透明な心にて

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10話

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25日の月曜日、朝8時30分飛行機で冬心がパリに向かった。ジャンダ教授と祖母が見送る中、沢山のファンたちと記者たちも優しく見送ってくれて冬心は涙ぐんでしまった。大きなマスクで顔を覆っていたジャンダ教授も涙が出たが、笑顔で見届けている逞しい冬心の祖母を見て頑張って涙を堪えた。

冬心は星空町のピースタワーマンションへの引っ越しや冬心が昔に書いた詩と小説の出版のことなどをジャンダ教授に頼んだ。冬心はジャンダ教授への感謝の気持ちでお礼として500万円を渡したが、ジャンダ教授は固く断ってお金を返した。ジャンダ教授は自分は豊かな生活を送っているので、大変な人々を助けられる団体に寄付してほしいと言った。

平穏なジャンダ教授の日常に波紋が起きたのは春馬に出会ったからだ。春馬がジャンダ教授を毎日追いかけているので、ジャンダ教授はストーカー被害で警察に相談するかどうか悩んでいた。でも、冬心の親友なのでもう少し我慢することにした。

今日も羽田空港まで春馬がついて来て、一緒に冬心を見送りした。その後、ジャンダ教授は冬心の祖母を星空町まで送ってあげたくて駐車場に行ったら、春馬がついて来て乗せてくださいと頼んできた。何もわからない冬心の祖母は愛想いい春馬が冬心の親友だということですっかり気に入って、一緒に行ってお茶でもしようと誘ってきた。

そのため、ジャンダ教授は冬心の祖母と春馬を乗せて星空町まで走っている。春馬は冬心の祖母に冬心の高校時代の逸話を愉快に話しまくっていた。銀河水公営アパートについた三人はお茶と煎餅を食べながら引っ越しのことや本の出版のことなど楽しく話した。昼時間になり、冬心の祖母の体調を配慮したジャンダ教授は約束があるから帰らないといけないと言い出して冬心の家を出た。春馬も冬心の祖母にお礼を言ってジャンダ教授について出てきた。

ジャンダ教授が銀河水公営アパート前に停めた車に乗ろうとしたら春馬が勝手にドアを開けて乗り込んできた。ジャンダ教授は春馬に一人で帰ってほしいと言ったが、春馬は全然動かないで白を切った。仕方なく運転席に乗ったジャンダ教授は送ってあげるしかないと思い、春馬に家の住所を訊いた。春馬は先生と一緒にいたいから、家の住所は教えられないと言い切ってにやにやした。

頭が痛くなったジャンダ教授はピース大学に車を走らせる。ドライブ中、春馬は幼い頃の話やアイスホッケーに出会った話など一人で気持ちよく喋っていた。ジャンダ教授は全然興味なさそうに無表情で相槌や返事もしないまま運転した。

地下2階の駐車場に入って車を停めたジャンダ教授はドアを開けて出ようとした。その時、春馬がジャンダ教授の華奢な手首を掴んで強く抱きつく。驚いたジャンダ教授は背筋を粟立たせて必死に抵抗して春馬から離れようとしたが、力不足で筋肉ムキムキの大きな体の春馬に潰され抱かれて息を堪えていた。春馬は素早く手慣れた様子で運転座席の横のレバーを引いて運転席のシートを倒した。ジャンダ教授は直ちに春馬の下敷きになって組み敷かれた。

「先生。好きです。いや、愛してる。付き合ってください。俺、何でもやるから」

「あぁ。。。冗談でもそんなこと言わないでぇ。私は君の親みたいな歳です。正気じゃないぃ」

春馬の硬い胸に抱かれて身じろぎもできないジャンダ教授は暴れようとして疲れてしまった。春馬は意図的にフェロモンを出してオメガのジャンダ教授を襲い始める。春馬の潮風の海っぽさを感じられるフェロモンが濃くなってジャンダ教授は段々体がじんじんと熱くなり、むらむらしてきてしまった。6年ぶりのフェロモンシャワーで直ぐ反応してしまったジャンダ教授は頭には絶対嫌だと叫んでいるのに、本能に正直な不覚な身体はビクビク反応して乳首がぷくっと立って、ペニスも硬くなり始めた。

