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二章 入学旅行二日目
2-10a 繋がりの塔への道すがら 1
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霧はみんなと『繋がりの塔』へ向かう道すがら、物知りなトリフォンを質問攻めにしていた。チェカの書いた物語を読んだとはいえ、実際この地に来てみると、霧には知らないことがたくさんある。何を訊いても上手に答えてくれるトリフォンは、教えを乞うには最適な人物だった。
「というと、トリフォン、『繋がりの塔』って、何でも請負所みたいなところなの? 便利な施設がギュッと詰まってるみたいな?」
「ほっほっほっ、まあ、そんな感じじゃな。人々の暮らしに必要な、様々な公的施設、そして『繋がりの間』という公共交通機関、それらがギュッと詰まっておる。何か事件が起こった時や助けが必要な時、それから遠方に行きたい時も、人はみな『繋がりの塔』に向かう。その名の通り、『繋がりの塔』は、人と各地を繋ぐ大切な拠点というわけじゃ」
「ほほう……なるほど」
トリフォンの説明によると、『繋がりの塔』は日本で言うなら役所や警察、消防署などが集まっている建物らしい。更に、塔の中には駅まである、ということだ。
この『繋がりの塔』については、『クク・アキ』の小説内にも登場する。主人公チェカが何度か利用していたので霧もだいたいの雰囲気は知っているが、実際行くとなると情報不足だ。そのため霧は興味津々でトリフォンに質問を続けた。
「その『繋がりの塔』に必ずあるっていう、公共交通機関の『繋がりの間』って、どんな感じなの? どういうシステム?」
「『繋がりの間』は、各地にある『繋がりの塔』には必ず設置してあり、互いに行き来が可能なんじゃ。例えばセセラム地方からレンデュアル島に行きたい場合、船舶を使うより塔を使う方が早い。まずセセラム地方の『繋がりの塔』に向かい、『繋がりの間』を経由して、レンデュアル島の『繋がりの塔』に飛ぶんじゃ。『繋がりの間』があるおかげで、わしらはこの広い世界にあちこち散らばった島々を、時間をかけずに移動できるというわけじゃ。『繋がりの間』さまさまじゃの。
それで……何だったかの、そうそう、システムについて知りたいと言っておったの。
『繋がりの間』は辞典魔法により完璧に制御されておっての、訓練を受けた准辞典魔法士によって運営されておるんじゃ。地味な仕事だが、彼らはその職務に誇りを持っている。重要な輸送機関でもあるからの。もし『繋がりの間』が機能を損なえば、あちこちに支障が出るじゃろうて」
「へえ……、忙しそうな仕事だね? でも誇りを持って働けるって、いいなぁ。それって幸せなことだよね」
「そうじゃな、まったくその通りじゃ。自己重要感は、人が幸福に生きるためにはなくてはならん要素じゃからの。彼らはもちろん多忙じゃが、得るものも多い。准魔法士を始め『繋がりの塔』の職員には、人々から厚い尊敬と信頼が寄せられる。充実した毎日はもちろんのこと、まずもって結婚相手には困らんの、ほっほっほっ!」
「ほへぇ……合コンで引く手あまたみたいな職業か……」
そう呟きながら、霧はトリフォンの説明に出てきた『准辞典魔法士』という存在が気になった。
『クク・アキ』の物語にもチラリと出てくる『准辞典魔法士』。大抵は省略して、『准魔法士』と呼ばれる。
霧が知っているのは、辞典魔法士には正魔法士と准魔法士の二種類があり、前者は難関の古城学園に入り卒業しなければならないが、後者の准魔法士は、突出した才能が無くても努力次第で資格が得られる、ということだけだ。
「ねえトリフォン、その准魔法士って、その『繋がりの塔』っていうところに、どれぐらいの人数働いているの?」
「これから向かうセセラム地方南の『繋がりの塔』では、150人ぐらいが常駐しておっての、正魔法士のおよそ30倍ほどの数じゃ。正魔法士になるには生まれつきの素養が必要不可欠となるが、准魔法士の場合は本人の努力次第で資格が取れるから、目指す者も多いんじゃ。准魔法士は、人々のために心血を注ぐ高潔な人物ばかりでの、常に人手不足の正魔法士の仕事を、陰に日向にサポートしてくれておる。あの者たちには本当に頭が下がる思いじゃて」
「へえ……」
霧が感心していると、それとなく聞いていたアデルが会話に参加した。
「最近は、准魔法士も仕事量が増えてしまって、大変らしいわよ。正魔法士の深刻な人手不足のあおりを受けてるって……」
「そうなんじゃよ。彼らの仕事は、とても多岐に渡るからの」
「『繋がりの間』だけじゃないってこと?」
「もちろんじゃ。『繋がりの間』の仕事は、准魔法士が選ぶ職種の、ほんの一部じゃ」
「へえ……」
霧たち一行は今、その『繋がりの間』を経由して遠方に飛ぶ目的で、『繋がりの塔』へと向かっている。
セセラム地方の『繋がりの塔』は、3kmほど南にあるものが一番近いとトリフォンから聞き、一行はぶらぶら歩いて向かうことにした。塔まで公共の乗り物を利用することもできたが、運行本数が少なく、待つより歩いた方が早いらしい。
そこで霧たちは各自辞典魔法で健脚の魔法をかけ、快適に歩き出した。
