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二章 入学旅行二日目
2-18a 歴史に残る大発見「24班の奇跡」 1
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「リューエストさん! リューエストさん、います?! どうか手を貸してください!」
そう叫びながら霧たちに走り寄ってきた中年女性に、リューエストがすぐさま応じた。
「クレアさん? どうしたの?!」
「ああ、リューエストさん! あなたがこの島に来てると『繋がりの塔』から連絡を受けて、捜してたの! 実はね、立ち入り制限区域の魔法柵の一部が破損していて、困ってるの。辞典魔法士を派遣してもらえるよう頼んだのだけど、他の案件より緊急度が低いから3日後になるって言われて。それで、リューエストさんほどの人なら、魔法柵の修復もできるんじゃないかって思って……忙しいところ申し訳ないけど、見てもらえないかな?」
「魔法柵が破損……?! ひと月ほど前には異常なかったけど……」
「そうなの。おかしいでしょ。あと3年はかけ直さなくても保つはずだったのに。実は今日、子供が森の中で行方不明になったのよ。それで捜索している間に、魔法柵に複数個所、穴が開いていることに気付いて……」
リューエストをはじめ24班の面々は、その女性の話を一通り聞いたのち、至急、森の奥へと向かうことになった。
女性の名前はクレア。リューエストとは顔見知りらしい。彼女はこのルルシャンリニアン島の住人で、森の管理をしているグループのリーダーとのことだった。
彼女の話によれば、行方不明になっていた子供は2時間ほど前に無事保護されたのだが、その子は越えられないはずの魔法柵の向こう側、立ち入り制限区域の中で倒れていたらしい。魔法柵を調べたところ至る所に穴が開いているのを発見し、修復が必要なことが判明したのだが、魔法柵の修復は高度で、素人ができる範囲を超えている。そこで『繋がりの塔』に辞典魔法士の派遣を要請したが、人手不足で3日後になるとのこと。仕方なく簡易的に物理的な柵を設置したが、森で暮らす動物がその柵をはずしてしまうこともあり得るし、一番の懸念材料は森自体が物理柵を嫌うという点だった。
(そういえば、『クク・アキ』の物語で、出てきたなぁ……。この世界では、森は一つの共有意識を持ってるとか、何とか。う~ん、本当に不思議な世界だ。それに、『言魂界』も……)
霧は、クレアの先導で24班の面々と森の奥へ向かいながら、『クク・アキ』で紹介されていたこの世界の背景を思い出していた。
この世界、ククリコ・アーキペラゴは、『言魂界』という異世界と、見えない道で繋がっている。『言魂界』は「言葉の源の海」と言われ、人とは全く違う異質で不思議な存在である『言獣』の生まれ故郷だ。言獣はその見えない道を通って『言魂界』とククリコ・アーキペラゴを自由に行き来するが、人はその道を通ることはできない。しかし非常に稀ながら、その道に入ってしまう事例があり、もし入ってしまえば最後、二度と戻ってこれないと言われている。
その見えない道は、小さなものから大きなものまで世界中に点在しているのだが、その中でも一番大きな道が、このルルシャンリニアン島の森の奥にあるのだそうだ。
ぼんやりと発光している森の中を進みながら、一行はリューエストの声に耳を傾けていた。
「みんなも知っての通り、『言魂界』はまったく異質な世界だからね。そこと繋がる道が存在する付近は、何というか、とても不安定なんだ。空間が歪んでいて、巻き込まれるとどこに飛ばされるかわからない。大人ならすぐ危険を察してその場から離れるところなんだけど、子供は逆に惹かれて近づいて行ってしまう。そうやって、行方不明になる子供がいるんだ。50年ほど前に魔法柵が開発されたあとはそういう事件も滅多に起こらなくなったけど、それ以前はよく、二度と戻ってこない子供がいたらしい」
霧はリューエストの説明を聞きながら、思った。