「いや。止めて。いやぁぅ。。ぁぁ。。。お願。。ぃ。。。」

ジャンダ教授がどんなに痛切に懇願しても、もう後戻りできる状態ではない。必死に声を上げて哀願するジャンダ教授を春馬は抱きしめたまま唇を舐めて奪う。嫌がるジャンダ教授の綺麗な艶やかな唇に強熱にキスをする。春馬は息を喘いて苦しそうに見えるジャンダ教授の口の中に舌を入れて綺麗な歯並びをなぞってみた。ジャンダ教授は無惨に無理やり吸い上げられる舌をどうにもできなくて開けられた口端から唾液を垂らしている。

春馬はプッシュスタートボタンを押し、エアコンのA/Cボタンを押してからジャンダ教授の長いウェーブのブロンドヘアが邪魔にならないように、さらさらとして手触りがいい髪の毛をなであげた。車内はほんのり清潔感のあるクリーンなスズラン香りのフェロモンが漂ってきて、春馬は直ぐにジャンダ教授のフェロモンに反応して興奮し、ペニスが最大まで勃起した。

春馬はジャンダ教授の唇を堪能しながら両手で白いリネンシャツのボタンを素早く外した。開けられたシャツの下の白いインナーを捲くたら、柔らかくて純百な肌で薄ピック色の乳首が現れた。手で胸元を触ってみたら、柔らかくてすべすべの肌触りが気持ちいい。オメガらしく瑞々しい乳房が女のように少し膨らんで出ていた。春馬は硬く立った乳首を舐めながら執拗に愛撫した。暫く乳首を強く舐めて吸い上げていたら、ジャンダ教授の口からやっとエロい声が漏れてしまった。

ジャンダ教授の感じてる淫らな顔や漏れる喘ぎ声で興奮が増した春馬は両手で乳房を撫でながら右の乳首を美味しくしゃぶった。ちゅるーちゅーちゅるージャンダ教授の乳房を吸い付ける卑猥な音とはぁーはぁーあぁんーと喘ぎ、呻るジャンダ教授の官能的な嬌声のみが静かな地下駐車場のパール色のメルセデスベンツの中に響いていた。

暫く乳房をしゃぶっていた春馬は手を下に伸ばしてジャンダ教授の白のジーパンのファスナーを降ろした。ジャンダ教授の白いインナーパンツは勃起したペニスから出る少量のプレカムと後孔から出る大量の愛液でぬるぬると濡れていた。インナーパンツを降ろしたら、オメガらしく小さなピンク色のペニスが顔を出す。春馬は乳首もピックで綺麗けど、ペニスも持ち主に似て可愛くて綺麗だなぁと思いながら、小さいペニスを口に咥えた。

ジャンダ教授のペニスを吸い込んで舐めながら愛撫する春馬が甘い味のペニスを暫く夢中でしゃぶっていたら、ジャンダ教授は体を大きく震えながらイってしまった。ジャンダ教授のピンクのペニスから薄白い精液が出だので、春馬は一液も残さずにそれを美味しく呑み込んだ。

素裸になったジャンダ教授は激しいフェロモンシャワーで甚振られる体がちくちくして後孔の奥が痒くなって我慢できなくなった。ジャンダ教授の紅潮した煽情的な顔はぐずぐずになって目には涙が溢れ、頭が朦朧として本能の快楽に浸っていた。6年前のポールとのセックス以来、今まで全然性交関係がなかったジャンダ教授の隠れていた淫靡なオメガの本能が春馬により覚醒され全身をびりびりと弾けていた。

ジャンダ教授の身体はもっと熱くなり、呼吸も浅くなってきた。優性アルファの春馬は久々のフェロモンシャワーと密度な愛撫でオメガのジャンダ教授に突発性発情期が起こったことに気づいた。以前付き合ったオメガがアルファのフェロモンシャワーと強度なセックスで突発的に発情期を招いた経験があったからだ。

