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一章 入学旅行一日目
1-08b 課題1クリア
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「あの子じゃないかの? 手を振って近づいてくる」
そう言いながらトリフォンが、持っていた杖の先で指し示す。アデルと霧がその方向を見ると、長い巻き毛を揺らしながら、遠くから駆け寄ってくる一人の少女がいた。
「あ、リリー! そうです、あの子です!」
アデルはパッと顔を輝かせ、軽やかな足取りで走り出した。
アデルに無視されすっかり元気を失くした霧は、しょげながら溜息をついて言った。
「おお、おお……あんなに走って……。若いっていいねぇ……」
「おまえさんも若いじゃろうが、キリ。アデルもおまえさんも、まだまだお嬢さんじゃ」
トリフォンの言葉に、霧は耳を疑った。
「えっ……! あたしが、お、お、おおおお、お嬢さん?!」
「何を驚いておる? ほっほっほっ、若いうちはその若さに気付かんもんじゃて、お嬢さん」
霧はトリフォンの「お嬢さん」を頭の中でリフレインさせながら、感激した。
(お嬢さん。何という甘美な響き。そこはかとなく漂う、上流階級で優美な雰囲気。お嬢さん、だなんて言われたことがない。「お嬢さま」に生まれたかったがもう無理だからせめてお嬢さんだなんて言われてみたいと思っていたが、こんなところで叶うとは! トリフォンおじいさま、なんて素敵で紳士なお方なの! 物語の中ではこんなキャラ登場してないけど、人気投票おじいさま枠では学園長と並んでダントツ1位に決定だ!)
そう思いつつ、霧が頬を染めながら感動に打ち震えていると、アデルと巻き毛の少女がそばに戻ってきた。その途端、またもや辞典がピカッと光を放つ。おなじみ、ツアーメイト遭遇のお知らせだ。
巻き毛の少女は霧とトリフォンに微笑むと、優雅に頭を下げ言った。
「わたくし、リリエンヌ・ラエラと申します。皆さんの足手まといにならないよう、精一杯励みますので、どうぞよろしくお願いしますわ」
少女の巻き毛は美しい蜂蜜色をしていて、瞳はエメラルドグリーン。アデルとはまた違った雰囲気を持つ、絶世の美少女だ。まるで降臨した天使のようで、背中に翼が生えていないのが不思議なほど。その清らかな眩しさと類稀な美貌を前にして、霧はめまいに襲われた。
(おおおおお、リリエンヌ・ラエラ!! 6巻でチラッと出てくる、アデルの幼なじみ! 物語の中でも美少女という風に描写されていたけど、これ想像以上だよ!)
霧はドキドキしながら、「……あれ?」と思った。誰かに似てる、と。
物語の中に登場するリリエンヌは、7歳から10歳くらいの子供だった。でも今目の前にいる彼女は、20歳前ぐらいの若い女性だ。そのせいなのか、物語の中では感じたことのない不思議な既視感が、霧の頭をよぎる。それが何なのか分からなくてしばらくリリエンヌを見つめていたら、霧はいきなり思い出した。
(あっ! このリリエンヌ、シルヴィア先生に似てるんだ! 魔法士学園の美魔女先生、シルヴィア・レーヴ。一部の男性読者に驚異的な人気を誇る、シルヴィア先生。雰囲気はまるで違うけど、顔のパーツはすごくよく似てる。もしかして実は親子? ん? ファミリーネームが違うな。親戚かな?)
訊いてみようかと霧が迷いながら挨拶を済ませると、またもや『辞典』が光り輝く。
現われたのは、紫色の瞳が印象的な、黒髪の若い男性だった。
霧は再び、めまいに襲われる――その男性があまりにも、美形だったために。
(うおぉぉぉーーーーーっ! 何なのだ、この班は! 眼福天国、最高かよ! あたしのオタク魂をこれ以上刺激するのはやめてくれ!! サービスが過ぎる、サービスが過ぎるぞ、この夢は!! おまけにこの美男子は物語の中には出てこないキャラなのに、クオリティ高すぎる! 映像担当のボーナス昇給したってや!)
そんな風に霧が心の中で絶叫している間、面々は挨拶を交わし、新しくツアーメイトに加わった男性が声を発した。
「アルビレオ・ファルステーロだ。入学旅行の間、よろしく頼む」
「ぐほっ! 声までイケメン!! もう気絶してもいいですか?」
心の中で呟いたはずが、霧のオタク魂満載のかぐわしい感想は声に出ていた。それを聞いたアルビレオは無表情を崩さなかったが、アデルは明らかに軽蔑の色をにじませ顔を歪ませている。
「ちょっとオバサン、キモいんだけど? あなた本当に、ダリアの一族なの? 高尚さのかけらも無いんだけど……。ダリアリーデレを名乗るなら、もっと誇り高い態度で、なおかつ言動に気を付けてもらわないと困るわ」
「あっ……、す、すみません。自分、ほんとキモいですよね。ご不快にさせてしまって、申し訳ないです。でもそのぉ、オバサン、って言うの、やめてくれません?」
「それよ、その態度! なんでそんなに卑屈なの?! あなたホントに、ダリアの一族なの?!」
アデルの剣幕に、トリフォンがまあまあ……と、間に入ったとき。
「キリぃぃぃーーーー! お兄ちゃん、ここにいるよぉぉぉ!!」
誰かがそう叫びながら、ものすごい勢いで走り寄ってくる。途端に、その場に集まった6人の『辞典』が一斉に光った。その光の中、走り寄ってきた人物が霧に抱きつく。
長いサラサラのプラチナブロンドと、アクアマリンのような美しい瞳をした超絶美形、それは――。
「リューエスト?!」
そう言いながらトリフォンが、持っていた杖の先で指し示す。アデルと霧がその方向を見ると、長い巻き毛を揺らしながら、遠くから駆け寄ってくる一人の少女がいた。
「あ、リリー! そうです、あの子です!」
アデルはパッと顔を輝かせ、軽やかな足取りで走り出した。
アデルに無視されすっかり元気を失くした霧は、しょげながら溜息をついて言った。
「おお、おお……あんなに走って……。若いっていいねぇ……」
「おまえさんも若いじゃろうが、キリ。アデルもおまえさんも、まだまだお嬢さんじゃ」
トリフォンの言葉に、霧は耳を疑った。
「えっ……! あたしが、お、お、おおおお、お嬢さん?!」
「何を驚いておる? ほっほっほっ、若いうちはその若さに気付かんもんじゃて、お嬢さん」
霧はトリフォンの「お嬢さん」を頭の中でリフレインさせながら、感激した。
(お嬢さん。何という甘美な響き。そこはかとなく漂う、上流階級で優美な雰囲気。お嬢さん、だなんて言われたことがない。「お嬢さま」に生まれたかったがもう無理だからせめてお嬢さんだなんて言われてみたいと思っていたが、こんなところで叶うとは! トリフォンおじいさま、なんて素敵で紳士なお方なの! 物語の中ではこんなキャラ登場してないけど、人気投票おじいさま枠では学園長と並んでダントツ1位に決定だ!)
