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一章 入学旅行一日目
1-24a セセラム競技場リーヴズホテル
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決勝バトルで華々しい勝利を飾った後、霧たちは競技場スタッフの案内で従業員用の通路を使い、メインコートを後にした。
決勝バトルに勝利した班がそのままメインコートから出ると、興奮した観客に取り囲まれて身動きが取れなくなるそうだ。それを回避するため、どの競技場でも新入生バトルの優勝班は従業員用通路から宿泊所へ直行するのだとか。
それを聞いて霧は首を傾げた。
「え? 宿泊所? もう休むの? 次の課題に行かないの?」
「キリ、もう17時だよ。初日は、だいたいどの班も課題4までだ。初日から飛ばすと体力気力が底尽きて、思わぬ事態に陥るからね」
リューエストが霧にそう答えると、トリフォンが続けて言った。
「そうそう、それが最良の選択じゃて。急いては事を仕損じる。今日は早めに休んで英気を養い、また明日から、元気に始めようではないか」
みんながうなずく中、リリエンヌが霧に優しく微笑みながら口を開いた。
「キリ、今日の宿泊所は、あらかじめ学園が確保していてくれているのよ。わたくし、とても楽しみにしていましたの。セセラム競技場のリーヴズホテルに泊まれるのを」
「リーヴズホテル?」
霧の疑問に、案内のため先頭を歩いている競技場スタッフが、振り返って答えた。
「競技場を取り囲んでいた葉っぱの形の大きな建造物をご覧になったでしょうか? あれ、実は競技場運営のホテルなのです。上階のお部屋からは、競技場の全貌を見渡せるんですよ。当競技場では決勝バトルの勝利班に、デラックスルームをご用意しております。最上階にあるバルコニー付きの豪華なお部屋です。どうぞごゆっくりお過ごしくださいね」
「え……え……マジ? マジで? デデデ、デラックスるーむ?! とととと、泊ったことないし! ホテル自体、泊まったことないのに、そんなスペシャルなお部屋に?! いいの? 本当にいいの? 怖いくらい幸せ……」
ワクワクを隠し切れない霧の様子を見て、アデルが言った。
「キリったら、一気に休む気になったようね」
「休む休む、もう休みまくっちゃう!! 入学旅行万歳!! 人生初のホテル体験万歳!! しかもデラックス! ヒャッホ~ッ!!」
「ぶふっ! キリもヒャッホ~ッて言ってるわ。実際ヒャッホ~なんて言う人、リューエストだけかと思ったけど、さすが双子なだけある」
アデルと共にみんながクスクス笑い合う中、リューエストが心配そうな様子でスタッフに声をかけた。
「あのぅ……僕とキリは兄妹なんですが、もちろん同室を用意してもらってますよね?」
「同室をご希望でしたか? お一人ずつ個室をお取りしておりますが……」
スタッフの戸惑うような声音の返答に、霧がすかさず割って入る。
「もちろんそれで大丈夫です。個室、最高―――っ!」
「ええええ、キリ、お兄ちゃんと離れたら心細いでしょ?!」
ショックを隠し切れないリューエストに、霧は即答した。
「今のところ全く心は細くありませんね。むしろ太いです。期待とワクワクの詰まった風船みたいに、パンパンに膨らんでます。はじけてぶっ飛びそうですわ!」
アデルが再び吹き出し、リリエンヌも肩を震わせている。案内スタッフまで笑いをかみ殺している様子で、頬がひくひくと痙攣している。
リューエストは諦めて、「せめて妹と隣の部屋にしてください……」とスタッフに頼み込んでいた。
決勝バトルに勝利した班がそのままメインコートから出ると、興奮した観客に取り囲まれて身動きが取れなくなるそうだ。それを回避するため、どの競技場でも新入生バトルの優勝班は従業員用通路から宿泊所へ直行するのだとか。
それを聞いて霧は首を傾げた。
「え? 宿泊所? もう休むの? 次の課題に行かないの?」
「キリ、もう17時だよ。初日は、だいたいどの班も課題4までだ。初日から飛ばすと体力気力が底尽きて、思わぬ事態に陥るからね」
リューエストが霧にそう答えると、トリフォンが続けて言った。
「そうそう、それが最良の選択じゃて。急いては事を仕損じる。今日は早めに休んで英気を養い、また明日から、元気に始めようではないか」
みんながうなずく中、リリエンヌが霧に優しく微笑みながら口を開いた。
「キリ、今日の宿泊所は、あらかじめ学園が確保していてくれているのよ。わたくし、とても楽しみにしていましたの。セセラム競技場のリーヴズホテルに泊まれるのを」
「リーヴズホテル?」
霧の疑問に、案内のため先頭を歩いている競技場スタッフが、振り返って答えた。
「競技場を取り囲んでいた葉っぱの形の大きな建造物をご覧になったでしょうか? あれ、実は競技場運営のホテルなのです。上階のお部屋からは、競技場の全貌を見渡せるんですよ。当競技場では決勝バトルの勝利班に、デラックスルームをご用意しております。最上階にあるバルコニー付きの豪華なお部屋です。どうぞごゆっくりお過ごしくださいね」
「え……え……マジ? マジで? デデデ、デラックスるーむ?! とととと、泊ったことないし! ホテル自体、泊まったことないのに、そんなスペシャルなお部屋に?! いいの? 本当にいいの? 怖いくらい幸せ……」
ワクワクを隠し切れない霧の様子を見て、アデルが言った。
「キリったら、一気に休む気になったようね」
「休む休む、もう休みまくっちゃう!! 入学旅行万歳!! 人生初のホテル体験万歳!! しかもデラックス! ヒャッホ~ッ!!」
「ぶふっ! キリもヒャッホ~ッて言ってるわ。実際ヒャッホ~なんて言う人、リューエストだけかと思ったけど、さすが双子なだけある」
アデルと共にみんながクスクス笑い合う中、リューエストが心配そうな様子でスタッフに声をかけた。
「あのぅ……僕とキリは兄妹なんですが、もちろん同室を用意してもらってますよね?」
「同室をご希望でしたか? お一人ずつ個室をお取りしておりますが……」
スタッフの戸惑うような声音の返答に、霧がすかさず割って入る。
「もちろんそれで大丈夫です。個室、最高―――っ!」
「ええええ、キリ、お兄ちゃんと離れたら心細いでしょ?!」
ショックを隠し切れないリューエストに、霧は即答した。
「今のところ全く心は細くありませんね。むしろ太いです。期待とワクワクの詰まった風船みたいに、パンパンに膨らんでます。はじけてぶっ飛びそうですわ!」
アデルが再び吹き出し、リリエンヌも肩を震わせている。案内スタッフまで笑いをかみ殺している様子で、頬がひくひくと痙攣している。
リューエストは諦めて、「せめて妹と隣の部屋にしてください……」とスタッフに頼み込んでいた。
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