春馬はレイプまではしたくなかったけれど、妖艶な体で興奮を煽り立てるジャンダ教授の魅力に血気盛んな欲情が燃え上がってしまい、背徳感を無視して、びちょびちょの後孔を舐めて指1本を挿れた。ふっくら熟れた内壁が春馬の指をきゅうと引き締めて捻じる。気持ちが高ぶった春馬は一気に指3本をいれて膣内を荒々しく掻き回す。感じ切ったジャンダ教授はエロい嬌声を上げて、腰を大きく跳ねる。

理性の緒が切れた春馬は指4本をいれて勢いよく抉る。ジャンダ教授の淫らな穴は絶頂へと駆け上げて大量の愛液がジョボジョボ溢れ出す。春馬はベロで穴を舐めて大量の愛液を飲み込んで舌を深く挿入し、心ゆくまで後孔を味わう。鈴蘭と潮風の濃密な香りで満ちている車のシートがきしきしと音をだてながら、激しく揺れていた。

春馬は雄々しい長大なペニスを挿れてピストンをかまし、まぐわる。ジャンダ教授は穴をちゅるんと引き締めたり緩んだりしてピストンのリズムに合わせて腰を動かす。ジャンダ教授の穴は春馬の膨張されたペニスを粘り強くむしゃぶりついて律動する。

春馬は色っぽいなジャンダ教授のお尻の動きに、男を喜ばせる術を知り尽くしているなぁと思いながら胎の中を激しく突き、波打った。暫く絡まっていた体が至極絶頂に達して、春馬の巨大なペニスは肥大になり目一杯ノッティングした。ジャンダ教授は疼く快感で大きく震えながら春馬の降り注ぐ大量の精液を享楽していた。

その時、大量の精液を送り込んだ春馬はジャンダ教授の白くて華奢な項を勢い良く噛んだ。濃いスズランの香りのフェロモンが噴出してアルファの本能を刺激し、春馬は項を吸い付けて愛撫した。何回か気持ち良くてイッちゃって享楽に耽ていたジャンダ教授は咄嗟に項を噛まれて遠ざかっていた理性の欠片を取り戻し、精いっぱい抵抗したが、遅かった。

ジャンダ教授の項を深く噛み締める春馬はまた興奮して巨大なペニスで再びノッティングし、膣内をぐいぐいと再攻撃する。久しぶりのエクスタシーに酔わされて身体を捻ながら腰を浮かし暴れるジャンダ教授は身体を大きく痙攣し、極度に絶叫した。

春馬は涙で染み付いているジャンダ教授の美しい顔を吟味しながら、獰猛な猛禽類のようにエクスタシーでぶるりと身体を大きく震わせ、膣内奥深くまで大量の子種を流し込んだ。至福感に陶酔した春馬はジャンダ教授の頬に手を添えて唇に優しくキスした。諦念に落ちたジャンダ教授は涙を流しながら息を切らしていた。

1時間以上も及んだセックスが幕を下ろしようとして、やっと肉棒を妖艶な穴から出した春馬はくぱくぱと広げられるピンク色の穴を見つめて試合に勝利したかのような満足感と達成感に浸っていた。

恍惚感の絶頂を迎え終えて理性に戻った春馬はグローブボックスやコンソールボックスを漁ってウェットティッシュを取り出し、疲れ切って動けなくなったジャンダ教授の華奢な身体を丁寧に拭いた。後孔からは絶え間なく大量の子種が溢れ出て、指を入れて掻き回し取り出した。

ジャンダ教授は非常にぼろぼろになって動けなくなったので、春馬に身を任せたまま、目を瞑って流涕焦がれていた。春馬はジャンダ教授の泣いている顔も綺麗だなぁと思いながら、ジャンダ教授にキスをして、服を着せて、ぬるぬるしているシートを隅々まで清掃した。

「先生、ありがとう。俺、責任持つから心配しないでな、愛してる」

春馬の語気の強い言葉にジャンダ教授は何も言わずにすすり泣いてばかりだ。春馬はドアを開けてジャンダ教授を助手席に移しおいて、運転席のシートを再び掃除して、ラジオを弄ってたら、川嶋あいの明日への扉の歌が流れた。

