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一章 入学旅行一日目
1-10b 「お兄ちゃん大好き!」(若干棒読み)
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霧は肉親からの愛情を知らない。だから「兄から溺愛されている妹」という立ち位置は最高に甘やかで本来なら大歓迎だが、霧にはもっと大事なミッションがあった。
(お兄ちゃんには悪いけど、引っ込んどいてもらわないと!)
霧は思いっきり息を吸い込むと、拳を握り締め、駄々っ子のように足を踏み鳴らしながら、叫んだ。
「あたしは入学旅行を楽しみたい! 入学旅行を楽しみたい! 入学旅行を楽しみたい!」
大事なので3回言いました、とばかりに繰り返し、霧はリューエストの頭を押さえつけて前倒しさせると、自分もみんなに向かって頭を下げ、叫んだ。
「兄が失礼しました! ごめんなさい! 皆さんの身は心身共に安全です! なぜならあたしは非常に頑丈で、決して皆さんによって傷つけらることは無いからです! ついでにアホなので、嫌みを言われても気づきませんから安心してください! つまり兄の反撃が襲う可能性はゼロ、皆無です!! 皆さんの学園生活は、順風満帆・安全第一・平穏無事です!!」
そう言い終わるや、霧はリューエストと共に顔を上げ、きつい眼差しの三白眼で、傍らの「兄」を見つめた。霧が怒っているのを感じ、リューエストはさっきとは打って変わった情けない表情で震えている。
「キ、キリ……ご、ごめん、僕、何か間違えたんだね? お兄ちゃんはただ、キリが可愛くて、愛おしくて、守りたくて……。お、怒ってるんだね、キリ、お、お願いだ、お兄ちゃんを嫌いにならないで」
その美しい宝石のような瞳から、ポロリと涙がこぼれ落ちる。霧は驚いて、ポケットティッシュを取り出すとリューエストの涙を拭いて言った。兄というよりこれ弟じゃん?と思いながら。
「怒ってない、もう怒ってないよ! リューエストを嫌いになんかならないよ、大好きだよ! デコピンしてごめんね、痛かった?」
リューエストの美しい顔が、ぱあっと、喜びに光り輝く。
「ほんと? 怒ってない? じゃあ、もう一回言って」
「うんうん、怒ってない。怒ってないから、泣かないで」
「そこじゃなくて、大好き、ってとこだよ! お兄ちゃん大好きって、もう一回言って!」
「…………」
目をキラキラさせて霧を見つめる、その美しい「兄」の顔を、霧は呆れたように見つめ返した。
(この夢、いったい誰のシナリオなんだろ。それともあたしってば潜在意識で、「愛され妹」になりたい願望をこじらせてたんだろうか。いやいや、兄弟姉妹欲しいなんて、一度も思ったことないし、むしろあのクズ両親の被害があたし一人で良かったと思ってるくらいなのに、意外だ……。ううむ……とりあえず、全然物語と内面イメージの違うこのリューエスト、おとなしくさせておくか)
そうFAを出した霧はにこっと笑うと、サービス精神を上乗せして言った。
「リューエストはそばにいてくれるだけで、嬉しいよ。だから余計なことはしないでね? 今度みんなを脅迫したら、あたし、ブチ切れるからね。あたし、リューエストは何もしないで傍にいてくれるだけでいいの。お兄ちゃん、大好き!」
若干棒読みだったが、霧のセリフにリューエストは目に涙を溜めて感動している。どうやら「お兄ちゃん、大好き」のところだけ頭の中で繰り返し再生しているようだ。
霧は静かになったリューエストにホッとして、『辞典』を開いて入学旅行の課題用ページを確認した。
――――――――――――――
魔法士学園 入学旅行 第1540年度
【第24班 6名 以下50音順】
1.アデル・ダリアリーデレ
2.アルビレオ・ファルステーロ
3.キリ・ダリアリーデレ
4.トリフォン・ワイズマン
5.リューエスト・ダリアリーデレ
6.リリエンヌ・ラエラ
■課題1/完了
第24班のメンバー全員と合流せよ
以降、入学旅行中は上記ツアーメイトと協力しあうこと
なお、初めてツアーメイトと半径2メートル以内に接近すると、辞典が輝いて知らせてくれる
■課題2/実行前
セセラム競技場で辞典競技を見学せよ
■課題3/課題2完了後に取り組むこと
セセラム競技場でツアーメイトと表現バトルを体験せよ
■課題4/課題3完了後に取り組むこと
セセラム競技場で他の班と表現バトル(団体戦)を体験せよ
なお、対戦相手となる班は競技場先着順にて決定される
■課題5
課題1~4完了後に開示される
――――――――――――――
課題1が完了となり、課題2~4の項目が現れている。
霧は顔を上げると、霧と同じように自分の『辞典』を確認しているツアーメイトたちに声をかけた。
「みんな、出足が遅れてごめん。さっそくセセラム競技場に向かおう!」
霧の声に皆うなずき、一行は歩き出した。
(お兄ちゃんには悪いけど、引っ込んどいてもらわないと!)
