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一章 入学旅行一日目
1-13a 課題3――表現バトル
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霧たちは「サブコート15」にやってきた。いよいよ、課題3の表現バトル体験に取り組む。
入り口に立っているスタッフは、学園のショートケープを身に着けている霧たちを見ると、にこやかに声をかけてくれた。
「ようこそ、24班の方たちですね、お待ちしておりました。皆さんがこちらのサブコートを使える時間は13時までとなっております。それまでに課題3を完了させてください。コート内にレフリーが控えておりますので、コート使用に関してご不明な点がございましたらレフリーにご相談ください。では、良い入学旅行を」
誰もが、霧たちの身に着けている学園指定のショートケープを見ると、「良い入学旅行を」と声をかけてくれる。どうやら慣習になっているようだ。競技場の廊下を歩いているときも、すれ違った人たちから何度もその言葉をかけられたことを思い出し、霧は嬉しくて頬を緩めた。
「サブコート15」は、先ほど「プロポーズバトル」を見学した「サブコート2」と同じくらいの広さだった。24班のために11時から13時まで貸し切り状態のこのコートだが、観覧は誰でも可能なので、新入生の課題の様子を見ようと既に30人ほどが観覧席に座っている。
霧たちがこれから取り組む課題3は、班のメンバーで表現バトルを体験すること。
次の課題4が班対抗の表現バトルになるため、課題3は表現バトルに慣れるために設けてあるらしい。
霧たちがコートの中央に辿り着くと、レフリーと見られる女性が説明をしてくれた。
「ようこそ、24班の皆さん。課題3では、新入生の皆さんが競技者として表現バトルを体験する必要があります。班のメンバーとなら、どなたと組んでも構いません。6人一度の複数バトルも可能ですが、どうなさいますか?」
アデルが迷わず、「全員でバトルしましょうよ!」と叫ぶ。時間節約のためと思われる。なぜなら次の課題4は「サブコート1」で14時から、時間厳守だ。遅れることはあってはならない。ただいま11時半で、課題3が長引けば昼休憩の時間が無くなる恐れもある。それを踏まえて、課題3を複数バトルで行い時間短縮することに、みんな賛成した。
「では、対象物はこちらで選ばせていただきますね」
レフリーがそう言って用意したのは、色とりどりの花が生けられた花瓶だった。
中央に設けられた対象物用スペースは、その場で回転するようになっていて、置かれた花瓶がゆっくりと回り出す。対象物のあらゆる面が、すべての競技者及び観覧席から見えるようにという配慮だろう。
霧たちはレフリーの指示に従って、対象物の周囲に設けられた競技場所に立ち、『辞典』を競技用の台座に置いた。霧の喉が、ゴクンと鳴る。
(いよいよだ、表現バトル! ああ、やってみたかったんだ、これ! うう、緊張するな)
霧がドキドキする中、レフリーはアデルのそばに立つと言った。
「では、こちらの生徒さんから時計回りの競技順とさせていただきます。10分後にスタートです。各自、表現の準備を」
(アデルからスタートに時計回り……)
霧は競技者の立ち位置を確認した。アデル、リリエンヌ、トリフォン、アルビレオ、リューエスト、そして霧の順番だ。霧は頭の中で、どう表現するか、花瓶の花を見つめながら言葉をかき集めた。みんなは、メモを取って使う言葉を書き留めている。霧はそれを見て、慌ててバッグから手帳を取り出した。
10分はあっという間に過ぎ、レフリーがアデルに「準備はいいですか?」と声かける。アデルがしっかりした声で「はい」と答えると、レフリーは高らかに宣言した。
「これより、辞典魔法士学園1540年度新入生、第24班6名の課題表現バトルを開始します!」
「おおっ!」と会場から熱気のこもった声が、拍手と共に上がった。このコートに入場したときには30人ほどしかいなかった観覧者は、いつの間にか3倍ぐらいに増えている。
観覧者の拍手がやむと、アデルは深呼吸して「表現」を開始した。
入り口に立っているスタッフは、学園のショートケープを身に着けている霧たちを見ると、にこやかに声をかけてくれた。
「ようこそ、24班の方たちですね、お待ちしておりました。皆さんがこちらのサブコートを使える時間は13時までとなっております。それまでに課題3を完了させてください。コート内にレフリーが控えておりますので、コート使用に関してご不明な点がございましたらレフリーにご相談ください。では、良い入学旅行を」
誰もが、霧たちの身に着けている学園指定のショートケープを見ると、「良い入学旅行を」と声をかけてくれる。どうやら慣習になっているようだ。競技場の廊下を歩いているときも、すれ違った人たちから何度もその言葉をかけられたことを思い出し、霧は嬉しくて頬を緩めた。
「サブコート15」は、先ほど「プロポーズバトル」を見学した「サブコート2」と同じくらいの広さだった。24班のために11時から13時まで貸し切り状態のこのコートだが、観覧は誰でも可能なので、新入生の課題の様子を見ようと既に30人ほどが観覧席に座っている。
霧たちがこれから取り組む課題3は、班のメンバーで表現バトルを体験すること。
次の課題4が班対抗の表現バトルになるため、課題3は表現バトルに慣れるために設けてあるらしい。
霧たちがコートの中央に辿り着くと、レフリーと見られる女性が説明をしてくれた。
「ようこそ、24班の皆さん。課題3では、新入生の皆さんが競技者として表現バトルを体験する必要があります。班のメンバーとなら、どなたと組んでも構いません。6人一度の複数バトルも可能ですが、どうなさいますか?」
アデルが迷わず、「全員でバトルしましょうよ!」と叫ぶ。時間節約のためと思われる。なぜなら次の課題4は「サブコート1」で14時から、時間厳守だ。遅れることはあってはならない。ただいま11時半で、課題3が長引けば昼休憩の時間が無くなる恐れもある。それを踏まえて、課題3を複数バトルで行い時間短縮することに、みんな賛成した。
「では、対象物はこちらで選ばせていただきますね」
レフリーがそう言って用意したのは、色とりどりの花が生けられた花瓶だった。
中央に設けられた対象物用スペースは、その場で回転するようになっていて、置かれた花瓶がゆっくりと回り出す。対象物のあらゆる面が、すべての競技者及び観覧席から見えるようにという配慮だろう。
霧たちはレフリーの指示に従って、対象物の周囲に設けられた競技場所に立ち、『辞典』を競技用の台座に置いた。霧の喉が、ゴクンと鳴る。
(いよいよだ、表現バトル! ああ、やってみたかったんだ、これ! うう、緊張するな)
霧がドキドキする中、レフリーはアデルのそばに立つと言った。
「では、こちらの生徒さんから時計回りの競技順とさせていただきます。10分後にスタートです。各自、表現の準備を」
(アデルからスタートに時計回り……)
霧は競技者の立ち位置を確認した。アデル、リリエンヌ、トリフォン、アルビレオ、リューエスト、そして霧の順番だ。霧は頭の中で、どう表現するか、花瓶の花を見つめながら言葉をかき集めた。みんなは、メモを取って使う言葉を書き留めている。霧はそれを見て、慌ててバッグから手帳を取り出した。
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「これより、辞典魔法士学園1540年度新入生、第24班6名の課題表現バトルを開始します!」
「おおっ!」と会場から熱気のこもった声が、拍手と共に上がった。このコートに入場したときには30人ほどしかいなかった観覧者は、いつの間にか3倍ぐらいに増えている。
観覧者の拍手がやむと、アデルは深呼吸して「表現」を開始した。
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