透明な心にて

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11話

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7月25日の月曜日、午後1時30分にパリのシャルル・ド・ゴール国際空港に着いた冬心が出口で現れたら、浮かべた心で待っていたジャンが走ってきて冬心を強く抱き締めた。一週間ぶりの二人は熱くキスして抱擁した。冬心とジャンは車に乗って、溜まった話の緒を解く。

26日の火曜日、朝の10時くらい、エンライトメント公立大学付属病院の特別室では春馬と母の山田桂子と父のマイク・パンサーと祖母のイザベル・マルソーが見守る中、ジャンダ教授が静かに眠っている。ジャンダ教授の意識がぷつんと切れて夜明けの4時まで熱が下がらなかったため、救急車を呼んだ。精密検査の結果、急なフェロモンシャワーと番契約による急性ストレス発作だと診断された。

今は、何とか熱は下がったが、まだ起きていない。淳から事情を聞いて、慌てて病院に駆けてきた春馬の両親と祖母は惨たらしい強姦によって衰弱された可憐なジャンダ教授を見て、申し訳ない気持ち以上に沈痛がこみ上げてきた。担当医は精神安静剤とフェロモン複合誘導剤を投与して、様子を見るだけだと言い残し、病室を出て行った。春馬の母が涙を流して、言葉を詰まらせて言う。

「春馬、おばあさんと父ちゃん連れてご飯食べてきてね。ここは私がいるから。。。」

「俺、食べなくていい、ここにいたい」

やつれた顔の春馬がどこ吹く風とばかりにかすかすした低い声で言った。

「行こうよ、春馬。ちゃんと食べないと、番の面倒もみられなくなる。ばあちゃんも腹減った」

落ち着いた優しい声で祖母のイザベルが春馬を説得してくる。祖母の優しい誘いで春馬は祖母と父と食事のために病室を出た。春馬の母、桂子はベットで静かに寝っている美しいオメガの手を握って、心低の祈りを捧げていた。暫く祈りを捧げていたら、握った白い手がびくっと動いた。驚いた春馬の母、桂子が見上げるとジャンダ教授と目が合った。戸惑っているジャンダ教授に微笑みながら桂子が口を開いた。

「初めまして。ご気分はいかがですか。私は春馬の母親、山田桂子と申します。春馬がやったことに関しては大変申し訳ありません。許して貰えるとは思いません。一生かけて罪を償いと思います。お水、飲みますか?」

春馬の母、桂子がグラスに水を注いてジャンダ教授に手渡した。朦朧とした思考がうまく渦巻かずぼーっとしているジャンダ教授はグラスを受け取って水を飲んでる。春馬の母、桂子はベット上のナースコールボタンを押した。水をゆっくり飲みこんでいるジャンダ教授を静かに見つめている桂子はいろいろ思い倦ねていた。その時、ドアが開いて担当医と淳が入ってきた。担当医はジャンダ教授にストレスによる突発性フェロモン異常発作と意識不明について詳細に説明し、今はフェロモンの数値も安定していて回復されていると付け加えた。

「私、春馬の従兄です。春馬から事情は聴きました。大変申し訳ありません。今なら、番の解除の手術に間に合います。手術は早ければ早いほど、身体にいいです。明日から可能ですので、考慮していただけますか?」

淳がおそるおそる静かに口を開いた。今は、思考の回路が回り始められたジャンダ教授は無表情で頭を縦に振った。

「分かりました。よく決めましたね。それじゃ、ここの理由書を書いていただけますか。正直に書いていただければ大丈夫です」

淳は理由書の紙をジャンダ教授に渡した。暫く綿密に理由書の説明を読んだジャンダ教授が硬い口を開いた。

「後で、書きます」

担当医と淳は明日の手術に関して説明して、お辞儀をして出て行った。隣で静かに見守っていた桂子は何か必要な物があるか等気を配ってジャンダ教授に質問したが、ジャンダ教授は静かにいりませんといっただけで、静寂に包まれていた。桂子は自分より年上なのに、とても綺麗で若々しいジャンダ教授から目を離すことができなかった。暫くジャンダ教授を見つめていた桂子は、ジャンダ教授が気楽に休めるようにお辞儀をして病室を出た。

