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17話
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2月末、ジャンダ教授の母、アンナは仕事のために、パリに戻ることになった。アンナはジャンダ教授の順調な移住生活と赤ちゃんのポールの健やかな成長にちょっと一安心してパリに向かった。
助教、清水きららはいつも朝7時までにジャンダ教授の研究室に着いて、大きな窓を開け掃除機掛けをし、水雑巾で机やテーブルなどを隅々まで丹念に拭く。生真面目なきららは体調が優れなかった恩師の北野教授が退職し、新しい教授が急に任命され緊張したけれど、初めて会ったジャンダ教授は優麗で謙遜で親切だったから、好印象を受けた。女性としてはとても身長が高かったので、ジャンダ教授を見上げていたきららは男の自分がちっぼけに感じて負けた気もした。
日々赤ちゃんのポールは大きくなり、ジャンダ教授は学校の仕事とポールの世話で、勿論、猫のポールも含めて、忙しい日々を楽しく過ごしていた。最上ニュータウンの最上公園は休日になれば、散歩を楽しむ年寄りや子供連れの家族で賑やかだ。
ジャンダ教授は赤ちゃんのポールと猫のポールを連れて最上公園を散歩するのが休日の醍醐味だ。3月30日の日曜日、昼飯を済ましてから柔らかい陽射しに誘われて、赤ちゃんのポールと猫のポールを連れて最上公園に向かう。すっかり春の陽気で浸みたぽかぽかな午後だ。
最上公園では既に大勢の子供たちが遊具で遊んでいる。ブロンドヘアで妊婦の長身のジャンダ教授を見て、人々は笑顔で挨拶をする。ジャンダ教授の美貌は近所でも噂されていた。気持ちよくなったジャンダ教授も愛想よく挨拶を返す。最上ニュータウンの住民はご近所と良い関係を保っている。清々しい春のそよ風に促されて赤ちゃんの冬空(ポール)が笑顔を見せながら、あーうーと喃語を喋り出す。ジャンダ教授は乳母車から赤ちゃんの冬空(ポール)を抱き上げてブランコ前の椅子に座る。
その時、隣家のさちちゃんが寄ってきて、赤ちゃんの冬空(ポール)のほっぺたを撫でる。
「冬空、大きくなったね。早く大きくなって、お姉ちゃんと遊ぼう」
「ありがとう。きっと、冬空もさちちゃんと遊びたかるよ」
ジャンダ教授は口の角を丸く緩んで言いながら、本当に穏やかな陽ざしを堪能する。
春馬の母、桂子は最近、居ても立っても居られない気持ちで曇っていた。春馬がフィンランド訓練から急に帰ってきては、ジャンダ教授を捜しに奮闘しているからだ。3月中旬をまわったのに、相変わらず、毎日出かけては、夜遅く帰ってきたりした。春馬の父、マイクも春馬を説得したが、春馬は聞く耳すら持っていなかった。春馬のコーチはマイクに電話をして、このまま、ずっと学校と練習を無断でサボったら、次回の大会に参加させないとも言った。
春馬は毎日探偵事務所を訪れては、ジャンダ教授の写真とポールの写真を見せて、捜索を頼んだ。でも、探偵たちは揃って、オメガなので、秘密保持契約書を申請した場合は、捜すのは難しいと話した。でも、諦める気がなかった春馬はお金なら、いくらでも出すので、是非捜してほしいと頼んだ。
春馬はパリに戻った祖母、イザベルに連絡して、ジャンダ教授とポールを捜すのに、大金が必要だと説得して、結構大きな金額が送金された。これで、準備はいいと思った春馬は、有名な探偵事務所から小さな探偵所まで欠かさずに訪問して、捜索を依頼した。春馬はジャンダ教授がフランス文学の教授だったので、全国の大学と形質者産婦人科を漁ってくださいとも付けた。
