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四章 入学旅行四日目

4-02   課題6――図書塔での読書

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 24班の面々は、前日予定を立てた通り、ホテルで朝食を済ませたのち図書塔へと向かった。
 図書塔に到着したのは現地時間の7時半。霧たちの学園標準時間は6時半だ。昨夜は早めに就寝したので睡眠時間は足りているが、もし足りていなかったとしても、霧の目はギンギンに冴えていただろう。なんといっても、今日は一日中、大好きな読書をしていられるのだ。しかも、ククリコ・アーキペラゴの書物である。その上、世界中の書物が収められている、図書塔である。霧の興奮はいや増すばかりだ。

 昨日話し合ってみんなで決めていた通り、今日と明日はそれぞれ自由行動だ。各自図書塔内で、好きな本を選び、読む。
 一行は図書塔内に入ると、解散した。
 アルビレオとトリフォンは地下階へ続く階段へと向かい、アデルとリリエンヌは、一緒に移動チューブに向かって行った。
 もちろんリューエストは、霧のそばに残る。彼は霧を連れて螺旋階段を上りながら、霧にザッと説明を始めた。

「図書塔には色んな図書検索の仕方があるんだけど、初めてここに来るキリには、スタンダードプランをお勧めするよ。地上2階から10階部分に配架されているのは、いずれも劣らぬ人気書物の数々でね、そこから読書を始めよう。まずは僕のお勧め本を何冊か選び出すから、読書繭どくしょまゆの中で読もうか」

「どくしょまゆ?って、何?」

「ほら、あちこちに透明な膜で覆われた大きなボールみたいなの、見えるでしょ。あれは読書用の個室で、読書繭どくしょまゆと呼ばれてる。テーブルと椅子がセットしてあって、快適なんだ。一人用もあるし、数人一緒に入れるまゆもある。中に入ると音を遮断してくれるから集中できるし、会話して他の利用者の迷惑になることも防げる。繭内まゆないの照明も、読書に適した目に優しい明かりなんだよ」

「おお……なんと便利な……」

「キリは図書塔は初めてだから、まず簡単な読み物からいこう。まず何冊か、僕がお薦めを選んでいい?」

「うん、お願い」

 リューエストは10冊ほどを選び出すと、霧と共に読書繭に入った。リューエストの言った通り、読書繭の中はとても快適で、霧は鼻息荒く一冊を手に取ると、気合十分に読み始める。

 リューエストの選んだ本は、どれもとても面白かった。
 霧が最初に読んだのは、55重人格の王子様と、囚われの姫との恋物語。途中ハラハラドキドキの展開で、甘い中にもピリリと辛口要素が含まれ、最後まで飽きずに読めた。
 次に読んだのは、みんな大好き異世界ファンタジー。なんと舞台は日本だ。しかも江戸時代っぽい。もしかしたら作者は江戸時代の日本に行ったことがあるのか?と思うほど、霧の教わった歴史通りの描写があり、驚いた。もっとも、大部分は「ちゃう!多分、そんなんちゃう! 江戸時代どころか、これ日本とちゃうし!」と霧が心の中でツッコミを入れてしまう世界だったので、非常に笑えた。霧は夢中でその本を楽しみ、あっという間に読み終えた。
 次の本はククリコ・アーキペラゴで古くから人気の、偉人物語。1540年以上前、救済者ダリアが仕えていた女王の人生を、事実を基に物語として編纂へんさんしてあるらしい。

(へえ……この女王、すごいな……。権力の座に固執することなく、全人類の幸福と利益のために行動している。立派な人物だ。そうか……ダリアの革命は、彼女の力添えがあったからこそ、成功しているんだな……)

 霧は感心しながら夢中でページをめくった。地名や固有名詞など、一部読み慣れないものがあったが、当時の地図や注釈も添えてあったので、難なく読み進めることができた。

(この本、いいな。手元に欲しい。どこで買えるか、あとでリューエストに相談してみよっと)

 霧はそう思いながらあっという間に読み終えてしまい、次の本を手に取る。
 それは言獣げんじゅうについて書かれた本で、その本を霧が手に取った瞬間、リューエストの顔が嬉しそうに輝いた。リューエストがチラチラこちらを見てくる様子に、霧は、ははあ……と合点がいく。

(これ明らかに、リューの趣味全開の本……。言獣布教用に、わざと混ぜたな? ……あ、でも、なんかすごく面白そう……。言獣げんじゅうの絵がいっぱい)

 霧は次第に、その本に惹きこまれていった。
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