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贖罪 side 神無月
しおりを挟むside 神無月
「全く、あのクソジジイ…」
おっといけない、ここは学校でした。正しくは理事長、ですね。
頭の中で発言を訂正しながら、私は今、走っています。なぜかというと、なんて遡るような時間も無い程、私はとても焦っています。詳しく知りたい方は、前回の話を振り返ってください。
其れにしても、あのクソジジイのせいで可愛い小鳥遊と離れなければいけなくなりました。ああ、頭の中でクソジジイと呼ぶのは許して頂けると嬉しいです。彼には、とてもムカついているので。
はあ、彼の事を考えるだけで憂鬱な気分になってきました。気分転換に、小鳥遊の話をしましょう。
小鳥遊は、生徒会の会計をしている人物で、下の名前は秋人。学園ではチャラ男として有名です。そういう風に思われているのは、彼のおっとりとした話し方と、ピアスなどの外見が原因でしょう。しかし私は、いえ少なくとも私達生徒会は、小鳥遊のことをチャラ男だとは思っていません。
初めて彼を見た時は、見た目に惑わされてチャラ男だと誤解してしまいました。しかし、生徒会の仲間として共に仕事をこなす内に、その考えは変わりました。というか、偶に学園から姿を消しては、傷を作って戻って来る彼を見て、考えを改めない人は居ないでしょう。
彼が初めて傷を作って戻ってきた日、私は彼を叱るつもりでした。実家に戻るのならせめて連絡はしてくれ、と。でも、できなかった。彼が、とても泣きそうな顔をしていたから……
私は、あの時の小鳥遊の顔を忘れられません。あんなに、辛そうな、様々な負の感情が入り混じったような彼の顔は、もう二度と見たくない。
そして、何度も何度も急に消えては、ふらっと戻ってきてを繰り返す彼を見ている内に、彼が虐待を受けているのではないのかという考えが浮かび、やがて確信に変わりました。でも私には、どうする事も出来なかった。私個人で、神無月家としてではなく、神無月零として動けば、確実に仕留められなかった場合、小鳥遊に影響が及んでしまう。かと言って、神無月家として動くことも出来なかった。神無月家と小鳥遊家は、数年前から関係が拗れていて、お互いに家の弱味を握っているようで、こちらが何かを仕掛けたら、向こうに脅されることは目に見えている。他の生徒会メンバーも同じ様な状態でした。結局私達は、各々の家を守る為に、小鳥遊を救うことを選択しなかった。
私は、好きな人一人救うこともできない、臆病者です。それが、とても悔しくて、いつも彼が辛そうにしている時に声をかけていました。私達はいつでも待っている、と。彼が私達を頼っても、助けられる訳ではないのに_____
自分勝手だと分かっています。でも、止められなかった。彼が、いつ壊れてしまうかわからない程不安定だったから。救わない事を選択したのなら、彼に甘い夢を見せず、見捨てる方が彼の為にもなると分かっていたはずなのに……私のエゴで、彼を引き上げてしまった。甘い甘い夢の世界に。
____だからせめて、彼がこの学園を卒業する迄は、私が彼の傍に居ようと決めました。
これは、彼を甘い夢の世界へ連れて行ってしまった私の贖罪。
そして、狡い私の、彼への愛情。
応援ありがとうございます!
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