時間は無垢に進んでいて、もう4月になり、ぽかぽかな陽気に乗って薄ピンクの桜の花びらが舞い上がる。今日もジャンダ教授は冬空(ポール)を校内の保育所に預けて、国際教育部棟の3階に向かう。助教、きららが大きな窓を開けて、掃除をしている。ノックをして入ったジャンダ教授は笑顔でさり気なく挨拶をする。
「清水君、おはよう。今日も凄くいい天気ですね。いつも綺麗にしてくれてありがとう」
「おはようございます。先生、タンポポ茶、飲みますか?」
「ありがとう、でも、自分で淹れます。清水君も何か飲みますか?」
「じゃ、俺はいつものコーヒーでお願いします」
「了解です」
きららは水雑巾で窓サッシを再び拭きはじめる。ジャンダ教授はコーヒーマシーンに行って、コーヒーを淹れる。二人の会話はいつもこうなる、つまり、長く続かないのだ。でも、お互いに気まずさはなく、強いて言えば心地よい静寂だ。
きららは3月半ばになって、齋藤教授(ジャンダ教授)が妊婦のワンピースを着て、大きくなったお腹を抱えて出勤したので、ぽかんとして言葉を失った。冬空(ポール)という赤ちゃんのシングルマザーだとは知っていたが、また、妊娠するなんて、一体どんな男と付き合っているのかしらと疑問が膨らんで、怪訝そうな顔になった。
校内では齋藤教授(ジャンダ教授)の妊娠のコシップで、父親は一体どんな男だの、番はいないかだの、妊娠もしたのになぜ結婚はしないのかだの疑問を抱く声が多かった。だが、ジャンダ教授は何も気にせず、甲斐甲斐しく働く。
4月のパリは東京と違ってまだ少し肌寒い。
冬心は大きくなったお腹を抱えて、大学院に通っている。ソフィアさんの家族やジャンの家族が凄く気を使ってくれるから心は強かった。ジャンのフェロモンで赤ちゃんも順調に成長していて、出産の恐れはない。アーラン教授も妊娠のことを喜んでくれて、出産後はオンライン授業を受けられるように、手を回してくれた。
4月27日の日曜日、冬心はパリ7区のグロ・カイユのジャンのアパートに向かう。ジャンが迎いにきてくれたので、ジャンの車に乗って楽に行く。二人はこれからの人生のロードマップを話しながら、ドライブを楽しんだ。
ジャンのアパートでは、ジャンの祖母、リリとジャンの両親とエミリとルカスが手の込んだ料理をたくさん作っておいた。ジャンは天文学専攻の大学院試験に合格して、フランスロイヤル大学で修士課程を勉強している。冬心は文学研究科の修士課程の論文が通されて、今年の3月から、博士課程を始めた。二人ども、順風満帆な道のりを歩んでいる。
ジャンと冬心が3階のアパートに着いたら、ジャンの祖母、リリと母、エリザベートが冬心を優しく抱きついてくれる。皆はダイニングテーブルに座って、赤ちゃんのことや出産について話の花を咲きながら、ランチを楽しむ。冬心は温かい家族の愛に触れられて、胸が熱くなった。本当に幸せだから、何か、不安になるほど、幸せだ。
5月4日の夜11時過ぎ、寝ていた冬心は突然破水してしまって、救急車を呼んだ。出産予定日に備えて、オムツを穿いていたので、急に尋常じゃない、温かい水が流れる感触に気づき、救命救急センターとジャンに連絡した。ソフィアとジャックも駆けつけてきて、冬心の面倒を見る。
救急車がついて、冬心は運ばれる。ソフィアは付き添いて救急車に乗った。フランスロイヤル大学付属病院に着き、形質者産婦人科の特別室に運ばれて、医師たちの診察を受けた。ようやく陣痛も始まり、冬心は痛みに堪えながら、頑張っている。
ジャンが祖母、リリと両親と一緒に病院に着いたら、汗と涙で濡れて陣痛と戦っている冬心が見える。
「冬心。大丈夫か。医師を呼ぶか?」