『光る汗、Tシャツ、出会った恋 誰よりも輝く君を見て…』春馬は口遊みながら車のハンドルを回してジャンダ教授のピース高層タワーマンションへ向かう。ジャンダ教授はしくしくと泣いていたけれど、家に着くところにはすやすやと眠ってしまった。春馬はジャンダ教授に一目惚れした即後に、ずっと追いかけていたので、住む所も把握していた。

ハンズフリーセキュリティシステムのマンションなので、ジャンダ教授の車を認識した駐車場のバーが自動的に開いて中へ入られた春馬は静かに眠るジャンダ教授をお姫様抱っこして介抱しながらエレベーターに行った。ハンズフリーオートロックのエレベーターのカメラにジャンダ教授の顔を見せたら、エレベーターの扉が自動的に開いた。エレベーターに乗って、1階のマンションのロビーラウンジに着いた。

高級感のあるオブジェと大きな植物が飾られている広くて天井が高い開放感があるロビーラウンジを通って、エントランスホール内にあるコンシェルジュデスクへ行って、コンシェルジュにジャンダ教授の駐車番号と部屋号室を訊く。コンシェルジュの若い男はテレビで見慣れた春馬を見て、猜疑心なく親切に教えてくれた。

春馬は礼を言って、再び、地下1階の駐車場に行って、適当に停めた車を動かして、ジャンダ教授の駐車番号に移動させ、再び、ジャンダ教授をお姫様抱っこして、エレベーターに行き、17階を押した。よっぽと疲れていたのか、ジャンダ教授は死んだように眠っている。

17階に降りで、1702号室に行って、ハンズフリーオートロックのカメラに認識されるように、ジャンダ教授の顔を仰向きにしたら、チャッカとドアが開いた。広くて綺麗な玄関でジャンダ教授のスニーカーを外し、入ろうとしたら、グレー系のブリティッシュショートヘアの猫がニャーンと鳴きながら、見上げている。

「おすー、俺、春馬、お前の飼い主の旦那様だ。よろしく。はいろうぜ」

春馬は広いリビングルームが白一色で飾られていたので清潔感を感じながら、ダマスク柄のアンバーホワイトにフレームが金色で彫刻されているエレガントな3人掛けのヴェネチアンソファにジャンダ教授を静かに降ろした。大きなソファとテーブルにキャットタワーとモンステラ、アジアンタム、サンスベリア、ストレリチア、フィカス・ベンジャミンなど多くの観葉植物で緑深い新鮮な匂いが充満していた。

ポールはジャンダ教授のお腹にジャンプして座り、蒼白な顔をベロで舐め始めた。しっぽをゆっくり大きく揺れながらニャオン、ニャオンと鳴ぎ続けた。

春馬はポールを抱きしめようとしたが、ポールが突然怖い顔でシャーと鳴いて警戒して拒否したので、諦めてキッチンに行って大きな冷蔵庫からミネラルウォーターを勝手に取り出して飲んだ。ジャンダ教授のお腹の上で疲れたかのようにポールは体を丸く包まって眠ってしまった。

春馬はスマホのラインを確認しながら時間を過していた。もう、暗くなり始め、ポールが自動給餌器に行って、餌を食べる。隣には自動給水器もあって、水も技量よく美味しく飲んでいる。可愛くて見つめていたら、スマホが鳴り響いた。

「春馬、今日はおばあさんが来るから、早く帰って来てっと言ったのに、もう、8時なのに、まだ来ないの?」

春馬の母、山田桂子が心配そうに言うや否や父親の怒鳴り声が聞こえた。

「おばあさん、2時間前について待ってるんだ。早く来い!」

痺れを切らした父、マイク・パンサーの元気な声が煩く聞こえた。

「ちょっと、直ぐには帰れない、番が寝てるから傍にいてあげなくちゃ」

「何、番って、冗談でしょうね。春馬、何、言ってるの」

「母ちゃん、俺、やっちまった。本当の運命の番に出会った。今は詳しく話せねぇ、寝てるから静かにしてる。ばあちゃんにはごめんな。切るよ」

「春馬、ちょっとまーっ。。。」

電話を切った春馬はお腹が減ってきて、キッチンに入って、冷蔵庫を漁った。綺麗に整理されている冷蔵庫には、野菜と果物が多かった。運よく、手作りのガトーショコラケーキの2切れがあった。取り出して食べてみたら、とってもしっとり濃厚なのに生地はホロホロと口どけて美味しかった。ガトーショコラケーキとバナナとメロンもペロリと平らげたら、ポールのニャー、ニャーという鳴き声がした。手を洗ってリビングルームに戻ったら、ジャンダ教授が目を覚ましていた。