独りで残されたジャンダ教授は病室の備え付けの電話を取って冬心の祖母と齋藤助教に電話を入れて、6日間急用で行けない旨を伝えた。電話を切ろうとするとき、春馬と春馬の父と祖母が入ってきた。

「先生、大丈夫ですか。何か食べますか?」

春馬は起きているジャンダ教授を見て嬉しくなり声が弾んでいた。ジャンダ教授は何も言わずにベットに戻った。先に、春馬の祖母、イザベルが優しい表情で目を潤ませてフランス語で挨拶をする。

「初めまして。私、春馬の祖母、イザベル・マルソーです。この度は大変申し訳ありません。貴方の処分の通り、従います。辛いとは存じますが、どうかご自愛ください」

ジャンダ教授は同じフランス人の春馬の祖母、イザベルが本気で心配している気配を感じて、口を開いた。

「明日、番解除の手術を受けることになりました。お互いに足纏いことはないです。もうこれ以上、関わりたくないです。帰ってください」

「申し訳ありません」

春馬の父、マイクも深く頭を下げて謝ってきた。ジャンダ教授は何も言わずに、ベットの中に入った。

「先生。俺、罪の償いするから番の解除はしないでくれ。俺は先生と永遠に繋がっていたい」

ジャンダ教授の手を握ろうと手を差し伸べる春馬の大きな手をジャンダ教授は退けて冷たい語感でいう。

「私を本気で考えるなら、もう私の前に現れないでください。これ以上、関わりたくない。出てください」

「俺、これから警察署行くから。俺は後悔しないんだ。先生を一生、愛してる」

春馬は腹を括って野太く言った。春馬のめらめらと燃える目を見つめてジャンダ教授が鰾膠も無く静かに言う。

「警察署は行かなくていいです。貴方を許すことではないけど、人の人生を無茶苦茶にはしたくないです。これからは無垢な人を傷つける真似はしないでください。これが償いです」

意外の言葉で春馬は胸が熱くなった。その時、どんどんドアをノックして、春馬の母、桂子が入ってきた。

「話し中にすみません。春馬、果物買ってくれたね。でも、ジャンダさんは明日、手術を控えているので、今日は、飲み物以外は何も食べられないよ」

「先生、ありがとう。でも、俺は先生を諦めないよ。ずっと先生の傍にいる」

真剣な眼差しの春馬にジャンダ教授は溜息をついて明け透けに言い出す。

「私は君が嫌いです。顔も見たくない。もう、私の人生から消えてください」

「あの、何か必要なものはないですか。何でも全力で助けたいです。春馬を通報しないことはありがとうございます」

春馬の父、マイクが重い口を開いた。

「何もないです。ただ、春馬君が私の前に現れないようにしてください。それだけです。もういいですので、一人で休みたいです。帰っていただけましたら、助かります」

疲れ気味のジャンダ教授は押し黙った。ジャンダ教授を配慮して春馬の祖母と両親は挨拶して病室を出ようとした。でも、春馬が出ようとしないから、母、桂子が今は休まさせておくべきだと諭して連れて出た。一人で残されたジャンダ教授は凄く疲れてまた、目を閉じて眠りに入った。

午後6時に担当医が回診に訪れて目を覚ました。手術の理由書が必要だと言われてジャンダ教授はペンを持って書き始めた。強姦とは一切書かないでお互いの同意で番の契約をしたが、気が変わったので解除を希望すると書いた。番の解除の手術はレイプ等強引に番の契約をされた場合は国の援助で無料で手術を受けられる。でも、自意による解除手術は50万円もする。担当医は書き終えた理由書を見て、これで大丈夫ですかと訊いてきたが、ジャンダ教授は大丈夫ですと簡潔に返事しただけだった。

担当医はフェロモン安静剤を投与して、いろいろ質問した後に病室を出た。また、一人になったジャンダ教授は深い眠りに入った。夜8時くらい、家に寄ってシャワーを浴びて着かえてきた春馬が病室に入った。くっすり寝ているジャンダ教授を見て、思わず手を握ってしまった春馬は絶対離さないと痛烈に思った。

