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一章 入学旅行一日目

1-19a 課題4――班対抗表現バトル

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 課題4は、班対抗の表現バトルだ。
 どの班と対戦するかは、競技場に到着して受付を済ませた順番で決まり、霧たち24班の相手は17班、対戦場所は「サブコート1」で14時からとなっている。
 霧たちは草原から競技場へ出発する際 出遅れたので、競技場の受付も新入生全班の中で最も遅い班となった。そのため、もうほとんどの班が課題4を終了しており、これから始まる24班と17班の対戦が最後の試合となるようだ。

 霧たちが「サブコート1」に到着した頃には、もう13時50分になっていた。すでに17班の面々は、サブコートの中央――競技者用のエリアで待機している。
 それを見て霧たちが慌ててコート入りすると、観覧席からどよめきが起こった。同時にあちこちから、拍手が沸き起こる。

「えっ……ちょ、何?!」

 霧たちは驚いて観覧席を見回す。サブコートの中では一番大きいこのコートは、観覧席が5000ほどある。驚いたことに、それらはほぼ満席だった。

「うわっ、やばいぐらい人大杉ひとおおすぎ。さっきの課題3に使ったサブコートでは、こんなに見物人いなかったのに、班対抗戦って、こんなに人気あるの?」

 霧の戸惑う声に、アデルが答えた。

「人気あるわよ。でも、まだ決勝バトルじゃないのに満席ってのは珍しいかも。多分、課題3の私たちの競技を見た人たちが噂を広めちゃったんでしょ。新入生の競技予定は公開されているから、私たち24班の競技目当てで集まったんだと思う。じゃなきゃ、私たちがコート入りした途端、拍手ってないでしょ。まあ、17班の人たちも優秀で、このバトルが特別期待されてるのかもしれないけど。それだと対戦するのが楽しみね」

「ええええ……。全然楽しみじゃない…………。誰か、お面、持ってない? 貸して……」

「しっかりしなさいよ、キリ! さあ、シャンとして! みんな、用意はいい? 勝ち負けは関係ないんだから、自分の全力出したらそれでOKよ!」

 みんなが、一斉にうなずく。

 24班がコート入りすると、レフリーが一通りの説明をしてくれた。そしていよいよ、競技が始まる。
 最初の表現対象物は個性的な帽子。リューエストの担当だ。
 霧の担当である黒い立方体は一番最後のため、競技者の立ち位置から少し下がった場所でツアーメイトと一緒に競技を見守った。

 リューエストは今回は真面目に表現し、審判妖精からなんと500点を超える点数をもらった。
 リューエストの対戦者は若い女性で、彼の美貌に見とれてしまい実力を出せなかったらしい。彼女が審判妖精からもらった点数は80点で、新入生の平均点120点には及ばなかったが、まるで悔しい顔はしていない。彼女は相変わらずうっとりとリューエストを見つめ、「今日の記念に握手してください!」と手を差し出している。
 そんな中、観覧者からはリューエストの高得点を称える拍手と喝采かっさいが飛び、競技場内は騒然となっていた。やがてレフリーがそれを制し、声を上げる。

「皆さま、お手元の配点ボタンで、良いと思った競技者をお選びください! 各席1点が加算されます!」

 課題3と違って、この課題4のための班対抗戦は、観覧席からの配点もある。
 観覧席の前面に現れたホログラムによる配点ボタンで、表現が気に入った方の競技者を選べば、各席の持ち点である1点が加算される仕組みだ。
 ほとんどの観客はリューエストを選んだと見え、彼の合計点数がレフリーによって発表されると、その並外れた高さにコート中は更に沸き立った。

 競技は順調に進み、課題3の時と同じく24班の面々はいずれも高得点を取り、競技場は更なる興奮に包まれていく。

 そしていよいよ、霧の番となった。

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