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四章 入学旅行四日目
4-05a 図書塔 地下12階 1
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午前中はあっという間に過ぎ、霧とリューエストは昼食のために休憩したあと、すぐさま図書塔の読書に舞い戻った。
二人は今度は地下階へと、足を運ぶ。霧の希望で、午後からはこのククリコ・アーキペラゴの地理や歴史を扱った本を、探すことになったからだ。地下12階辺りから始めるのがお薦めだと、エントランス階の司書から聞いた二人は、さっそくそこへ向かう。
リューエストと共に移動チューブに入った霧は、地下階ではどんな本と出合えるのだろう、と、喜びに胸を躍らせていた。
(よおし、頑張って勉強するぞ! 何しろあたし、この地で生まれ育ったみんなと違って、何にも知らないからなぁ……。チェカの書いた物語を読んだとはいえ、実際現地に来てみると、当然ながら情報量が違うわ。幸いこの図書塔には喜びの雄叫びあげて気絶しそうなほど本が揃っているし、この機会に色々学んでおかなきゃ。まず地理でしょ、それから『竜辞典』の記述が載ってる本、ソイやレイのことが載ってる歴史の本も探したい……ううっ、時間がいくらあっても足りない! 図書塔、素敵すぎる!! 誰よこの課題考案したの、感謝感激だわ!)
入学旅行4日目の今日、24班の課題6への達成度は、順調に進んでいる。
『辞典』の入学旅行課題用ページでは、進捗状況が一目で確認できるようになっていて、現在以下のように数字が表れていた。
―――――――――――――――――――
■課題6
レンデュアル島にある図書塔にて、各自好きな本を読了せよ
一人10冊以上、合計50万文字以上
かつ、班内合計200冊 500万文字を達成すること
★現在の個人文字数→6万5423文字 <残り43万4577文字>
★現在の個人冊数→12冊 <達成済み>
★現在のチーム合計文字数→109万6515文字 <残り390万3485文字>
★現在のチーム合計冊数→39冊 <残り161冊>
―――――――――――――――――――
他の課題の進行状況もそうだが、今回の課題6にしてもどうやって読書した文字と冊数をカウントしているのか、霧が不思議に思ってリューエストに訊いてみると、入学旅行課題用ページは、辞典魔法によって特殊なシステムが構築されているのだとか。辞典主と直結した『辞典妖精』が、辞典妖精専用のネットワークを通じて随時報告しているらしいのだが、そう聞いても霧にはいまいちどういう仕組みなのか釈然としなかった。
(まあ、テレビにしたってスマホにしたって、仕組みが理解できなくても便利に使えちゃうからな~、まあ、いっか!)
難しいことはスルーするに限る!とばかりに、霧は考えることを放棄して、達成状況のみ頭に入れた。
霧が午前中に読んだのは軽い読み物が中心だったため、個人冊数は難なくクリアした半面、個人文字数に関しては、クリアまで程遠い。
一方、24班の他の面々は着々と文字数を稼いでいるらしく、班内合計の文字数は順調な滑り出しを見せていた。
(みんな頑張ってるみたいだなぁ。課題6は時間がかかりそうだと思ってたけど、予想以上に進み方が早い。24班はみんな読書が得意なのかも。この分だと、3日もしないうちに達成するんじゃないだろうか……)
課題6の図書塔での読書が終われば、あとは課題5の、「ツアーメイトと協力して、人々の困り事を5件解決せよ」だけだ。それも5件のうち3件はすでに達成済みなので、残りは2件。
(それが終われば、いよいよ空飛ぶ古城学園での生活が始まる。憧れの日々が、もう目の前だ……信じられないな)
霧は、入学旅行をスタートさせたときに見た、古城学園の威風堂々たる姿を思い出した。あの空飛ぶ学園で、本格的な授業と共に学園生活が始まるのだと思うと、期待に胸が躍る。
それと同時に、何とも言えない寂しさが霧の胸に広がった。
入学旅行は楽しすぎて、終わるのが惜しい気持ち。そして、24班との日々を、手離したくないという、気持ち。
ツアーメイトに恵まれ、彼らへの愛着が日に日に強くなるにつれ、別れがたい気持ちが募ってくる。
(まあ、リューエストは……きっと学園に戻ってからもべったりついてくるだろうからいいとして……。アデルやリリエンヌともしクラスが離れたら、あまり会えなくなったりして……嫌だなぁ……。それに、トリフォン。あの人がそばにいると、すごく心が穏やかになるんだよねぇ……。博識で何を聞いても答えてくれるし、何よりあの包容力に満ちた優しい眼差し、紳士的な態度。大好きだ。彼のお孫さんたちは幸せだなぁ……。羨ましい。世界中のおじいさまの中でもきっと最上クラスだよね、トリフォンは。もっといっぱいトリフォンと話したいなぁ。……それから……)
霧は最後に、あの無口なツアーメイトに思いを馳せた。
アルビレオ・ファルステーロ。
神秘的な紫色の瞳をした、黒髪の美青年。
二人は今度は地下階へと、足を運ぶ。霧の希望で、午後からはこのククリコ・アーキペラゴの地理や歴史を扱った本を、探すことになったからだ。地下12階辺りから始めるのがお薦めだと、エントランス階の司書から聞いた二人は、さっそくそこへ向かう。
リューエストと共に移動チューブに入った霧は、地下階ではどんな本と出合えるのだろう、と、喜びに胸を躍らせていた。
(よおし、頑張って勉強するぞ! 何しろあたし、この地で生まれ育ったみんなと違って、何にも知らないからなぁ……。チェカの書いた物語を読んだとはいえ、実際現地に来てみると、当然ながら情報量が違うわ。幸いこの図書塔には喜びの雄叫びあげて気絶しそうなほど本が揃っているし、この機会に色々学んでおかなきゃ。まず地理でしょ、それから『竜辞典』の記述が載ってる本、ソイやレイのことが載ってる歴史の本も探したい……ううっ、時間がいくらあっても足りない! 図書塔、素敵すぎる!! 誰よこの課題考案したの、感謝感激だわ!)
