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一章 入学旅行一日目
1-25b 推しとお揃い限界オタク
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部屋の扉をノックする音が聞こえ、リューエスト、アデル、リリエンヌの3人が訪ねてきた。
霧は読書を中断して文庫本をバッグにしまい、彼らを部屋に招き入れる。すると興奮した様子のアデルが部屋に入るなり声を張り上げた。
「知ってる、キリ?! このアメニティ、全部もらってもいいんだって!」
消耗品のアメニティグッズが並んでいるテーブルを指して、アデルが嬉しそうに叫ぶ。身だしなみを整えるためのヘアケアグッズや、生活用品などが入っている箱のパッケージは、セセラム競技場オリジナルの可愛い柄で彩られていた。その中でも、透明な袋に入れられリボンで飾られたブラシや手鏡には、審判妖精の可愛い絵柄が入っている。霧はそれらを手に取って声を弾ませながらアデルに答えた。
「そうそうそれそれ、聞いた聞いた、宿泊者へのプレゼントだって、ホテルのスタッフさんが教えてくれたよ! 感激!! 見てよこのめちゃかわ審判妖精ぇ柄ぁあ!! このデザイン神だよね! あたし使わずにずっと愛でるし!!」
「私は使うよ。ブラシと手鏡はさっそく使う! その方が楽しいもん!」
「わたくしもそうしようかしら。ね、アデル、キリ、良かったら三人でお揃いで使いましょうよ。きっと入学旅行の素敵な思い出になりますわ」
リリエンヌの嬉しい提案に、霧は飛び上がって手を叩いた。
「むっきゃぁあああ! おおおお揃い!! リリーちゃん天才かよ! 仲良し女子の必須アイテム、お、そ、ろ、い!! もちろんおそろうおそろうおそろう! 今すぐそうしよ、三人でブラシと手鏡おそろしよう!! うきょおぉぉ、よきかなーーーっ!」
「もう、キリ、大げさすぎ。お揃いってだけでそんな喜ぶって……今までどんだけ孤独……あ、そっか、ずっと寝てたんだっけ、ごめん」
「うふふ、キリにこんなに喜んでもらえるなんて、わたくしも嬉しいですわ。この先お揃い、たくさんしましょうね」
「うきゃあぁぁ! もう泣いちゃうから! 幸せ過ぎてもう無理限界!」
きゃっきゃうふふと盛り上がる女性三人の傍らで、リューエストが寂しそうにポツリとこぼした。
「僕もお揃い……にしたらキモイって言われそうだなぁ……はぁ……疎外感……」
霧は「あ、リューエスト、いたんだっけ」と思いつつ、そういえば……とみんなに尋ねた。
「トリフォンとアルビレオくんは、部屋にいるの?」
「トリフォンはご家族へのお土産を買いにホテルショップに向かわれましたわ。アルビレオさんも、用事があるとのことで、外出されました」
リリエンヌがそう答えると、アデルが続けて言った。
「今日はもう解散、自由行動ってことになったの。明日朝、各自朝食を済ませて9時にホテルエントランスに集合よ」
アデルがそう言い終えると、リューエストが口をはさむ。
「それでねキリ、この4人で今から一緒に夕食を摂ったらどうかなって。ルームサービスを頼んで、バルコニーでさ。結構、メニュー豊富だよ。場所は霧の部屋でいい? それとも隣の僕の部屋使う?」
「うひょおおおおぉぉぉおおおお!! るるるるる、るーむさーびす!! 何という、非日常&ハイソ&ゴージャスな響き!! ぜひここで、ミラクルワンダフルスペシャルディナーを開催してくださいまし! 人生初体験のルームサービスを!!」
霧は奇声を上げながらバルコニーに出ると、手を叩きながら小躍りした。そのはしゃぎっぷりを見てアデルが呆れながらもどこか親近感を込めた口調で言う。
「ほんともう、キリってば20歳も年上とは思えないわね。マジでお父さんと同い年なの?」
(あ、やっぱりアデル、今16歳なんだ。そうするとチェカは36歳。あたしと同い年。ん、計算通りだ)
