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3章-新たな発見と長期休暇-
66話 お試し中級ダンジョン(森)その2
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スケイルカラーとの近接戦闘という一幕があってからある程度進んだところで少し背の低い植物が群生している広場のような場所を見つける。
そこには白や淡い黄色の草花の他に沢山の木の実がなっている果樹なども生えていた。
「あら?綺麗に場所に出ましたね」
「ここは…採取地点みたいだね。おそらくは鉱脈なんかと似た扱いなのかな?
生えているのは…魔化草と黄色のヒールフラワーが半々くらいで果樹がバスベリーだね」
「魔化草とヒールフラワーは商店で調薬用の薬草として売られているのを見た事がありますが…バスベリーですか?」
「バスベリーも含めてどれもポーションの材料だよ。
ヒールフラワーはHP回復ポーション、バスベリーはアビリティ変動系のポーションに使うやつだね」
ゲームや異世界モノ創作物でお馴染みのポーションだが、この世界ではステータスに影響を与える薬の総称を指す言葉である。代表的なものでHPMPの回復やダメージ、バフデバフの付与や消去、スキルの制限や効果上昇などの効果がある。肉体の損傷や特定の毒、病を一瞬で治す薬もあるがこちらは魔法薬と呼ばれている。
また、ポーションの作成には魔化草が必須なため調薬に詳しくない人でもこれだけは知っているというパターンが多い。
ちなみにデバフと状態異常の違いは何かというとアビリティによる抵抗が可能かどうかという点である。デバフに分類されるものはVITやRESのランクによって付与確率や持続時間が変動するのだ。状態異常は耐性スキルでしか防げない。なお、どちらもステータスの“状態”という欄に個別に表記され。
なお、この分類はあくまでも厳密に定義した場合のものであり、世間一般ではあまり浸透しておらず、同一のものを指す言葉として使用される事が多い。わざわざ使い分けるのは研究者くらいのものである。
「ダンジョンだし全部採取していこうか。いらなければ売ればいいしね」
「承知しました」
そうして周囲にある素材をどんどん収納していく2人。そう、正式に婚約者になったこともありレイラはユリスに収納のスキルをおねだりしていたのだ。そのため、2人のダンジョン探索は他と比べて圧倒的に効率の良いものとなっている。
そこから先の探索ではめぼしいアイテムは見つからず、出現する魔物もモリダンゴの群体型であるヤマモリダンゴが出現したものの相変わらず攻撃方法は転がるだけなので全く苦戦することはなかった。
特筆することと言えばレイラのレベルが20になり尻尾が3本になったことくらいだろうか。
そうして進んでいると今までで1番大きな広場を見つける。
「いかにも何か起きそうな広場だよなぁ」
「…中級ダンジョンの仕様って確かフロアの終わりに強制戦闘があるんでしたよね?」
「そうなんだ?
僕がざっと聞いた話は3フロア毎にボスクラスとの戦闘で全15フロアって話だけだったからそれは知らなかったな。
って事はここの広場は多分道中の魔物を強めにした感じかな?」
2人は広場へと近づきながら各自で仕入れた中級ダンジョンの情報を擦り合わせる。
「ならあそこにはモリダンゴとスケイルカラーが…ユリス様、あの広場キラキラしてません?」
「あー…確かに。鱗粉かぁ…
鱗粉が見えるって事は既にスケイルカラーが飛び回ってるのか…しかもモリダンゴは居ないけど赤以外の色が混ざってる。えーと…居るのは赤と青と緑かな?効果はアビリティ低下、魔毒、毒ね。MPダメージの魔毒はレイラがかかると少し厄介な状態異常だね…っていうかあの鱗粉が舞う中で戦闘しろと?」
「…行きたくないのですが」
「ですよねー…なら自分の周囲を障壁で覆える?こんな感じで。多分これなら鱗粉を防げるんじゃないかな?細かいとはいえ目で見えるレベルだし」
「あ!確かにそれなら浴びる心配がなさそうです!