そう思いつつ、霧が頬を染めながら感動に打ち震えていると、アデルと巻き毛の少女がそばに戻ってきた。その途端、またもや辞典がピカッと光を放つ。おなじみ、ツアーメイト遭遇のお知らせだ。
巻き毛の少女は霧とトリフォンに微笑むと、優雅に頭を下げ言った。
「わたくし、リリエンヌ・ラエラと申します。皆さんの足手まといにならないよう、精一杯励みますので、どうぞよろしくお願いしますわ」
少女の巻き毛は美しい蜂蜜色をしていて、瞳はエメラルドグリーン。アデルとはまた違った雰囲気を持つ、絶世の美少女だ。まるで降臨した天使のようで、背中に翼が生えていないのが不思議なほど。その清らかな眩しさと類稀な美貌を前にして、霧はめまいに襲われた。
(おおおおお、リリエンヌ・ラエラ!! 6巻でチラッと出てくる、アデルの幼なじみ! 物語の中でも美少女という風に描写されていたけど、これ想像以上だよ!)
霧はドキドキしながら、「……あれ?」と思った。誰かに似てる、と。
物語の中に登場するリリエンヌは、7歳から10歳くらいの子供だった。でも今目の前にいる彼女は、20歳前ぐらいの若い女性だ。そのせいなのか、物語の中では感じたことのない不思議な既視感が、霧の頭をよぎる。それが何なのか分からなくてしばらくリリエンヌを見つめていたら、霧はいきなり思い出した。
(あっ! このリリエンヌ、シルヴィア先生に似てるんだ! 魔法士学園の美魔女先生、シルヴィア・レーヴ。一部の男性読者に驚異的な人気を誇る、シルヴィア先生。雰囲気はまるで違うけど、顔のパーツはすごくよく似てる。もしかして実は親子? ん? ファミリーネームが違うな。親戚かな?)
訊いてみようかと霧が迷いながら挨拶を済ませると、またもや『辞典』が光り輝く。
現われたのは、紫色の瞳が印象的な、黒髪の若い男性だった。
霧は再び、めまいに襲われる――その男性があまりにも、美形だったために。
(うおぉぉぉーーーーーっ! 何なのだ、この班は! 眼福天国、最高かよ! あたしのオタク魂をこれ以上刺激するのはやめてくれ!! サービスが過ぎる、サービスが過ぎるぞ、この夢は!! おまけにこの美男子は物語の中には出てこないキャラなのに、クオリティ高すぎる! 映像担当のボーナス昇給したってや!)
そんな風に霧が心の中で絶叫している間、面々は挨拶を交わし、新しくツアーメイトに加わった男性が声を発した。
「アルビレオ・ファルステーロだ。入学旅行の間、よろしく頼む」
「ぐほっ! 声までイケメン!! もう気絶してもいいですか?」
心の中で呟いたはずが、霧のオタク魂満載のかぐわしい感想は声に出ていた。それを聞いたアルビレオは無表情を崩さなかったが、アデルは明らかに軽蔑の色をにじませ顔を歪ませている。
「ちょっとオバサン、キモいんだけど? あなた本当に、ダリアの一族なの? 高尚さのかけらも無いんだけど……。ダリアリーデレを名乗るなら、もっと誇り高い態度で、なおかつ言動に気を付けてもらわないと困るわ」
「あっ……、す、すみません。自分、ほんとキモいですよね。ご不快にさせてしまって、申し訳ないです。でもそのぉ、オバサン、って言うの、やめてくれません?」
「それよ、その態度! なんでそんなに卑屈なの?! あなたホントに、ダリアの一族なの?!」
アデルの剣幕に、トリフォンがまあまあ……と、間に入ったとき。
「キリぃぃぃーーーー! お兄ちゃん、ここにいるよぉぉぉ!!」
誰かがそう叫びながら、ものすごい勢いで走り寄ってくる。途端に、その場に集まった6人の『辞典』が一斉に光った。その光の中、走り寄ってきた人物が霧に抱きつく。
長いサラサラのプラチナブロンドと、アクアマリンのような美しい瞳をした超絶美形、それは――。
「リューエスト?!」
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