「先生、起きましたか。もう、夜9時ですよ。お腹、減ってない?」

ジャンダ教授は起きろうとしても、思い通りに身体が動かず、狼狽していた。春馬は手をジャンダ教授の腰に入れて優しく起こしてくれた。何も言わないジャンダ教授は鬱な気持ちを抑えてバスルームに行こうと思って起き上がったが、足に力が入らずふらつき、ぺたんとへたり込んでしまった。

「先生、どこ行きたいですか?キッチン?浴室?」

ジャンダ教授は何も言わずに目を逸らす。春馬はジャンダ教授をお姫様抱っこして持ち上げる。ジャンダ教授はしんなりとなり、抵抗すらできなかった。春馬はジャンダ教授を介抱して浴室に入った。真っ白な大理石の浴室は清潔感があって、リードディフューザーのジャスミンの甘い良い香りが満ちていた。

「もう、出てちょうだい。独りでいたい」

ジャンダ教授は疲れ果てて弱々しい掠れた声で呟いた。春馬は一瞬躊躇したが、静かにドアを閉めて出て行った。ジャンダ教授はゆっくりと服を抜き、シャワーを始めた。春馬はジャンダ教授が心配で、浴室の前に座り込み、スマホを見ていた。

30分くらい過ぎでもジャンダ教授が出てこないから、焦燥感に駆られた春馬は浴室のドア越しに声をかけてみた。でも、シーンと静寂に包まれるだけだった。

「先生、ドア、開けますよ。いいんですか」

春馬は再び大きな声を出した。でも、静まり返るだけなので、ドアノブを触った。ドアはロックされていないので、容易く開けた。やっぱりジャンダ教授はシャワーブースで倒れていた。春馬はシャワーヘッドからしゃーっしゃーと出る水を止めて、洗面台の棚から大きなタオルを取り出し、ジャンダ教授の体を優しく拭いて、大きなタオルでジャンダ教授の身体をくるっと包んで抱いて出た。

浴室以外に3つのドアがあったので、一つずつ開けてみた。浴室の向かいの部屋は書斎らしく、大きなウッド机と壁をくぼませて作られたお洒落なニッチで包囲された本棚があり、大量の本がすっきりと収まっていた。白一色のルネッサンスインテリアのリビングルームとは違って、アンティークウッドでインテリアされていて落ち着いた雰囲気だ。

リビングルームには美しい白のレースカーテンで気品があるのだが、書斎は落ち着いたブラウン色のウッドブラインドで、伝統的英国のクラシックな雰囲気が滲んで出る。

浴室の隣の部屋を開けたら、お洒落なブルーグレー系の衣装部屋だった。多くの衣類や鞄が綺麗に整理整頓されていた。一番奥にある最後の部屋を開けたら、赤とゴールドのダマスク柄の派手な壁紙が目に入った。大きな窓には赤とゴールドのダマスク柄のベルベットカーテン、その前には赤とゴールドのダマスク柄の生地でフレームがブラウンマホガニーで細やかに施された彫刻が豪華なヴェネチアンシングルソファ2つがゴージャスなマホガニー材のティーテーブルを挟んで置いてあった。

真ん中には大きな美しいフィレンツェ風のマホガニー材のアンティークダブルベッドがあった。春馬はまるで貴族の宮殿のような雰囲気の部屋にうっとりしてジャンダ教授をシルクの滑らかな紫色の布団の中にゆっくりと降ろした。

その時に、ふっと見たら、ベットの横のアンティーク調のゴージャスなナイトテーブルの上に置かれた3つのフォトフレームが目に留まった。白パールで飾られているフォトフレームには背が高くてハンサムな巨躯の黒人男が幸せそうに笑っているジャンダ教授を後ろから抱いていてジャンダ教授の頬にキスしている写真が収まっていた。