入学旅行4日目の今日、24班の課題6への達成度は、順調に進んでいる。
『辞典』の入学旅行課題用ページでは、進捗状況が一目で確認できるようになっていて、現在以下のように数字が表れていた。
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■課題6
レンデュアル島にある図書塔にて、各自好きな本を読了せよ
一人10冊以上、合計50万文字以上
かつ、班内合計200冊 500万文字を達成すること
★現在の個人文字数→6万5423文字 <残り43万4577文字>
★現在の個人冊数→12冊 <達成済み>
★現在のチーム合計文字数→109万6515文字 <残り390万3485文字>
★現在のチーム合計冊数→39冊 <残り161冊>
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他の課題の進行状況もそうだが、今回の課題6にしてもどうやって読書した文字と冊数をカウントしているのか、霧が不思議に思ってリューエストに訊いてみると、入学旅行課題用ページは、辞典魔法によって特殊なシステムが構築されているのだとか。辞典主と直結した『辞典妖精』が、辞典妖精専用のネットワークを通じて随時報告しているらしいのだが、そう聞いても霧にはいまいちどういう仕組みなのか釈然としなかった。
(まあ、テレビにしたってスマホにしたって、仕組みが理解できなくても便利に使えちゃうからな~、まあ、いっか!)
難しいことはスルーするに限る!とばかりに、霧は考えることを放棄して、達成状況のみ頭に入れた。
霧が午前中に読んだのは軽い読み物が中心だったため、個人冊数は難なくクリアした半面、個人文字数に関しては、クリアまで程遠い。
一方、24班の他の面々は着々と文字数を稼いでいるらしく、班内合計の文字数は順調な滑り出しを見せていた。
(みんな頑張ってるみたいだなぁ。課題6は時間がかかりそうだと思ってたけど、予想以上に進み方が早い。24班はみんな読書が得意なのかも。この分だと、3日もしないうちに達成するんじゃないだろうか……)
課題6の図書塔での読書が終われば、あとは課題5の、「ツアーメイトと協力して、人々の困り事を5件解決せよ」だけだ。それも5件のうち3件はすでに達成済みなので、残りは2件。
(それが終われば、いよいよ空飛ぶ古城学園での生活が始まる。憧れの日々が、もう目の前だ……信じられないな)
霧は、入学旅行をスタートさせたときに見た、古城学園の威風堂々たる姿を思い出した。あの空飛ぶ学園で、本格的な授業と共に学園生活が始まるのだと思うと、期待に胸が躍る。
それと同時に、何とも言えない寂しさが霧の胸に広がった。
入学旅行は楽しすぎて、終わるのが惜しい気持ち。そして、24班との日々を、手離したくないという、気持ち。
ツアーメイトに恵まれ、彼らへの愛着が日に日に強くなるにつれ、別れがたい気持ちが募ってくる。
(まあ、リューエストは……きっと学園に戻ってからもべったりついてくるだろうからいいとして……。アデルやリリエンヌともしクラスが離れたら、あまり会えなくなったりして……嫌だなぁ……。それに、トリフォン。あの人がそばにいると、すごく心が穏やかになるんだよねぇ……。博識で何を聞いても答えてくれるし、何よりあの包容力に満ちた優しい眼差し、紳士的な態度。大好きだ。彼のお孫さんたちは幸せだなぁ……。羨ましい。世界中のおじいさまの中でもきっと最上クラスだよね、トリフォンは。もっといっぱいトリフォンと話したいなぁ。……それから……)
霧は最後に、あの無口なツアーメイトに思いを馳せた。
アルビレオ・ファルステーロ。
神秘的な紫色の瞳をした、黒髪の美青年。
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