霧は思いっきり息を吸い込むと、拳を握り締め、駄々っ子のように足を踏み鳴らしながら、叫んだ。
「あたしは入学旅行を楽しみたい! 入学旅行を楽しみたい! 入学旅行を楽しみたい!」
大事なので3回言いました、とばかりに繰り返し、霧はリューエストの頭を押さえつけて前倒しさせると、自分もみんなに向かって頭を下げ、叫んだ。
「兄が失礼しました! ごめんなさい! 皆さんの身は心身共に安全です! なぜならあたしは非常に頑丈で、決して皆さんによって傷つけらることは無いからです! ついでにアホなので、嫌みを言われても気づきませんから安心してください! つまり兄の反撃が襲う可能性はゼロ、皆無です!! 皆さんの学園生活は、順風満帆・安全第一・平穏無事です!!」
そう言い終わるや、霧はリューエストと共に顔を上げ、きつい眼差しの三白眼で、傍らの「兄」を見つめた。霧が怒っているのを感じ、リューエストはさっきとは打って変わった情けない表情で震えている。
「キ、キリ……ご、ごめん、僕、何か間違えたんだね? お兄ちゃんはただ、キリが可愛くて、愛おしくて、守りたくて……。お、怒ってるんだね、キリ、お、お願いだ、お兄ちゃんを嫌いにならないで」
その美しい宝石のような瞳から、ポロリと涙がこぼれ落ちる。霧は驚いて、ポケットティッシュを取り出すとリューエストの涙を拭いて言った。兄というよりこれ弟じゃん?と思いながら。
「怒ってない、もう怒ってないよ! リューエストを嫌いになんかならないよ、大好きだよ! デコピンしてごめんね、痛かった?」
リューエストの美しい顔が、ぱあっと、喜びに光り輝く。
「ほんと? 怒ってない? じゃあ、もう一回言って」
「うんうん、怒ってない。怒ってないから、泣かないで」
「そこじゃなくて、大好き、ってとこだよ! お兄ちゃん大好きって、もう一回言って!」
「…………」
目をキラキラさせて霧を見つめる、その美しい「兄」の顔を、霧は呆れたように見つめ返した。
(この夢、いったい誰のシナリオなんだろ。それともあたしってば潜在意識で、「愛され妹」になりたい願望をこじらせてたんだろうか。いやいや、兄弟姉妹欲しいなんて、一度も思ったことないし、むしろあのクズ両親の被害があたし一人で良かったと思ってるくらいなのに、意外だ……。ううむ……とりあえず、全然物語と内面イメージの違うこのリューエスト、おとなしくさせておくか)
そうFAを出した霧はにこっと笑うと、サービス精神を上乗せして言った。
「リューエストはそばにいてくれるだけで、嬉しいよ。だから余計なことはしないでね? 今度みんなを脅迫したら、あたし、ブチ切れるからね。あたし、リューエストは何もしないで傍にいてくれるだけでいいの。お兄ちゃん、大好き!」
若干棒読みだったが、霧のセリフにリューエストは目に涙を溜めて感動している。どうやら「お兄ちゃん、大好き」のところだけ頭の中で繰り返し再生しているようだ。
霧は静かになったリューエストにホッとして、『辞典』を開いて入学旅行の課題用ページを確認した。
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魔法士学園 入学旅行 第1540年度
【第24班 6名 以下50音順】
1.アデル・ダリアリーデレ
2.アルビレオ・ファルステーロ
3.キリ・ダリアリーデレ
4.トリフォン・ワイズマン
5.リューエスト・ダリアリーデレ
6.リリエンヌ・ラエラ
■課題1/完了
第24班のメンバー全員と合流せよ
以降、入学旅行中は上記ツアーメイトと協力しあうこと
なお、初めてツアーメイトと半径2メートル以内に接近すると、辞典が輝いて知らせてくれる
■課題2/実行前
セセラム競技場で辞典競技を見学せよ
■課題3/課題2完了後に取り組むこと
セセラム競技場でツアーメイトと表現バトルを体験せよ
■課題4/課題3完了後に取り組むこと
セセラム競技場で他の班と表現バトル(団体戦)を体験せよ
なお、対戦相手となる班は競技場先着順にて決定される
■課題5
課題1~4完了後に開示される
――――――――――――――
課題1が完了となり、課題2~4の項目が現れている。
霧は顔を上げると、霧と同じように自分の『辞典』を確認しているツアーメイトたちに声をかけた。
「みんな、出足が遅れてごめん。さっそくセセラム競技場に向かおう!」
霧の声に皆うなずき、一行は歩き出した。
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