黒パールのフォトフレームにはアメリカエアラインのロゴが入っているパイロット制服を着て大きな飛行機前で微笑んでいるその黒人男が一人で映っていた。赤パールがついているフォトフレームには赤薔薇のブーケを持って白いウエディグドレスを羽織った美しいジャンダ教授と白いタキシードを着こなした凛としているあの黒人男が腕を組んで笑っている写真だった。

今より、若くて明るさがあるジャンダ教授はこの上なく幸せそうな華やかな笑顔だ。写真をずっと見つめていた春馬はジャンダ教授の左手を布団から出して薬指に嵌められているピンクゴールドの指輪を触ってみた。先程、項を噛む時、確認したが噛まれた痕はなかった。写真の中の黒人男は番ではないみたいが。。。でも、結婚式みたいな写真があったから、気に障った。

突然、ぜーぜーぜーと浅く呼吸するジャンダ教授が寝返しをした。先まで蒼白した顔が今は赤く火照っていた。頬と額に手を当ったら、凄く熱くてびっくりした。春馬は慌てて浴室に行って、冷たい水でタオルを濡らしてきて、ジャンダ教授の顔を優しく拭いた。

身体も熱が籠って熱かったので、急いでスマホをタップした。夜10時20分くらいだ。エンライトメント公立大学付属病院の内科医師の10歳上の従兄の淳に電話した。暫く待っても出てこないから切ろうとした瞬間に落ち着いた声がスマホから出た。

「春馬、家なの?おばあさんいらしたから、俺、今、お前んち、行くところ、運転中」

「淳にぃ。。。ここ、木槿丘のピース高層タワーマンションだけど、早く来てくれ。俺の番が熱出して具合悪いんだ。助けてくれ」

「はぁーおめぇーいつから番ができたの?初耳だ。どうしたの?」

「ごめん、後で話すから早く来てくれ」

「緊急だったら、早く救急車呼んで。意識はあるの?」

「多分、俺が1時間以上ファックしたからかなぁー 」

「おめぇー正気かよ。直ぐいくから40分くらい待って。暑いから水分補給してくれ」

春馬は電話を切って、キッチンに入ってミネラルウォーターをグラスに持ってきた。ジャンダ教授を優しく揺すって起こしたが、ジャンダ教授はやっと目を開けただけで、起き上がろうとしなかった。春馬は再びキッチンに入って棚から小さいティースプーンを持って来て、ティースプーンで水を掬ってジャンダ教授の乾いた唇に運んだ。

ジャンダ教授はよく嚥下できなかったが、少しはゴクッと呑み込んだ。春馬は従兄の淳が着くまで、ジャンダ教授に水を飲ませたり、体を拭いたりして懇ろに看病した。中背で平凡なベータの淳は緊急医療ボックスと大きなトートバッグを持って、ピース高層タワーマンションのエントランスでインターフォンを押した。エントランスを通され、エレベーターに乗って17階に向かう。

1702号室の玄関が開いて、急いで従兄、淳が入ってきた。二人は通路の奥にある部屋へ入った。現役医師らしく、真剣な表情の淳は素早くジャンダ教授の身体を綿密に診た。

「急なフェロモン上昇で熱が出たかも。。。発情期もダブったらしい。脱水症状もある」

淳は早口で言いながら、大きな救急ボックスから注射器とオメガ用のリンゲル液を取り出し、組み立て式のスタントを技巧よく作り上げる。枕が濡れないように頭をタオルで覆っていたジャンダ教授の小さな顔は輪郭がくっきりと見えて大きな瞼の長い豊富な睫毛が綺麗に散り嵌められて、高くて綺麗に彫られている鼻梁と赤いチェリーのように妖艶な唇を美しいく融和させている。

凄く綺麗な人だなぁと感心しながら淳がジャンダ教授の腕に注射針が固定されるところまで挿し込み、オメガ用のリンゲル液を投与する。大きなトートバッグからオムツを取り出し、ジャンダ教授の身体に捲かれた大きなタオルに手を出そうとした途端、春馬が咄嗟に手を出して淳の手を振り払う。