翌朝まで、くっすり寝たジャンダ教授は担当医と淳の回診で起こされた。着かえられて麻酔剤を打たれたジャンダ教授はストレッチャーに移動されて手術室に連れて行かれた。春馬は傍で付き添っていたが、ジャンダ教授は目もくれなかった。5時間も掛った番の解除手術が終わって病室に移されたジャンダ教授は麻酔で眠ったままだった。

春馬と春馬の祖母と両親は無事に手術が終えて安心していた。3時間後、目を覚ましたジャンダ教授は春馬を見て、体が震え出した。春馬の祖母は直ぐ、ナースコールを押して心配そうに見守っていた。担当医と淳が病室に入ってきて、番の解除でアルファのフェロモンに敏感になったから、一時的な反応で問題はないと言った。

また、フェロモン調節のために、暫くはアルファのフェロモンに拒否反応が出ると言いつけた。淳は春馬にもうジャンダ教授に近づかないように注意した。でも、春馬は明後日の夏訓練の開始までは傍にいたいと言い張った。春馬の家族は申し訳なさそうにジャンダ教授に謝った。

ジャンダ教授を囲んでずっと見守る春馬の家族に居心地が悪くなったジャンダ教授は受話器を取ってマンションのコンシェルジュに電話をした。コンシェルジュに家にいるポールの様子を見てくれることやスマホを宅配便で病院まで送ってくれることを頼んだ。春馬は自分が家に行ってポールの世話をしたり、スマホを持ってくると言ったが、ジャンダ教授はいらないと断った。ジャンダ教授は春馬の家族は気にせずにまた、眠りに入った。

春馬が夏訓練でもう病室に顔を出さないようになってジャンダ教授は安心した。春馬の家族も4日間ずっと訪れてきたが、ジャンダ教授が真剣にもう来ないで下さいと頼んだら来なくなった。だが、春馬はジャンダ教授のフェロモンの安静のために、担当医から接近禁止を令されたから、いつも訓練後の夜8時には病院に来てジャンダ教授の病室の前で暫く座っていてから切ない気持ちを抑えて踝を返した。

やっと1週間の入院を終えてジャンダ教授は退院することになった。ジャンダ教授は病院の受付に行って手術費と入院費を支払いしたかったが、既に春馬の父親が払ったみたいでそのままに家に向かった。久しぶりに家へ戻ったジャンダ教授を見て、ポールは嬉しく尻尾を振って高い声で鳴きはじめた。ジャンダ教授はポールを優しく抱き締めて涙を流した。

春馬はジャンダ教授に会いたくて毎日訓練後、夜8時に何回かジャンダ教授のマンションを訪れたが、ジャンダ教授は無視し続けた。そのまま、時間は過ぎて行き、8月の中間になり、ジャンダ教授はポールを連れてパリに向かった。家族と再会したジャンダ教授は楽しい時間を過していた。

再び、東京に向かう前日の昼、家族皆で食卓を囲んでランチをする時だった。ジャンダ教授は急に胃や胸がむかむかして気持ち悪くなって吐き気もして料理を全然食べられなかった。心配になったジャンダ教授の母、アンナと妹、ソフィアが病院まで付き添った。

診察を終えた老いた医者はおめでとございますとにっこり笑って妊娠2週間目だと言いつけた。予想はしていたジャンダ教授は淡々として妊娠手帳とオメガ妊娠指導冊を貰って診察室を出た。廊下で待っていた母と妹には素直に言えることができず、ただの胃もたれだと咄嗟に嘘をついてしまった。

ジャンダ教授は10日間のパリの滞在を終えて東京に戻ってきた。お腹で育てている命を考えるなら、挫けれる暇なんかなかった。ジャンダ教授は覆水盆に返らずことでも自分に訪れてきたご縁なので、何があってもこの命は守り続けることを決意して週に1回は産婦人科に通い始めた。