健脚の魔法は比較的簡単な部類に入る魔法で、多くの人が習得している。一時的に脚を強化し、筋肉の動きを補助し、足の運びを軽やかにしてくれるお役立ち魔法だ。
そうやって元気よく歩きながら、霧はこの世界の成り立ちをおさらいしていたところだ。
「というと、トリフォン、『繋がりの塔』って、何でも請負所みたいなところなの? 便利な施設がギュッと詰まってるみたいな?」
「ほっほっほっ、まあ、そんな感じじゃな。人々の暮らしに必要な、様々な公的施設、そして『繋がりの間』という公共交通機関、それらがギュッと詰まっておる。何か事件が起こった時や助けが必要な時、それから遠方に行きたい時も、人はみな『繋がりの塔』に向かう。その名の通り、『繋がりの塔』は、人と各地を繋ぐ大切な拠点というわけじゃ」
「ほほう……なるほど」
トリフォンの説明によると、『繋がりの塔』は日本で言うなら役所や警察、消防署などが集まっている建物らしい。更に、塔の中には駅まである、ということだ。
この『繋がりの塔』については、『クク・アキ』の小説内にも登場する。主人公チェカが何度か利用していたので霧もだいたいの雰囲気は知っているが、実際行くとなると情報不足だ。そのため霧は興味津々でトリフォンに質問を続けた。
「その『繋がりの塔』に必ずあるっていう、公共交通機関の『繋がりの間』って、どんな感じなの? どういうシステム?」
「『繋がりの間』は、各地にある『繋がりの塔』には必ず設置してあり、互いに行き来が可能なんじゃ。例えばセセラム地方からレンデュアル島に行きたい場合、船舶を使うより塔を使う方が早い。まずセセラム地方の『繋がりの塔』に向かい、『繋がりの間』を経由して、レンデュアル島の『繋がりの塔』に飛ぶんじゃ。『繋がりの間』があるおかげで、わしらはこの広い世界にあちこち散らばった島々を、時間をかけずに移動できるというわけじゃ。『繋がりの間』さまさまじゃの。
それで……何だったかの、そうそう、システムについて知りたいと言っておったの。
『繋がりの間』は辞典魔法により完璧に制御されておっての、訓練を受けた准辞典魔法士によって運営されておるんじゃ。地味な仕事だが、彼らはその職務に誇りを持っている。重要な輸送機関でもあるからの。もし『繋がりの間』が機能を損なえば、あちこちに支障が出るじゃろうて」
「へえ……、忙しそうな仕事だね? でも誇りを持って働けるって、いいなぁ。それって幸せなことだよね」
「そうじゃな、まったくその通りじゃ。自己重要感は、人が幸福に生きるためにはなくてはならん要素じゃからの。彼らはもちろん多忙じゃが、得るものも多い。准魔法士を始め『繋がりの塔』の職員には、人々から厚い尊敬と信頼が寄せられる。充実した毎日はもちろんのこと、まずもって結婚相手には困らんの、ほっほっほっ!」
「ほへぇ……合コンで引く手あまたみたいな職業か……」
そう呟きながら、霧はトリフォンの説明に出てきた『准辞典魔法士』という存在が気になった。
『クク・アキ』の物語にもチラリと出てくる『准辞典魔法士』。大抵は省略して、『准魔法士』と呼ばれる。
霧が知っているのは、辞典魔法士には正魔法士と准魔法士の二種類があり、前者は難関の古城学園に入り卒業しなければならないが、後者の准魔法士は、突出した才能が無くても努力次第で資格が得られる、ということだけだ。
「ねえトリフォン、その准魔法士って、その『繋がりの塔』っていうところに、どれぐらいの人数働いているの?」
「これから向かうセセラム地方南の『繋がりの塔』では、150人ぐらいが常駐しておっての、正魔法士のおよそ30倍ほどの数じゃ。正魔法士になるには生まれつきの素養が必要不可欠となるが、准魔法士の場合は本人の努力次第で資格が取れるから、目指す者も多いんじゃ。准魔法士は、人々のために心血を注ぐ高潔な人物ばかりでの、常に人手不足の正魔法士の仕事を、陰に日向にサポートしてくれておる。あの者たちには本当に頭が下がる思いじゃて」
「へえ……」
霧が感心していると、それとなく聞いていたアデルが会話に参加した。
「最近は、准魔法士も仕事量が増えてしまって、大変らしいわよ。正魔法士の深刻な人手不足のあおりを受けてるって……」
「そうなんじゃよ。彼らの仕事は、とても多岐に渡るからの」
「『繋がりの間』だけじゃないってこと?」
「もちろんじゃ。『繋がりの間』の仕事は、准魔法士が選ぶ職種の、ほんの一部じゃ」
「へえ……」
霧たち一行は今、その『繋がりの間』を経由して遠方に飛ぶ目的で、『繋がりの塔』へと向かっている。
セセラム地方の『繋がりの塔』は、3kmほど南にあるものが一番近いとトリフォンから聞き、一行はぶらぶら歩いて向かうことにした。塔まで公共の乗り物を利用することもできたが、運行本数が少なく、待つより歩いた方が早いらしい。
そこで霧たちは各自辞典魔法で健脚の魔法をかけ、快適に歩き出した。
健脚の魔法は比較的簡単な部類に入る魔法で、多くの人が習得している。一時的に脚を強化し、筋肉の動きを補助し、足の運びを軽やかにしてくれるお役立ち魔法だ。
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