「やめー、俺の番に何にしとる」

「俺は医者だぞ。点滴投与したから、念のために、オムツを穿かせるだけ」

「みーなよ。オムツは俺がやる」

春馬は淳からオムツを取り上げて、大きなタオルを開き、オムツを穿かせようと四苦八苦する。

「これ、塗ってあげて、オメガ専用クリーム、アロマ効果もあるから精神安静にいいよ」

どうにかオムツを穿かせた春馬はオメガ専用クリームを貰って、ジャンダ教授の顔から体まで、丁寧に塗る。

「もう、12時過ぎているから、朝4時まで熱下がらなかったら、病院連れていこう。オメガだから慎重に診ないといけない。ちょっと、オメガ登録証はないかな。医療機関専用の形質者管理アプリで病歴調べられるから。今までの薬の処方歴が分かれば、診断が早い」

春馬はリビングルームに行って、ジャンダ教授の白のセリーヌの革ショルダーバッグを漁って、白色のセリーヌの革の長財布を見つけた。財布の中を開いたら、複数のカードがあって、写真付きのオメガ登録証明書もあった。部屋に戻って淳に渡したら、淳はスマホで形質者管理アプリを開いて、ジャンダ教授のオメガ登録番号を入力して暫く待った。

「何じゃ。30ちょっとかなぁと思ったのに、50歳って、詐欺だな。フランス国籍で劣性オメガ、うん、病歴はないな。発情期もフェロモンの問題もない。番の契約や解除履歴もない。抑制剤も年に3回しかもらってないし、妊娠や堕胎の記録もない。うん、身長高い~、178センチ、体重が55キロ、痩せすぎ、スーパーモデルかよ。B型か、特に問題はなさそうだが、4時まで熱が下がらなかったら、病院に連れて行って、精密検査するしかない。じゃ、言ってみ、何があったの。まさか、レイプじゃないよね。レイプされるオメガは肉体的にはアルファのフェロモンに酔って性交を受け入れるけど、心的には強く抵抗するから脳のフェロモン異常の信号で熱が出たり、体調不良が起こる。レイプ時に、同意なく無理やりに項を噛まれた場合、非常に大きなストレスで気絶したり、意識が朦朧としてフェロモン分泌異常を引き起こす。凄いショックの時には性交後、歩けなくなったり、話せなくなるケースもあった。凄く危険だよ。正直に言ってくれ、春馬」

春馬はペットボトルのミネラルウォーターを一気に飲み干した後、今までの経緯を淡々と話した。話を真剣に聞いていた淳は腹を立ってて激憤した。

「おめぇー、オメガをレイプして勝手に項を噛んで番の契約したら、どんなに罪が重いか知らないのかよ。お前の選手人生は終わりだ。マスコミでも取り上げられて国中、大騒ぎになるはず。日本は、いや、世界中、絶滅危惧種のオメガに対して分厚い特別法律を設けて保護している。オメガ強姦の法定刑は40年以上の有期懲役だ。ヨーロッパでは無期懲役だよ。はぁーどうするんだ。春馬、今までセックスフレンドもいて、欲求不満じゃなかったでしょ。こんなに美しいオメガなら、欲情に目が眩むのは分かるけど、本当に愛するなら、相手の気持ちを尊重すべきだ。お前はこの可憐なオメガを愛する権利も価値もない。明日、病院に連れて行って、番の解除手術をやるつもりだ。番の契約から一週間までには解除手術が可能だ。手術には理由書が必要だから、レイプされて強引に番にされた事実も書かなければならん、俺はお前が素直に白状して罪を償ってほしい」

「覚悟してる。ジャンダ教授を抱いたことに後悔はない。一生、刑務所でいても構わない」

「いかれた奴。本当の愛を知らないんだな。尊重と責任がいるから真の愛だ。まず、叔父さんと叔母さんにも話す必要がある」

心を決めた淳は春馬の父親、叔父さんに電話をかける。春馬は濡れたタオルでジャンダ教授のげっそりした顔の汗を優しく拭きとる。
















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