(なるほど、神隠しスポットなのか、この辺りは……)
進むうちに、霧は納得した。確かに、進めば進むほど、ぞわぞわと肌が粟立ってくる。
そう叫びながら霧たちに走り寄ってきた中年女性に、リューエストがすぐさま応じた。
「クレアさん? どうしたの?!」
「ああ、リューエストさん! あなたがこの島に来てると『繋がりの塔』から連絡を受けて、捜してたの! 実はね、立ち入り制限区域の魔法柵の一部が破損していて、困ってるの。辞典魔法士を派遣してもらえるよう頼んだのだけど、他の案件より緊急度が低いから3日後になるって言われて。それで、リューエストさんほどの人なら、魔法柵の修復もできるんじゃないかって思って……忙しいところ申し訳ないけど、見てもらえないかな?」
「魔法柵が破損……?! ひと月ほど前には異常なかったけど……」
「そうなの。おかしいでしょ。あと3年はかけ直さなくても保つはずだったのに。実は今日、子供が森の中で行方不明になったのよ。それで捜索している間に、魔法柵に複数個所、穴が開いていることに気付いて……」
リューエストをはじめ24班の面々は、その女性の話を一通り聞いたのち、至急、森の奥へと向かうことになった。
女性の名前はクレア。リューエストとは顔見知りらしい。彼女はこのルルシャンリニアン島の住人で、森の管理をしているグループのリーダーとのことだった。
彼女の話によれば、行方不明になっていた子供は2時間ほど前に無事保護されたのだが、その子は越えられないはずの魔法柵の向こう側、立ち入り制限区域の中で倒れていたらしい。魔法柵を調べたところ至る所に穴が開いているのを発見し、修復が必要なことが判明したのだが、魔法柵の修復は高度で、素人ができる範囲を超えている。そこで『繋がりの塔』に辞典魔法士の派遣を要請したが、人手不足で3日後になるとのこと。仕方なく簡易的に物理的な柵を設置したが、森で暮らす動物がその柵をはずしてしまうこともあり得るし、一番の懸念材料は森自体が物理柵を嫌うという点だった。
(そういえば、『クク・アキ』の物語で、出てきたなぁ……。この世界では、森は一つの共有意識を持ってるとか、何とか。う~ん、本当に不思議な世界だ。それに、『言魂界』も……)
霧は、クレアの先導で24班の面々と森の奥へ向かいながら、『クク・アキ』で紹介されていたこの世界の背景を思い出していた。
この世界、ククリコ・アーキペラゴは、『言魂界』という異世界と、見えない道で繋がっている。『言魂界』は「言葉の源の海」と言われ、人とは全く違う異質で不思議な存在である『言獣』の生まれ故郷だ。言獣はその見えない道を通って『言魂界』とククリコ・アーキペラゴを自由に行き来するが、人はその道を通ることはできない。しかし非常に稀ながら、その道に入ってしまう事例があり、もし入ってしまえば最後、二度と戻ってこれないと言われている。
その見えない道は、小さなものから大きなものまで世界中に点在しているのだが、その中でも一番大きな道が、このルルシャンリニアン島の森の奥にあるのだそうだ。
ぼんやりと発光している森の中を進みながら、一行はリューエストの声に耳を傾けていた。
「みんなも知っての通り、『言魂界』はまったく異質な世界だからね。そこと繋がる道が存在する付近は、何というか、とても不安定なんだ。空間が歪んでいて、巻き込まれるとどこに飛ばされるかわからない。大人ならすぐ危険を察してその場から離れるところなんだけど、子供は逆に惹かれて近づいて行ってしまう。そうやって、行方不明になる子供がいるんだ。50年ほど前に魔法柵が開発されたあとはそういう事件も滅多に起こらなくなったけど、それ以前はよく、二度と戻ってこない子供がいたらしい」
霧はリューエストの説明を聞きながら、思った。
(なるほど、神隠しスポットなのか、この辺りは……)
進むうちに、霧は納得した。確かに、進めば進むほど、ぞわぞわと肌が粟立ってくる。
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