「うーん、大丈夫。ちょっと、痛いだけ。。。」
息を弾みながら、弱い声でやっと返事する冬心がわざとらしい笑顔を見せる。その時、とんとんとノックがし、扉が開き、看護師が入ってきた。
「椿さんのお家族ですか?心配しないでください。産母は体調もいいし、フェロモンも安定しています。少し、様子をみて、陣痛がピークに達したら、分娩室に移動させます。こちらの自動モニターで陣痛がピークに達したら、警報音を鳴らすので、その時、直ぐに来ます」
看護師は礼儀正しくお辞儀をして出て行った途端、隅で立っていたソフィアが優しい声音で話しかける。
「初めまして。冬心が居候している家のソフィア・ローゼです」
やっと、視界にソフィアが見えてきたジャンの家族は、申し訳ない気持ちで祖母、リリと両親が挨拶をする。ジャンも笑顔でソフィアに挨拶する。
「ごめんなさい。ソフィアさん。慌てて全然気づかなかったんです。冬心を見守ってくださり、ありがとうございます」
何も言えないまま、息を荒げながら頑張っている冬心を皆が切なく見守る中、ベットの横の自動モニターが急に煩わしい機械音を鳴らす。その瞬間、看護師4人が入ってきて、冬心をストレッチャーで移動させ、分娩室に向かう。ジャンは自分が父親だから、一緒に入ってもいいかを訊く。看護師がいいよと返事してくれたから、ジャンも一緒に分娩室に入る。
それから、長い時間がゆっくりと歩んでいった。ソフィア、リリ、エリザベート、クロードが祈りを捧げている間、廊下の大きな窓から陽が昇ってきて、燦々と躍る光線が柔らかい幕を垂らしていた。
5月5日の月曜日、朝11時頃、分娩室の扉が開き、看護師が出てきて、赤ちゃんが生まれてきたので、産母の家族は入るようにと言う。分娩室には赤ちゃんを抱いている冬心と涙を零しているジャンがいる。年配の医師が優しい声で説明してくれる。
「産母も赤ちゃんも元気です。5月5日の朝10時40分に生まれ、4150グラム、男です。お疲れ様でした。じゃ、産母の健康確認も終わりましたから、普通の病室に移動します」
ふっくらとした肉付きの赤ちゃんが冬心から離されると、アーと大きな声で泣き出す。冬心は赤ちゃんと離れて悲しかったが、赤ちゃんの検査や装置があるので、堪えるしかない。一般病室に運ばれた冬心は栄養リンゲル液を打たれて、うとうとしているうちに、深い眠りに入る。
ソフィアは母子ともの健康状態を確認した後、安心して仕事場に行った。午後5時くらい、目が覚めた冬心は心配そうに見つめているジャンと目が合った。
「ジャン、ご飯は食べたの?もう、大丈夫だから、心配しないでね」
「うん、先、おばあさんがピザ買ってくれて食べた。調子はどう?」
「うん、いい。お腹、空いた」
その時、扉が開いて、医師と看護師が入ってきた。医師は冬心の健康状態をチェックし、笑顔でもう大丈夫だから、ご飯持ってきますと言い残して、看護師と一緒に出て行った。その後、祖母、リリが入ってきて、起き上がっている冬心を見て、優しく抱きつく。
翌日から赤ちゃんの授乳が始まった。朝7時頃、おっぱいを飲ませていたら、とんとんとノックがして、祖母、知加子が目をウルウルしながら、入ってくる。
「冬心。飛行機直ぐに乗ったけれど、時間かかった。元気かい」
「おばあさん、元気だよ。男の子でテオというんだ。テオって神の贈り物という意味だ。おばあさん、見てね」
冬心が抱っこしていたテオを祖母に渡す。祖母、知加子は目を涙で滲ませながら、優しくテオを抱きつく。柔らかくてフワフワなテオはジャンに似ていた。
