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二章 入学旅行二日目
2-18b 歴史に残る大発見「24班の奇跡」 2
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(なるほど、神隠しスポットなのか、この辺りは……)
進むうちに、霧は納得した。確かに、進めば進むほど、ぞわぞわと肌が粟立ってくる。何かの気配を感じて振り向くが、その気配はサッとどこかへ移動し、正体がつかめない。言獣かもしれないし、そうじゃないかもしれない。とにかく、その気配は異質としか言いようがなく、もし自分が子供なら、好奇心に駆られてその影を追いかけ、奥へと迷い込んでしまうかもしれない。しかし大人の霧にとっては、好奇心より得体のしれない者への恐怖心の方が強かった。
(いやもう、なんか、逃げ出したくなってきたんだけど……。なんかさっきから、足元が時々ぐにゃりとなるし……。この感覚、市立図書館からこっちに移動したときも、あったよね……)
もう進みたくないな、と霧が思い始めた時、クレアが止まった。
「ここです。私でもかすかに見えますが、魔法士学園の新入生の皆さんには、魔法柵がはっきりと見えるでしょう? うっすらと光る膜があり、あちこちに穴が開いているのが」
確かに、前方に光る膜のような遮蔽物が高さ3メートル付近まで見え、それは左右にずっと続いている。クレアとリューエストの話では、危険な場所をぐるりと取り巻いているということだった。そしてその光の膜には、所々、様々な大きさの穴が開いていた。
リューエストは穴の状態を確認して、考え込んでいる。
「う~ん……不自然な穴だな。これは悪意のある誰かがわざと……。そうとしか……。……いや、今は原因究明より、処置が先決だ。24班のメンツなら問題ないだろう……手分けして穴を閉じるとして……この魔法柵は確か全長3kmはあったはず……一つの穴の修繕におよそ5分として……6人で当たるのなら……いや、非効率だな、別の方法で……」
リューエストと同じように魔法柵を調べていたアデルが、クレアに訊いた。
「穴が開いているだけで、この魔法柵に途切れてる箇所は無いんですよね?」
「ええ。どこか一か所でも分断されれば、柵自体が消滅する仕組みなのです。もちろん確認もしました。今のところ穴が開いているだけで、途切れ目はありません」
クレアがそう言うのを聞いて、トリフォンが言った。
「なら、魔法柵に働きかけ、自動修復機能を持たせればよかろう。速やかに穴を塞げるように」
アデルも同じ発想をしていたらしく、頷きながら言った。
「問題が一つ。高さ3メートルで全長3㎞もの大きな魔法柵に、一度の魔法で働きかけなきゃいけないから、辞典力と気力体力が大量に必要になる。多分私ひとりじゃ、途中で力が尽きる。リューエストはどう?」
「多分できるだろうけど……今は少し疲れているから、どうかな」
アデルはチラリと霧を見ながら、言った。
「……この中で、確実に魔法を最後まで実行できる、強大な力を持っていそうなのは……」
みんなの視線が、霧に集まる。
霧はヒュッと息を止め、慌てて首を振りながら言った。
「え、何? ちょっと、あたしよくわからない。無理。正直もう全然、ついて行けてないの。みんなの話は難しすぎる! 魔法柵ってチンプンカンプン。あたしアホなんで、許して!」
「うん、力はあってもやり方がね……。準備校では必ず教わる技だけど、キリは魔法柵を張ったこともないだろうし……。みんなで張れる方法があったら楽勝なんだけど……キリの底なしパワーと私たちのパワー、そして私たちの知識と経験……合わせる方法ないかな……」
そう言うアデルに、霧はパッと思いついたことを言った。
「『辞典』を、重ねてみたら?」
みんなの顔に「は?」という表情が浮かぶ。霧は何かとんでもなく非常識な、おかしなことを言ったらしい。霧は慌てて言いつくろった。
「あの、あの、『辞典』って、重ねられるんじゃないかなぁって、そんな気がしただけ」
