推しと行く魔法士学園入学旅行~日本で手に入れた辞典は、異世界の最強アイテムでした~

ことのはおり

文字の大きさ
上 下
90 / 175
二章 入学旅行二日目

2-20a ソイフラージュの竜辞典――光と虹 1

しおりを挟む
 ――さあ、今すぐ本屋に行って、『竜辞典』を探しに行こう!それは普通の国語辞典にまぎれている。『竜辞典』が新たなあるじに選ぶのは、それぞれ一人だけ。それは、あなたかもしれない!

「……は……? え……?」

 裏表紙側の帯には、他にも、こう書かれてあった。

 ――ククリコ・アーキペラゴへの特別招待状。それは3冊の竜辞典を手にした3人だけに、贈られる。

「え……。え、え……?!」

 まさか、という思いが、霧の胸に渦巻く。
 ドッドッドッと、心臓が飛び出てきそうなほど激しく打ち、熱いのか寒いのかわからなくなるほど、カッと顔に熱が上ったかと思えば、次の瞬間、手足が氷のように冷たく感じられた。

「あ……あああ……ま、まさかね、あは、あは……や、でも一応……、か、確認……」

 霧は自分の、少し前に本屋で購入した自分の辞典を、ホルダーから取り出した。
 そして購入当初から付けられていたカバーをはずし、本自体の表紙を確認する。

「……っ!!」

 ドクン、と、大きく一つ、心臓が跳ね上がる。
 霧は声も無く、息を呑んだ。

 それは普通の、国語辞典――では、なかった。

 煌竜クルカントゥスの宿る伝説の『竜辞典』の一つ、不屈のソイフラージュの『光と虹の辞典』――それはその名称の所以ゆえんとなった通り、美しい虹が浮かび上がり、辞典自体が光を放つように輝いている。

「あ……あああああ、えええええ、……まんま、これ、まんまだよ……ああああ……えええええ……うううううう、うそぉ……」

 しばらく茫然としたのち、霧はハッとして『辞典妖精』を呼び出した。
 可愛いうさぎ耳のカチューシャを付けた妖精が即座に現れ、小首を傾げて霧を見つめている。霧はごく小さな声で尋ねた。

「あの、あの、こここ、これさ……もしかして、ソ、ソ、ソ、フラフラフラーの……りゅ、……じ、じて……な、なの?!」

 動揺するあまり不明瞭な発音になった霧の言葉を、『辞典妖精』は正確に把握して答えてくれた。

【そう。ソイフラージュの『竜辞典』。それ、ピョン! は、あなたを選んだ。あなたが現れた時、は歓喜した。待ち望んだ存在、ついに来たと! あなたの魂、あなたの心、あなたの体、とリンクした。何一つ、違和感はなかった。あなたは奇跡。この『辞典』を見つけて、手に取り、した。あの異世界で、この『辞典』を見つけるだけでも稀有けうなこと、あなたはその上、手に取れた。その瞬間、わたしたちは確証した。が、遂に現れた、と! あなたは奇跡!】

「え……ええ……?! 何それ。て、適合……? ドナーみたいな……え、え? そうなの?」

 霧はしばらく茫然としていた。『辞典』と文庫本を持つ手が震え、あまりの驚きに声も出ない。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界で泣いていた僕は、戻って来てヒーロー活動始めます。

まったりー
ファンタジー
8歳の頃、勇者召喚で異世界に飛んだ主人公、神楽啓斗(かぐらけいと)は、1年間を毎日泣いて過ごしていました。 そんな彼を可哀そうと思ったのは、その世界で女神と呼ばれている女性で、使い魔を通して色々力添えをして行き、段々と元気になった神楽啓斗(かぐらけいと)は、異世界で生きる訓練を始めます。 ですが、子供は親元に戻るべきと女神様は力を使い、現代に戻してくれたのです。 戻って来た現代では、女神様の使い魔も助けも行われ続け、神楽啓斗(かぐらけいと)は異世界の力を使い、困ってる人を助けるヒーロー活動を始めます。 普通の平和な世界だと思っていた神楽啓斗(かぐらけいと)でしたが、世界には裏の顔が存在し、戦いの中に身を置く事になって行く、そんなお話です。

黒白の魔法少女初等生(プリメール) - sorcier noir et blanc -

shio
ファンタジー
 神話の時代。魔女ニュクスと女神アテネは覇権をかけて争い、ついにアテネがニュクスを倒した。力を使い果たしたアテネは娘同然に育てた七人の娘、七聖女に世の平和を託し眠りにつく。だが、戦いは終わっていなかった。  魔女ニュクスの娘たちは時の狭間に隠れ、魔女の使徒を現出し世の覇権を狙おうと暗躍していた。七聖女は自らの子供たち、魔法少女と共に平和のため、魔女の使徒が率いる従僕と戦っていく。  漆黒の聖女が魔女の使徒エリスを倒し、戦いを終結させた『エリスの災い』――それから十年後。  アルカンシエル魔法少女学園に入学したシェオル・ハデスは魔法は使えても魔法少女に成ることはできなかった。異端の少女に周りは戸惑いつつ学園の生活は始まっていく。  だが、平和な日常はシェオルの入学から変化していく。魔法少女の敵である魔女の従僕が増え始めたのだ。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...