冬心が5日間の入院を終えて、退院した。祖母、知加子と一緒にパリ7区のジャンのアパートに向かう。ジャンが車で冬心、テオ、祖母、知加子を乗せて、家に向かう。冬心は出産後はジャンと一緒に暮らすことを決めた。それで、荷物も既にジャンのアパートに移しておいた。エミリが今年の3月からルカスと同棲を始めたので、エミリの部屋を整理して冬心とジャンの寝室にしたのだ。
テオは平均の赤ちゃんより大きくて、おっぱいもよく飲んで、よく寝ってて手のかからない子だ。ジャンの祖母、リリは日本語を勉強したことがあって、冬心の祖母、知加子とよく日本語で話して、既に仲良くなった。エリザベートとクロードもジャンの祖母、リリくらいではないが、少し日本語ができたので、冬心の祖母、知加子は何不自由なく、楽しく過ごせる。
冬心は大学院の授業をオンラインで受けることになって、気安く育児ができる。冬心の祖母、知加子の初めてのパリ訪問を記念して、ジャンの祖母、リリと母、エリザベートは休日には必ず祖母、知加子を連れて美術館や博物館など、パリの有名な観光地を歩き回った。
春馬は3月まで勝手に学校を休んだので、コーチからこっぴどく叱られた。そのあとは普段とおり、学校に通って、アイスホッケーの訓練も参加する。3月初めは人文学部棟3階の元のジャンダ教授の研究室をよく訪れて、齋藤助教にジャンダ教授の行き先を訊いたりしたが、予想とおり、齋藤助教は知らないと言い張るだけだった。4月まで齋藤助教に会うために、人文学部棟へ頻繁に足を運んだが、5月に入るともう無駄なことは止める。
丁度その時、探偵事務所からジャンダ・ローゼの捜索にかんしての報告が届いた。23か所の探偵事務所にジャンダ教授の捜索依頼をしたが、どちらもジャンダ教授を捜すことができなかったと言われる。2月末に頼んでから2か月経ったので、結構頑張てくれたとは思われるが、ジャンダ教授の足取りはまったくつかめていない状況だ。
途方に暮れて狼狽している春馬はパリの祖母、イザベルに電話する。イザベルは孫のポールに会いたくて、春馬のお願いを承諾し、2か月間、複数の探偵を雇って、ジャンダ・ローゼを捜すために、全てのフランスの大学と形質者産婦人科を漁ってみた。でも、何処の大学でも、産婦人科でも、ジャンダ・ローゼはいなかった。残念な知らせで春馬は耐えきれない憤懣を感じる。春馬はまだ知らないのだ。ジャンダ・ローゼは何処にもいない。
ジャンダ教授は山形県最上町の役場で転居届を出す時に、日本国籍帰化届と氏名変更届も出した。その時、ジャンダ・ローゼから”齋藤美香”という変名を使った。春馬が捜すかもしれないという不安から、咄嗟に日本国籍帰化申請と氏名変更届も出したのだ。
ピース大学の在籍時に、齋藤助教の妹の齋藤美香が研究室によく訪れてきて、ジャンダ教授と凄く仲良くなった。その優しい齋藤美香を思い出して、咄嗟にその名前を借りて氏名変更届を出した。それで、フランス国籍のジャンダ・ローゼは日本国籍の”齋藤美香”となった。
春馬から依頼を受けた探偵たちはフランス国籍のジャンダ・ローゼを捜したので、失敗したのだ。また、オメガ秘密保持契約書によって、ジャンダ教授の個人情報は公にできなくなった。赤ちゃんのポールも日本国籍を取って、氏名をポール・ローゼから”齋藤冬空”と変えたので、誰も気づかなかった。春馬はジャンダ教授を、ポールをも、捜せなくなった。
その夜、春馬は午後の訓練をすっぽかして、六本木の高級クラブに遊びに行った。DJがダンス曲を流す中、大勢のお洒落な若者が体を弾ませて踊ったり、ビールを飲んだり、お喋りして楽しんでいる。5月2日の金曜日の夜は楽しさを求めて集まった若者の熱狂的な情熱で燃えている。