それは本当に、単なる霧の思いつきだった。チェカの書いた物語の中にも出てこない。そしてみんなの反応を見れば、その思いつきが奇妙なものであることがわかる。それでも霧はなぜか、それができるのではという、不思議な直感を持っていた。
進むうちに、霧は納得した。確かに、進めば進むほど、ぞわぞわと肌が粟立ってくる。何かの気配を感じて振り向くが、その気配はサッとどこかへ移動し、正体がつかめない。言獣かもしれないし、そうじゃないかもしれない。とにかく、その気配は異質としか言いようがなく、もし自分が子供なら、好奇心に駆られてその影を追いかけ、奥へと迷い込んでしまうかもしれない。しかし大人の霧にとっては、好奇心より得体のしれない者への恐怖心の方が強かった。
(いやもう、なんか、逃げ出したくなってきたんだけど……。なんかさっきから、足元が時々ぐにゃりとなるし……。この感覚、市立図書館からこっちに移動したときも、あったよね……)
もう進みたくないな、と霧が思い始めた時、クレアが止まった。
「ここです。私でもかすかに見えますが、魔法士学園の新入生の皆さんには、魔法柵がはっきりと見えるでしょう? うっすらと光る膜があり、あちこちに穴が開いているのが」
確かに、前方に光る膜のような遮蔽物が高さ3メートル付近まで見え、それは左右にずっと続いている。クレアとリューエストの話では、危険な場所をぐるりと取り巻いているということだった。そしてその光の膜には、所々、様々な大きさの穴が開いていた。
リューエストは穴の状態を確認して、考え込んでいる。
「う~ん……不自然な穴だな。これは悪意のある誰かがわざと……。そうとしか……。……いや、今は原因究明より、処置が先決だ。24班のメンツなら問題ないだろう……手分けして穴を閉じるとして……この魔法柵は確か全長3kmはあったはず……一つの穴の修繕におよそ5分として……6人で当たるのなら……いや、非効率だな、別の方法で……」
リューエストと同じように魔法柵を調べていたアデルが、クレアに訊いた。
「穴が開いているだけで、この魔法柵に途切れてる箇所は無いんですよね?」
「ええ。どこか一か所でも分断されれば、柵自体が消滅する仕組みなのです。もちろん確認もしました。今のところ穴が開いているだけで、途切れ目はありません」
クレアがそう言うのを聞いて、トリフォンが言った。
「なら、魔法柵に働きかけ、自動修復機能を持たせればよかろう。速やかに穴を塞げるように」
アデルも同じ発想をしていたらしく、頷きながら言った。
「問題が一つ。高さ3メートルで全長3㎞もの大きな魔法柵に、一度の魔法で働きかけなきゃいけないから、辞典力と気力体力が大量に必要になる。多分私ひとりじゃ、途中で力が尽きる。リューエストはどう?」
「多分できるだろうけど……今は少し疲れているから、どうかな」
アデルはチラリと霧を見ながら、言った。
「……この中で、確実に魔法を最後まで実行できる、強大な力を持っていそうなのは……」
みんなの視線が、霧に集まる。
霧はヒュッと息を止め、慌てて首を振りながら言った。
「え、何? ちょっと、あたしよくわからない。無理。正直もう全然、ついて行けてないの。みんなの話は難しすぎる! 魔法柵ってチンプンカンプン。あたしアホなんで、許して!」
「うん、力はあってもやり方がね……。準備校では必ず教わる技だけど、キリは魔法柵を張ったこともないだろうし……。みんなで張れる方法があったら楽勝なんだけど……キリの底なしパワーと私たちのパワー、そして私たちの知識と経験……合わせる方法ないかな……」
そう言うアデルに、霧はパッと思いついたことを言った。
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「あの、あの、『辞典』って、重ねられるんじゃないかなぁって、そんな気がしただけ」
それは本当に、単なる霧の思いつきだった。チェカの書いた物語の中にも出てこない。そしてみんなの反応を見れば、その思いつきが奇妙なものであることがわかる。それでも霧はなぜか、それができるのではという、不思議な直感を持っていた。
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