空の誕生日も12月25日で合致した。

真剣にその親子の行方を追ったが、見つからなくて1月23日の日本出発の航空券の情報を持って、23日再び空港で見張るつもりだ。静かにエイの話を聞きながら、冬空と風馬の写真を見つめていたイザベルは大粒の涙を零して、孫に違いがないと言う。

冬空がジャンダ教授と風馬は赤ちゃん頃の春馬とそっくりだったから、疑念もなく確信した。ジャンダ教授がまた逃げる恐れがあるので、エイは23日に日本について行くことにした。イザベルは深くお礼を言って、孫たちの写真は持っていきたいと言う。

イザベルはジャンダ教授とハッキリ連絡が取れる迄には誰にも言わずにいることを決めた。また、隠れたら、本当に困るからだ。

21日、冬心は再びテオを連れてジャンダ教授の実家を訪問する。テオが冬空に会いたいと愚図ったから、ジャンダ教授に連絡して頼んだ。ジャンダ教授は明後日、日本に帰る予定なので、喜んで是非遊びに来て欲しいと言った。

テオを再び見る冬空は優しく挨拶してくれた。でも、風馬はぶっきらぼうな態度を取る。ジャンダ教授はジグソーパズルを持ってきて、雰囲気を和ませる。いつの間にか、テオと冬空と風馬はジグソーパズルを楽しんでいた。ジャンダ教授と冬心は育児の共通の話題に盛り上がる。

普通の子より、言語や運動能力が優れているテオ、冬空、風馬に戸惑った経験があった二人は父親がいない境遇もあって、互いに励ましい合った。

テオはすらすらとパズルをハメていたが、たまには冬空が嵌められるように譲ったり、待っててくれたりして気を配っていた。風馬はパズルに夢中でテオに対する警戒心も解けていた。三人は仲良く遊んでいた。

グラタンのランチも楽しく食べ終わって、冬心はそろそろ帰ろうかと言い、支度をしていたら、テオがもっと遊びたいと強請る。もう、昼寝の時間になるので、その前に帰りたかった冬心はテオを優しくあやしながら、帰る支度をする。

帰りたくないテオがグズグズしていたら、冬空がテオに寄ってきて、ポールを描いたメモ紙をあげる。ポールの絵を見て、嬉しくなったテオがありがとうと笑顔で言った。お別れの時にはテオが冬空を優しく抱っこしたけど、隣でいた風馬は見ぬふりをしていた。風馬は2回くらいテオと遊んでみて、テオがいいやつだと気づいたからだ。

パズル遊びやランチの時に、テオはずっと冬空に合わせて譲ったり、遠慮したりして優しかった。風馬は大きな体格とは違って繊細な心持ちのテオが気に入った。

テオはクレパスで鮮やかに描かれた猫のポールの絵が凄く可愛くて気に入った。一生の宝物にしようと思いながら微笑んだ。

23日の金曜日、ジャンダ教授は冬空と風馬を連れて日本に向かう。先日、ルイ、アンナ、ソフィアは別れを悲しんで、パリに戻ってきて一緒に暮らすことをお勧めした。厳格だったルイが孫たちにメロメロになって一緒に暮らしたいと強く頼んだ。ジャンダ教授は家族の愛と支えに心を打たれて今の仕事のこともあり、考えてみますと言って両親を安心させた。

人生はいくつかの出会いと別れて成り立っている。避けられない別れの悲しみはいくら重ねれても慣れない感覚だ。冬空と風馬も悲しくなり、最後まで涙を流してアンナの顔が見えなくなるまで、手を振った。冬空と風馬はパリでおじいちゃんとおばあちゃんと一緒に暮らしたいと言った。

複雑な気持ちになったジャンダ教授は今の仕事に責任があるので、少し時間を頂戴といい、いつかはパリで暮らそうと言った。嬉しくなった冬空と風馬はもう涙を見せなかった。

エイは出発ゲートから、ジャンダ教授と冬空と風馬を見つめていた。見送りに出たアンナとソフィアを見ては200パーセントジャンダ・ローゼだと確信した。エイは静かに気付かれないように、ジャンダ教授を付いて行った。

夜7時30分過ぎに山形空港に着いた。駐車場で長く停められていた車に乗って、ジャンダ教授は家に向かう。事前に日本の姉妹探偵会社の調査員に連絡しておいたエイは直ぐにジャンダ教授の車を追う。約1時間を走って着いたところは最上町だった。

まさかこんなに田舎でいるとは予想もしなかったエイは捜索が甘かったことを反省した。最上ニュータウンに入ったジャンダ教授の青い車が綺麗な家にゆっくり入って消えた。家を特定できたことで嬉しくなったエイは日本人の調査員に近くに留まられる宿屋に案内するように頼んだ。

長い飛行で疲れたので、冬空と風馬はぐっすり眠ってしまった。ポールも疲れて元気がなかった。久しぶりの家はたまに家政婦さんが来て、窓を開けて喚起をしたり、掃除してくれたから綺麗だ。