泥酔した春馬はオメガらしい華奢な男とド派手なメイクをしたガールをナンパして、クラブの隣のラブホテルに向かう。春馬はアルファの本能に任せて、オメガの男とド派手なガールを夜明けまで無我夢中で貪った。その日以後、春馬は訓練をサボって、夜はいつもクラブによって、綺麗な子をナンパし、夜明けまでラブホテルで閨事に夢中になった。春馬はジャンダ教授のことを忘れようと、自分なりに必死になってもがいている。
春馬は軌道を逸して自暴自棄になった。毎晩、クラブで獲物をナンパして、ラブホテルで複数の相手とセックスに浸っている。5月いっぱい、訓練を休んだ春馬は結局、大学側から厳重注意の処分を受けた。更に、春馬の淫らな夜遊びの現場写真が有名な雑誌の取材で曝露されて、春馬は日本アイスホッケー連盟から日本代表選手資格を剥奪される羽目になった。春馬は夜遊びの王子様という愛称で毎日ニュースで話題になった。
5月31日の土曜日の朝、ジャンダ教授は朝飯を食べながら、テレビのリモコンを弄る。すると、とある報道番組で春馬の日本代表選手資格の剥奪や淫らな性生活に関しての報道が流れて、肝を冷やした。テレビで映されている春馬は派手な金髪、ピアシングで、チャラい恰好をして、複数のガールたちとラブホテルに入る映像が出る。
偶然見たテレビで春馬が映されて、ジャンダ教授はそわそわしい胸騒ぎを覚え、目を大きく開いた。
助教、清水きららはいつも朝7時までにジャンダ教授の研究室に着いて、大きな窓を開け掃除機掛けをし、水雑巾で机やテーブルなどを隅々まで丹念に拭く。生真面目なきららは体調が優れなかった恩師の北野教授が退職し、新しい教授が急に任命され緊張したけれど、初めて会ったジャンダ教授は優麗で謙遜で親切だったから、好印象を受けた。女性としてはとても身長が高かったので、ジャンダ教授を見上げていたきららは男の自分がちっぼけに感じて負けた気もした。
日々赤ちゃんのポールは大きくなり、ジャンダ教授は学校の仕事とポールの世話で、勿論、猫のポールも含めて、忙しい日々を楽しく過ごしていた。最上ニュータウンの最上公園は休日になれば、散歩を楽しむ年寄りや子供連れの家族で賑やかだ。
ジャンダ教授は赤ちゃんのポールと猫のポールを連れて最上公園を散歩するのが休日の醍醐味だ。3月30日の日曜日、昼飯を済ましてから柔らかい陽射しに誘われて、赤ちゃんのポールと猫のポールを連れて最上公園に向かう。すっかり春の陽気で浸みたぽかぽかな午後だ。
最上公園では既に大勢の子供たちが遊具で遊んでいる。ブロンドヘアで妊婦の長身のジャンダ教授を見て、人々は笑顔で挨拶をする。ジャンダ教授の美貌は近所でも噂されていた。気持ちよくなったジャンダ教授も愛想よく挨拶を返す。最上ニュータウンの住民はご近所と良い関係を保っている。清々しい春のそよ風に促されて赤ちゃんの冬空(ポール)が笑顔を見せながら、あーうーと喃語を喋り出す。ジャンダ教授は乳母車から赤ちゃんの冬空(ポール)を抱き上げてブランコ前の椅子に座る。
その時、隣家のさちちゃんが寄ってきて、赤ちゃんの冬空(ポール)のほっぺたを撫でる。
「冬空、大きくなったね。早く大きくなって、お姉ちゃんと遊ぼう」
「ありがとう。きっと、冬空もさちちゃんと遊びたかるよ」
ジャンダ教授は口の角を丸く緩んで言いながら、本当に穏やかな陽ざしを堪能する。
春馬の母、桂子は最近、居ても立っても居られない気持ちで曇っていた。春馬がフィンランド訓練から急に帰ってきては、ジャンダ教授を捜しに奮闘しているからだ。3月中旬をまわったのに、相変わらず、毎日出かけては、夜遅く帰ってきたりした。春馬の父、マイクも春馬を説得したが、春馬は聞く耳すら持っていなかった。春馬のコーチはマイクに電話をして、このまま、ずっと学校と練習を無断でサボったら、次回の大会に参加させないとも言った。