7月27日の水曜日、冬心とジャンはパリのリヨン駅から乗車し、6時間後バルセロナのサンツ駅に到着した。1日目と2日目はサグラダ・ファミリア、グエル公園、ピカソ美術館を回って3日目と4日目はマドリードのプラド美術館、マドリード王宮を見歩いた。翌日は列車に乗ってポルトガルのリスボンに行って、ジェロニモス修道院、サン・ジョルジェ城やリベイラ市場を見物して3日間滞在して飛行機でスイスに向かった。

スイスの1日目と2日目はユングフラウヨッホに行って自然に癒されてスフィンクス展望台からの景色も楽しんだ。スイスでの3日目の最後の日は、チューリッヒに行ってグロスミュンスター大聖堂やスイス国立博物館を楽しんだ。夏の繁忙期のことでチューリッヒではホテルの部屋を取るのが難しくてダブルベッドの部屋を一つ取るしかできなかった。

ジャンは11日間の旅行でやっと冬心と一緒の部屋で寝ることがとても嬉しくて心の中で歓声を上げた。二人はホテルのレストランで夜飯としてラクレットを食べ終えて部屋に戻ってきた。ジャンは翻訳のため、ノートパソコンにしがみ付いている冬心の隣で、スマホのゲームをしていた。夜10時くらい、冬心が先に風呂に入ってジャンは心を躍らせてスマホを見ていた。30分後、冬心が肩までくる髪をちょっと濡らして綺麗な花柄のパジャマを着て出た。余りにも可愛いなぁと思いながら、ジャンが風呂に入った。

20分後、ジャンが風呂から出てみたら、冬心は先に眠りに入っていた。スヤスヤ寝てる寝顔が凄く綺麗でジャンは思わず手を上げて冬心の顔を優しく撫でた。柔らかなイチゴみたいな唇を指で撫でてキスをした。その弾みに冬心がパチクリと目を開いた。ジャンはこれが信号だと感ずって冬心の唇を舐めながら手をするりとパジャマの中に潜り込んで冬心の腹や胸を愛撫した。

冬心はビクッと体を小刻みに震えながら顔を桜色に赤く染めていた。ジャンは既に興奮して冬心のパジャマのボタンを開けて丸出された透き通るような白い肌を口で舐めた。優性オメガらしく女のおっぱいのように膨らんでいた乳房を優しく舐りながら、薄ピンク色の乳首を美味しくしゃぶった。惚れている冬心の口から息を喘ぐ甘美な嬌声が上がった。

ジャンは強烈な色香を放っている冬心の上で暫く手と口を技巧的に動きながら優しく愛撫する。冬心の後孔から愛液がだらだらと溢れ出し、ベットのシートまで濡らしていた。濃密になった冬心の薔薇香りのフェロモンで心音が高く踊るジャンは冬心の両足を広げて白いインナーパンツをそっと脱がす。薄ピックの可愛いペニスが我慢汁で潤ってビクビクしていた。ジャンは冬心の可愛い小型なペニスにキスの雨を浴びせる。ジャンはエクスタシーのノリに乗って冬心の後孔に手を触れる。

ジャンは愛液でぐちょぐちょになっている穴を優しくしゃぶる。すると、冬心が突然「嫌っ」と叫んで拒絶した。思わずの反応にきょとんとしたジャンは「もうやらない」と優しくいたわるように言って冬心のさらさらした髪を梳かすように撫でる。すすり泣きながら震えてる冬心を見てジャンは申し訳ない気持ちに駆けられ冬心の頭を優しく撫でて抱きつく。

暫くしたら冬心が安静してきたので、ジャンは優しく冬心を横抱きして、風呂に連れて行って体を洗ってあげた。冬心は何も言わずにぐったりと身体をジャンに預けたままだった。ジャンは丁寧に冬心の身体にオメガクリームも塗ってあげる。

冬心は静かに眠りに入った。ジャンは隣で冬心の頬を撫でながら愛らしい寝顔を胸に焼き付けていた。初めは気持ちよいムードで進められたが、なぜ、急に冬心が拒否して嫌がったのか、悩んだ末に、ジャンの気持ちは鬱に曇られた。ジャンは何があったかなぁ。。。と切ない気持ちに暮れて物憂げな長夜を一寸も眠れなかった。






















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