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二章 入学旅行二日目
2-13a 戦う准魔法士、加勢する24班 1
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「帰れ! この魔法士くずれめ! ぶっ殺すぞ!」
熊男はそう叫ぶと、自分の『辞典』を開き、竜巻まじりの風を呼ぶ。
しかしその強風は、フッとかき消された。リューエストが辞典魔法を使って風の勢いを空に逃がしたのだ。リューエストは片手に『辞典』を開き、もう片方の手で優雅な仕草を描きながら、風を巧みにコントロールている。
「そうそういいぞ、荒ぶる風よ、上空で拡散し、そよ風となれ」
「何っ?!」
自分の魔法の勢いがそがれたことに熊男がひるむ。そのすきに、准魔法士の若い男性は、自分の『辞典』を手に取ると叫んだ。
「先程も言いましたが、子供は、親の所有物じゃありません! 子供の保護を阻止するなら、私はあなたを拘束する!」
その言葉と共にどこからか縄が飛んできて、男の上半身と脚を縛り付けた。拘束縄で簀巻き状態にされた熊男は、バランスを崩してひざをついたが、その手にはいまだ開いたままの『辞典』を持ったまま、反抗の意思を示している。
「くそぉっ! この魔法士くずれめ! おまえの魔法なんざ、俺の魔法に比べれば屁みたいなもんだ! こんな縄なんぞ裂いてやるわ! フンッ!」
ブチッと、縄の一部が避ける。そのときトリフォンが『辞典』を手に持ち、声を上げた。
「男を縛る縄よ、強固に繋がれ! 鉄のごとき硬く、鋼のごとき粘り強く!」
そう言いながら慣れた手つきで、ツイツイッと『辞典』から言葉を選び出し、魔法を完成させ放つ。途端に、裂け始めていた部分が繋がり、強固になった縄が熊男を締め上げる。熊男は悔しそうに吠えた。
「ぐうっ! 何なんだ、おまえたち! 魔法士くずれの仲間か?! 一人じゃなかったのかよ! くそぅっ! 防御! 防御魔法! 障壁よ、俺を守れ!」
すかさずアルビレオが『辞典』を開き、トリフォンと同じように、素早く言葉を選び出すと魔法を放った。
「障壁を粉砕!」
途端に、熊男の作った障壁が、砕け散る。
准魔法士は熊男に走り寄ると、告げた。
「さあ、観念してください。これ以上抵抗すると、罪状ランクが跳ね上がり、あなたの『辞典』は凍結処理となります」
「くそぉっくそぉっくそがぁっ!」
熊男は叫んだあと、ふてくされたように地面に横倒しになり、辞典を閉じた。やっと諦めたと見て、准魔法士は男に必要事項を告げる。
「いくつかの罪であなたは法的に裁かれます。それまで独房で過ごしていただくことになります。これからその場所へ転送します」
その後、准魔法士は懐から何かの紙片を取り出すと男の額に当て、荒い息の合間に「転送実行」と呟いた。その場から熊男が消えると、准魔法士は大きく息を吐き出し、額の汗をぬぐう。そして居住まいを正すと、24班の男性陣に笑顔を見せた。
「皆さん、ご助力感謝します。その制服、古城学園の新入生の方たちですよね?」
熊男はそう叫ぶと、自分の『辞典』を開き、竜巻まじりの風を呼ぶ。
しかしその強風は、フッとかき消された。リューエストが辞典魔法を使って風の勢いを空に逃がしたのだ。リューエストは片手に『辞典』を開き、もう片方の手で優雅な仕草を描きながら、風を巧みにコントロールている。
「そうそういいぞ、荒ぶる風よ、上空で拡散し、そよ風となれ」
「何っ?!」
自分の魔法の勢いがそがれたことに熊男がひるむ。そのすきに、准魔法士の若い男性は、自分の『辞典』を手に取ると叫んだ。
「先程も言いましたが、子供は、親の所有物じゃありません! 子供の保護を阻止するなら、私はあなたを拘束する!」
その言葉と共にどこからか縄が飛んできて、男の上半身と脚を縛り付けた。拘束縄で簀巻き状態にされた熊男は、バランスを崩してひざをついたが、その手にはいまだ開いたままの『辞典』を持ったまま、反抗の意思を示している。
「くそぉっ! この魔法士くずれめ! おまえの魔法なんざ、俺の魔法に比べれば屁みたいなもんだ! こんな縄なんぞ裂いてやるわ! フンッ!」
ブチッと、縄の一部が避ける。そのときトリフォンが『辞典』を手に持ち、声を上げた。
「男を縛る縄よ、強固に繋がれ! 鉄のごとき硬く、鋼のごとき粘り強く!」
そう言いながら慣れた手つきで、ツイツイッと『辞典』から言葉を選び出し、魔法を完成させ放つ。途端に、裂け始めていた部分が繋がり、強固になった縄が熊男を締め上げる。熊男は悔しそうに吠えた。
「ぐうっ! 何なんだ、おまえたち! 魔法士くずれの仲間か?! 一人じゃなかったのかよ! くそぅっ! 防御! 防御魔法! 障壁よ、俺を守れ!」
すかさずアルビレオが『辞典』を開き、トリフォンと同じように、素早く言葉を選び出すと魔法を放った。
「障壁を粉砕!」
途端に、熊男の作った障壁が、砕け散る。
准魔法士は熊男に走り寄ると、告げた。
「さあ、観念してください。これ以上抵抗すると、罪状ランクが跳ね上がり、あなたの『辞典』は凍結処理となります」
「くそぉっくそぉっくそがぁっ!」
熊男は叫んだあと、ふてくされたように地面に横倒しになり、辞典を閉じた。やっと諦めたと見て、准魔法士は男に必要事項を告げる。
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「皆さん、ご助力感謝します。その制服、古城学園の新入生の方たちですよね?」
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