春馬は毎日探偵事務所を訪れては、ジャンダ教授の写真とポールの写真を見せて、捜索を頼んだ。でも、探偵たちは揃って、オメガなので、秘密保持契約書を申請した場合は、捜すのは難しいと話した。でも、諦める気がなかった春馬はお金なら、いくらでも出すので、是非捜してほしいと頼んだ。
春馬はパリに戻った祖母、イザベルに連絡して、ジャンダ教授とポールを捜すのに、大金が必要だと説得して、結構大きな金額が送金された。これで、準備はいいと思った春馬は、有名な探偵事務所から小さな探偵所まで欠かさずに訪問して、捜索を依頼した。春馬はジャンダ教授がフランス文学の教授だったので、全国の大学と形質者産婦人科を漁ってくださいとも付けた。
時間は無垢に進んでいて、もう4月になり、ぽかぽかな陽気に乗って薄ピンクの桜の花びらが舞い上がる。今日もジャンダ教授は冬空(ポール)を校内の保育所に預けて、国際教育部棟の3階に向かう。助教、きららが大きな窓を開けて、掃除をしている。ノックをして入ったジャンダ教授は笑顔でさり気なく挨拶をする。
「清水君、おはよう。今日も凄くいい天気ですね。いつも綺麗にしてくれてありがとう」
「おはようございます。先生、タンポポ茶、飲みますか?」
「ありがとう、でも、自分で淹れます。清水君も何か飲みますか?」
「じゃ、俺はいつものコーヒーでお願いします」
「了解です」
きららは水雑巾で窓サッシを再び拭きはじめる。ジャンダ教授はコーヒーマシーンに行って、コーヒーを淹れる。二人の会話はいつもこうなる、つまり、長く続かないのだ。でも、お互いに気まずさはなく、強いて言えば心地よい静寂だ。
きららは3月半ばになって、齋藤教授(ジャンダ教授)が妊婦のワンピースを着て、大きくなったお腹を抱えて出勤したので、ぽかんとして言葉を失った。冬空(ポール)という赤ちゃんのシングルマザーだとは知っていたが、また、妊娠するなんて、一体どんな男と付き合っているのかしらと疑問が膨らんで、怪訝そうな顔になった。
校内では齋藤教授(ジャンダ教授)の妊娠のコシップで、父親は一体どんな男だの、番はいないかだの、妊娠もしたのになぜ結婚はしないのかだの疑問を抱く声が多かった。だが、ジャンダ教授は何も気にせず、甲斐甲斐しく働く。
4月のパリは東京と違ってまだ少し肌寒い。
冬心は大きくなったお腹を抱えて、大学院に通っている。ソフィアさんの家族やジャンの家族が凄く気を使ってくれるから心は強かった。ジャンのフェロモンで赤ちゃんも順調に成長していて、出産の恐れはない。アーラン教授も妊娠のことを喜んでくれて、出産後はオンライン授業を受けられるように、手を回してくれた。
4月27日の日曜日、冬心はパリ7区のグロ・カイユのジャンのアパートに向かう。ジャンが迎いにきてくれたので、ジャンの車に乗って楽に行く。二人はこれからの人生のロードマップを話しながら、ドライブを楽しんだ。
ジャンのアパートでは、ジャンの祖母、リリとジャンの両親とエミリとルカスが手の込んだ料理をたくさん作っておいた。ジャンは天文学専攻の大学院試験に合格して、フランスロイヤル大学で修士課程を勉強している。冬心は文学研究科の修士課程の論文が通されて、今年の3月から、博士課程を始めた。二人ども、順風満帆な道のりを歩んでいる。
ジャンと冬心が3階のアパートに着いたら、ジャンの祖母、リリと母、エリザベートが冬心を優しく抱きついてくれる。皆はダイニングテーブルに座って、赤ちゃんのことや出産について話の花を咲きながら、ランチを楽しむ。冬心は温かい家族の愛に触れられて、胸が熱くなった。本当に幸せだから、何か、不安になるほど、幸せだ。