そう思った霧は、アデルたちの年齢が判明してスッキリした気持ちになる。それと同時に、アデルの声に「いとこのお姉ちゃん」への愛がほのかに含まれている気がして、嬉しくなった。
霧は読書を中断して文庫本をバッグにしまい、彼らを部屋に招き入れる。すると興奮した様子のアデルが部屋に入るなり声を張り上げた。
「知ってる、キリ?! このアメニティ、全部もらってもいいんだって!」
消耗品のアメニティグッズが並んでいるテーブルを指して、アデルが嬉しそうに叫ぶ。身だしなみを整えるためのヘアケアグッズや、生活用品などが入っている箱のパッケージは、セセラム競技場オリジナルの可愛い柄で彩られていた。その中でも、透明な袋に入れられリボンで飾られたブラシや手鏡には、審判妖精の可愛い絵柄が入っている。霧はそれらを手に取って声を弾ませながらアデルに答えた。
「そうそうそれそれ、聞いた聞いた、宿泊者へのプレゼントだって、ホテルのスタッフさんが教えてくれたよ! 感激!! 見てよこのめちゃかわ審判妖精ぇ柄ぁあ!! このデザイン神だよね! あたし使わずにずっと愛でるし!!」
「私は使うよ。ブラシと手鏡はさっそく使う! その方が楽しいもん!」
「わたくしもそうしようかしら。ね、アデル、キリ、良かったら三人でお揃いで使いましょうよ。きっと入学旅行の素敵な思い出になりますわ」
リリエンヌの嬉しい提案に、霧は飛び上がって手を叩いた。
「むっきゃぁあああ! おおおお揃い!! リリーちゃん天才かよ! 仲良し女子の必須アイテム、お、そ、ろ、い!! もちろんおそろうおそろうおそろう! 今すぐそうしよ、三人でブラシと手鏡おそろしよう!! うきょおぉぉ、よきかなーーーっ!」
「もう、キリ、大げさすぎ。お揃いってだけでそんな喜ぶって……今までどんだけ孤独……あ、そっか、ずっと寝てたんだっけ、ごめん」
「うふふ、キリにこんなに喜んでもらえるなんて、わたくしも嬉しいですわ。この先お揃い、たくさんしましょうね」
「うきゃあぁぁ! もう泣いちゃうから! 幸せ過ぎてもう無理限界!」
きゃっきゃうふふと盛り上がる女性三人の傍らで、リューエストが寂しそうにポツリとこぼした。
「僕もお揃い……にしたらキモイって言われそうだなぁ……はぁ……疎外感……」
霧は「あ、リューエスト、いたんだっけ」と思いつつ、そういえば……とみんなに尋ねた。
「トリフォンとアルビレオくんは、部屋にいるの?」
「トリフォンはご家族へのお土産を買いにホテルショップに向かわれましたわ。アルビレオさんも、用事があるとのことで、外出されました」
リリエンヌがそう答えると、アデルが続けて言った。
「今日はもう解散、自由行動ってことになったの。明日朝、各自朝食を済ませて9時にホテルエントランスに集合よ」
アデルがそう言い終えると、リューエストが口をはさむ。
「それでねキリ、この4人で今から一緒に夕食を摂ったらどうかなって。ルームサービスを頼んで、バルコニーでさ。結構、メニュー豊富だよ。場所は霧の部屋でいい? それとも隣の僕の部屋使う?」
「うひょおおおおぉぉぉおおおお!! るるるるる、るーむさーびす!! 何という、非日常&ハイソ&ゴージャスな響き!! ぜひここで、ミラクルワンダフルスペシャルディナーを開催してくださいまし! 人生初体験のルームサービスを!!」
霧は奇声を上げながらバルコニーに出ると、手を叩きながら小躍りした。そのはしゃぎっぷりを見てアデルが呆れながらもどこか親近感を込めた口調で言う。
「ほんともう、キリってば20歳も年上とは思えないわね。マジでお父さんと同い年なの?」
(あ、やっぱりアデル、今16歳なんだ。そうするとチェカは36歳。あたしと同い年。ん、計算通りだ)
そう思った霧は、アデルたちの年齢が判明してスッキリした気持ちになる。それと同時に、アデルの声に「いとこのお姉ちゃん」への愛がほのかに含まれている気がして、嬉しくなった。
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