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五章 入学旅行五日目
5-04 水没階
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移動チューブから出て地下20階へ降り立った24班の面々は、トリフォンの導きで更に下の階へと向かった。
地下21階から下は権限を持つ者以外は立入禁止エリアとなっていて、幾重にも設けられたゲートの数々で閉ざされている。それらはいずれもトリフォンの言葉と『辞典』によって開錠されて、一行は難なく先へと進めた。なぜトリフォンにその権限があるのか、リューエスト以外はみな少なからず不思議に思ったが、誰もトリフォンにそれを尋ねようとはしなかった。今は何よりも霧の身が案じられ、誰もが緊張しながら口を閉ざしている。
下へ、下へと。連なる階段を、一行はひたすら降りてゆく。
立入禁止エリアの階層には、上の階と同じようにいくつもの書架が並び、それらにはいずれも年経た貴重な書物ばかりが収められていた。稀覯本による宝の山である。
そして下に向かうたび、フロアの構造は複雑になっていった。通路は曲がりくねり、交差した階段がそこかしこに現れ、入り組んだアーチ状の天井が書棚の合間を縫うように続いている。まるで迷路のようだ。トリフォンの案内がなければ、もうとっくに迷子になっていただろう。
やがて一行の目の前に大きな扉が現れ、それを抜けると、目の前に神秘的な湖が現れた。透き通った水を覗き込むと、今まで通ってきた階と同じように、水中に没した階もまた、壁や床自体が発光している。それらは水の反射でそこかしこに不思議な光を投げかけていた。そして更に不思議なことに、水中にも本の詰まった書棚が並んでいる。水没階にある貴重な書物には、耐水処理と劣化防止処理が施されているという噂の通り、それらは辞典魔法によって保護されているようだった。
「わ……すご……。本当に、水没階ってあったんだ……しかも、噂通り本が沈んでる」
「素晴らしいですわぁ……。あの本たちは、いったいいつから存在しているのかしら。悠久のロマンを感じますわ」
アデルとリリエンヌはそう感想をこぼし、下へ向かう階段が水の中に続いているのを驚きながら見ていた。
そんな中、トリフォンは皆を振り向くと、杖を辞典の中にしまい込みながら、朗々とした声を張り上げる。
「各自、辞典魔法の用意を。この先は20階層ほど、ひたすら潜ってゆく。空中遊泳より過酷となるため、心してかかれ。長持ちする空気膜を張り、水圧を相殺せよ。水没階には温度差の激しい場所が随所に現れ、空間の歪みも多発する。決して、わしの通った道より逸れるでないぞ」
張り詰めた空気の中、各自が辞典魔法を自身に張り巡らす。やがてみんなの準備がすっかり整ったのを見て、リューエストが言った。
「しんがりは僕が務めよう。もし何か体調に異変を感じたら、後ろを向いて僕に合図してくれ。いいね、無理は禁物だ。早めに助けを求めて欲しい。誰か一人でも欠ければ、キリが悲しむ」
リューエストらしい物言いに、誰もが真剣に頷きながらも頬を緩めた。
「では、良いか。行くとするぞ」
トリフォンは皆を見回すと、水没した階段を下り初め、一行を率いて遥か下方へと、潜り始めた。
地下21階から下は権限を持つ者以外は立入禁止エリアとなっていて、幾重にも設けられたゲートの数々で閉ざされている。それらはいずれもトリフォンの言葉と『辞典』によって開錠されて、一行は難なく先へと進めた。なぜトリフォンにその権限があるのか、リューエスト以外はみな少なからず不思議に思ったが、誰もトリフォンにそれを尋ねようとはしなかった。今は何よりも霧の身が案じられ、誰もが緊張しながら口を閉ざしている。
下へ、下へと。連なる階段を、一行はひたすら降りてゆく。
立入禁止エリアの階層には、上の階と同じようにいくつもの書架が並び、それらにはいずれも年経た貴重な書物ばかりが収められていた。稀覯本による宝の山である。
そして下に向かうたび、フロアの構造は複雑になっていった。通路は曲がりくねり、交差した階段がそこかしこに現れ、入り組んだアーチ状の天井が書棚の合間を縫うように続いている。まるで迷路のようだ。トリフォンの案内がなければ、もうとっくに迷子になっていただろう。
やがて一行の目の前に大きな扉が現れ、それを抜けると、目の前に神秘的な湖が現れた。透き通った水を覗き込むと、今まで通ってきた階と同じように、水中に没した階もまた、壁や床自体が発光している。それらは水の反射でそこかしこに不思議な光を投げかけていた。そして更に不思議なことに、水中にも本の詰まった書棚が並んでいる。水没階にある貴重な書物には、耐水処理と劣化防止処理が施されているという噂の通り、それらは辞典魔法によって保護されているようだった。
「わ……すご……。本当に、水没階ってあったんだ……しかも、噂通り本が沈んでる」
「素晴らしいですわぁ……。あの本たちは、いったいいつから存在しているのかしら。悠久のロマンを感じますわ」
アデルとリリエンヌはそう感想をこぼし、下へ向かう階段が水の中に続いているのを驚きながら見ていた。
そんな中、トリフォンは皆を振り向くと、杖を辞典の中にしまい込みながら、朗々とした声を張り上げる。
「各自、辞典魔法の用意を。この先は20階層ほど、ひたすら潜ってゆく。空中遊泳より過酷となるため、心してかかれ。長持ちする空気膜を張り、水圧を相殺せよ。水没階には温度差の激しい場所が随所に現れ、空間の歪みも多発する。決して、わしの通った道より逸れるでないぞ」
張り詰めた空気の中、各自が辞典魔法を自身に張り巡らす。やがてみんなの準備がすっかり整ったのを見て、リューエストが言った。
「しんがりは僕が務めよう。もし何か体調に異変を感じたら、後ろを向いて僕に合図してくれ。いいね、無理は禁物だ。早めに助けを求めて欲しい。誰か一人でも欠ければ、キリが悲しむ」
リューエストらしい物言いに、誰もが真剣に頷きながらも頬を緩めた。
「では、良いか。行くとするぞ」
トリフォンは皆を見回すと、水没した階段を下り初め、一行を率いて遥か下方へと、潜り始めた。
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