5月4日の夜11時過ぎ、寝ていた冬心は突然破水してしまって、救急車を呼んだ。出産予定日に備えて、オムツを穿いていたので、急に尋常じゃない、温かい水が流れる感触に気づき、救命救急センターとジャンに連絡した。ソフィアとジャックも駆けつけてきて、冬心の面倒を見る。
救急車がついて、冬心は運ばれる。ソフィアは付き添いて救急車に乗った。フランスロイヤル大学付属病院に着き、形質者産婦人科の特別室に運ばれて、医師たちの診察を受けた。ようやく陣痛も始まり、冬心は痛みに堪えながら、頑張っている。
ジャンが祖母、リリと両親と一緒に病院に着いたら、汗と涙で濡れて陣痛と戦っている冬心が見える。
「冬心。大丈夫か。医師を呼ぶか?」
「うーん、大丈夫。ちょっと、痛いだけ。。。」
息を弾みながら、弱い声でやっと返事する冬心がわざとらしい笑顔を見せる。その時、とんとんとノックがし、扉が開き、看護師が入ってきた。
「椿さんのお家族ですか?心配しないでください。産母は体調もいいし、フェロモンも安定しています。少し、様子をみて、陣痛がピークに達したら、分娩室に移動させます。こちらの自動モニターで陣痛がピークに達したら、警報音を鳴らすので、その時、直ぐに来ます」
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ふっくらとした肉付きの赤ちゃんが冬心から離されると、アーと大きな声で泣き出す。冬心は赤ちゃんと離れて悲しかったが、赤ちゃんの検査や装置があるので、堪えるしかない。一般病室に運ばれた冬心は栄養リンゲル液を打たれて、うとうとしているうちに、深い眠りに入る。
ソフィアは母子ともの健康状態を確認した後、安心して仕事場に行った。午後5時くらい、目が覚めた冬心は心配そうに見つめているジャンと目が合った。
「ジャン、ご飯は食べたの?もう、大丈夫だから、心配しないでね」
「うん、先、おばあさんがピザ買ってくれて食べた。調子はどう?」
「うん、いい。お腹、空いた」
その時、扉が開いて、医師と看護師が入ってきた。医師は冬心の健康状態をチェックし、笑顔でもう大丈夫だから、ご飯持ってきますと言い残して、看護師と一緒に出て行った。その後、祖母、リリが入ってきて、起き上がっている冬心を見て、優しく抱きつく。
翌日から赤ちゃんの授乳が始まった。朝7時頃、おっぱいを飲ませていたら、とんとんとノックがして、祖母、知加子が目をウルウルしながら、入ってくる。
「冬心。飛行機直ぐに乗ったけれど、時間かかった。元気かい」
「おばあさん、元気だよ。男の子でテオというんだ。テオって神の贈り物という意味だ。おばあさん、見てね」
冬心が抱っこしていたテオを祖母に渡す。祖母、知加子は目を涙で滲ませながら、優しくテオを抱きつく。柔らかくてフワフワなテオはジャンに似ていた。
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冬心は大学院の授業をオンラインで受けることになって、気安く育児ができる。冬心の祖母、知加子の初めてのパリ訪問を記念して、ジャンの祖母、リリと母、エリザベートは休日には必ず祖母、知加子を連れて美術館や博物館など、パリの有名な観光地を歩き回った。