冬空と風馬を温かいタオルで身体を拭いてあげて着かえさせて寝かせた。荷物の整理をして風呂から出たら、深夜の12時になっていた。疲れたジャンダ教授もベットに入った。

エイは毎日ジャンダ教授の家の周辺に来て、気づかれないように見張っている。大雪で寒いからほどんと外出しないジャンダ教授は週に3回は家事代行サービスを受けていて、家事代行担当の中年の女性だけが出入りしているのを確認した。

2月2日の月曜日はジャンダ教授が冬空と風馬を車に乗せて、珍しく出かける。エイが密かについて行ったら、ジャンダ教授の車が新庄市の山形文化大学に入った。冬空と風馬を保育園に預けて国際教育部棟に入ったジャンダ教授はエレベーターに乗って3階に止まった。周りの誰も帽子とマスクをかけているエイと若い日本人の調査員に全然関心を向かない。冬休みなのに結構学生たちで活気があった。

3階にジャンダ教授の研究室があった。齋藤美香教授と書いてあるドアプレートを確認したエイは2階の事務室に足を運んだ。これからいろいろと忙しくなりそうだ。

パク教授はすっかり完治されて、2月2日の午前に山形市の稲盛法律事務所を訪れる。先約していたので、案内テスクからすぐ通されて会議室に案内された。

相変わらず元気そうな友人の稲盛が笑顔で迎えてくれる。二人は大学のテニスサークルの友達で一緒に登山やサイクリングを楽しむ仲間だ。

コーヒーを飲みながらパク教授はきららの事情を詳しく話す。稲盛は真剣に話しを聞いて全てを把握した後、代理で協議離縁申請ができることや光沢組の組長と知り合いなので、話は早く進めそうだと愉快に説明した。14歳から性暴力を受けてきたきららが可哀そうで、稲盛は全力で助けてあげるとも言った。ほっとしたパク教授は有能な友人がいて助かったと思い、今度お酒を奢ると約束した。

行動力がある稲盛は直ぐに光沢組の組長と7日の土曜日の夜に約束を取った。山形市内のクラブで約束したので、夜8時に合わせてパク教授と一緒にクラブクレオパトラに向かう。

始めて入る豪華なクラブでパク教授は気まずさを感じだが、稲盛は顔見知りなのか、複数のホステスと笑顔で愉快に挨拶を返していた。着物を綺麗に着こなしていたママと呼ばれる中年の綺麗な女が稲盛とパク教授を廊下の奥に案内する。

奥の優雅な門に案内されて入ったら、60代の威厳と風格を持ってる只者ではない大男が目に入った。稲盛が丁寧にお辞儀をしてパク教授を紹介してくれた。光沢組の5代目の組長の大男は大きなごつごつの手を差し伸べてパク教授と握手をする。

大きな部屋はヨーロッパ式の高価なソファと大きなテーブルだけで、テーブルの上には果物や色んな種類のお酒が用意されていた。組長の大男と部下の若い男が二人いるだけだった。

稲盛は組長に酒を注いでから、きららの話を言い出す。じっくりコニャックを啜りながら、稲盛の話を聞いている組長は表情ひとつ変わらず、無表情だった。

パク教授は息を殺して静かに初めて味わうコニャックをちびちびと飲んでいる。話を終えた稲盛がコニャックを飲み干してメロンを齧った。

組長が重い口をやっと開く。

「清水きらら。聞いたことはなかったが、稲盛さんの電話で調査してもらった。12年間、俺のチンピラたちの肉便器としていたと。。。」

誰も何も言えずに耳を立てていた。

「債務担当の部下に訊いたら、清水きららの父親の清水忠徳が借金500万円に無利子で特別に清水きららをセックス相手として利用してもいいとサインしたそうだ。勿論、本人の清水きららもサインしていた。期限は定められていなかったが、借金を返したら契約は終了となるはず。でも、清水忠徳は返すお金が十分にあってもお金を返さず、息子が男たちに曝されるのをずっと放置した。今もまだ借金は返していないが、契約は終了としてもう清水きららに近寄らないように命令した。俺は長年ヤクザの悪いイメージを改善しようと努めたが、今回の件は遺憾だ」

「ありがとうございます。契約は契約なので、清水忠徳が借金を早く返すべきでした。でも、清水きららは長年苦痛の日々を耐えてきました。彼の苦しみを考慮したら、離縁申請は受理できると思います」

「アイツが同意しなかったら、俺に言ってくれ。手を打つから」

「ありがとうございます。話がスムーズに運んで助かりました」

二人の話を静かに聞きながら、コンニャックをちびちびと飲んでいるパク教授をじっと見つめていた光沢組長がパク教授に話を振る。

「山形文化大学のフランス語教育学科の齋藤美香先生って知ってますかな」

思いもよらない名前が出てきたので、びっくりしたパク教授が目を丸くして訊き返す。

「え?齋藤美香教授ですか?」

「そう。俺の部下が昨年、クリスマスのコンサートで偶然見かけて一目惚れしたそうだな。惚れ込んで咄嗟に写真を撮ってしまって年末の飲み会で今まで見たことのないべっびんさんだと言い触らした。俺も見たが凄い美人で興味があって、調べさせた。俺ももう年だから、俺に会うことを強制しない。で、パク教授は齋藤教授と仲いいそうだから、紹介してくれないか」

パク教授は愕然としてむっつりと黙り込んだ。


















































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