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丁度その時、探偵事務所からジャンダ・ローゼの捜索にかんしての報告が届いた。23か所の探偵事務所にジャンダ教授の捜索依頼をしたが、どちらもジャンダ教授を捜すことができなかったと言われる。2月末に頼んでから2か月経ったので、結構頑張てくれたとは思われるが、ジャンダ教授の足取りはまったくつかめていない状況だ。
途方に暮れて狼狽している春馬はパリの祖母、イザベルに電話する。イザベルは孫のポールに会いたくて、春馬のお願いを承諾し、2か月間、複数の探偵を雇って、ジャンダ・ローゼを捜すために、全てのフランスの大学と形質者産婦人科を漁ってみた。でも、何処の大学でも、産婦人科でも、ジャンダ・ローゼはいなかった。残念な知らせで春馬は耐えきれない憤懣を感じる。春馬はまだ知らないのだ。ジャンダ・ローゼは何処にもいない。
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ピース大学の在籍時に、齋藤助教の妹の齋藤美香が研究室によく訪れてきて、ジャンダ教授と凄く仲良くなった。その優しい齋藤美香を思い出して、咄嗟にその名前を借りて氏名変更届を出した。それで、フランス国籍のジャンダ・ローゼは日本国籍の”齋藤美香”となった。
春馬から依頼を受けた探偵たちはフランス国籍のジャンダ・ローゼを捜したので、失敗したのだ。また、オメガ秘密保持契約書によって、ジャンダ教授の個人情報は公にできなくなった。赤ちゃんのポールも日本国籍を取って、氏名をポール・ローゼから”齋藤冬空”と変えたので、誰も気づかなかった。春馬はジャンダ教授を、ポールをも、捜せなくなった。
その夜、春馬は午後の訓練をすっぽかして、六本木の高級クラブに遊びに行った。DJがダンス曲を流す中、大勢のお洒落な若者が体を弾ませて踊ったり、ビールを飲んだり、お喋りして楽しんでいる。5月2日の金曜日の夜は楽しさを求めて集まった若者の熱狂的な情熱で燃えている。
泥酔した春馬はオメガらしい華奢な男とド派手なメイクをしたガールをナンパして、クラブの隣のラブホテルに向かう。春馬はアルファの本能に任せて、オメガの男とド派手なガールを夜明けまで無我夢中で貪った。その日以後、春馬は訓練をサボって、夜はいつもクラブによって、綺麗な子をナンパし、夜明けまでラブホテルで閨事に夢中になった。春馬はジャンダ教授のことを忘れようと、自分なりに必死になってもがいている。
春馬は軌道を逸して自暴自棄になった。毎晩、クラブで獲物をナンパして、ラブホテルで複数の相手とセックスに浸っている。5月いっぱい、訓練を休んだ春馬は結局、大学側から厳重注意の処分を受けた。更に、春馬の淫らな夜遊びの現場写真が有名な雑誌の取材で曝露されて、春馬は日本アイスホッケー連盟から日本代表選手資格を剥奪される羽目になった。春馬は夜遊びの王子様という愛称で毎日ニュースで話題になった。
5月31日の土曜日の朝、ジャンダ教授は朝飯を食べながら、テレビのリモコンを弄る。すると、とある報道番組で春馬の日本代表選手資格の剥奪や淫らな性生活に関しての報道が流れて、肝を冷やした。テレビで映されている春馬は派手な金髪、ピアシングで、チャラい恰好をして、複数のガールたちとラブホテルに入る映像が出る。
偶然見たテレビで春馬が映されて、ジャンダ教授はそわそわしい胸騒ぎを覚え、目を大きく開いた。
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ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
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