んー…こう、ですね!…でも結構集中しないと保てなさそうです」
「まあそこは慣れしかないね。
とりあえず今回は僕がちゃちゃっと片付けるよ。
レベル上げの目的もあったけど、そっちの効率はある程度進むかメダルを使うかしないと下級ボスラッシュとそう大きくは変わらないかなぁ…」
ユリスの手本を元にレイラが周囲を半球状に覆う障壁を展開するが、不慣れなせいで歩く程度の動作しか出来そうにない。経験値の取得には最低でも一撃入れるか食らうかする必要があるため、この状態では無理だろう。そう判断したユリスは今回の探索でレイラのレベル上げをすることを断念。3フロア目のボスを倒すと出てくるらしい離脱装置で戻るつもりな上、それまでにスケイルカラーがいなくなるとは思えなかったためだ。
「さーてとっ…風でいいかな。
『魔纒・断裂』…いくぞっ…!」
ユリスにしては珍しく発声してスキルを発動し、スケイルカラーを次々と撃破していく。レイラは入口付近で待機しているが、案の定広場の出入り口は塞がれているようだ。
魔纒の後についている単語は属性によって変化するもので、風属性では『断裂』となる。効果は竜巻のように纏った風が攻撃時に斬撃の追撃を行うというものだ。
故に殴っているのにスケイルカラーが切り裂かれていくという不思議な光景を次々に作り出しながらユリスは広場を跳び回っている。
そうして実に20体ものスケイルカラーを屠ったところで中央に次階層への転移装置が出現した。
「終わったけど…鱗粉は消えない、と。
レイラ、さっさと次のフロアに行こうか」
「はい!…あ、私の障壁だと積もったやつは透過するんですね…」
早くこの鱗粉まみれの広場から抜け出したいレイラは自分の障壁がユリスのとは違う事に気付くが、今はそんな事などどうでもいい。前を歩いて道を作っているユリスの後ろにピッタリとついて行くのであった。
「レイラ、魔力は後どれくらい残ってる?」
「先ほどの障壁で少し使い過ぎた気はしますが、少なくとも半分は残っていますよ?尻尾2本分は充填してありますし、すぐになくなる事はないかと」
「それならこのフロアも道中は攻撃してもらおうかな?充填分以外を使い切ったら教えて。そこからはこっちでやるから」
「分かりました」
そうして第2フロアの探索を始めるが、スタート地点を出るや否やユリスの左上方から鞭のような何かが振り下ろされる。
「あたっ…急にきたね。
えーっと、キラープラントの蔓タイプね。大体は頭上にいるから今みたいな奇襲に警戒、な魔物なんだけど…今後はしっかり感知するから」
「はい、お願いしますね」
ただ忘れていただけなのだが、あたかも解説のためにわざと食らいましたとでも言っているかのようなユリスの言動に対してレイラは微笑みで返す。
本来ならば下級の魔物とは比べ物にならない威力な筈なのだが、道中は魔纒を常時発動して耐久を高めているためにこの程度の反応で済んでしまっている。もし今のレイラが食らったら一撃でHP3割は持っていかれるだろう。
「おっと…やっぱりまだスケイルカラーはいるみたい。しかも赤と緑の2色混合の個体で体当たりしてくると…まあ威力ないし意味ないけど」
「うう…まだ奴が居るという事はこのフロアの最後にも居ますよね…憂鬱です」
スケイルカラーのランクが上がることで今後もしばらく続投するであろうことが確定した瞬間である。
ただ、道中では遠くから一方的に攻撃できるのでレイラもそこまで忌避しているわけではない。あくまでもフロア最後の広場で待ち構えているであろう大量のスケイルカラーが憂鬱なだけなのだ。
「…あら?
ユリス様、あの木なのですが他のと違って傷がついたままですよ?」
「あれ本当だ。ダンジョンの一部なら修復される筈だから素材かな?…うん、やっぱり木材で『カシ』の木だって。よく見つけたね?
ただ、今回は伐採用の装備がないから見送りかな。採掘と同じで専用装備がないと品質下がるみたいだし」
「お役に立ててよかったです。
伐採用の斧なら購買ですぐに見つかるでしょうし戻ったら買いに行きましょうか?カシはランクは低くとも汎用性は高くて人気ですから採っておいて損はありません。それに、上位のものがいつ見つかるか分かりませんし」
それからは何度かカシを見つけるが全てスルーして、魔物を倒しつつ奥へ進んでいく。
最奥の広場に着く頃にはレイラのレベルもいくつか上がったが、残りの魔力がユリスの提示したラインに達してしまっていた。
「外から見る限りは地面に草タイプのキラープラント5体、空中には道中にもいた複合型のスケイルカラー10体かな…レイラも魔力が多くは残ってないみたいだし、次のフロアにいるらしいボス用に温存しておいて」
「分かりました。
では念のため障壁は張っておきますが、じっとしていますので戦闘の方はお願いしますね」
「ん、おっけー
といっても今回は魔術で一気に片付けちゃうからそんなに時間はらないでしょ」
そう言って2人が広場に突入すると、スケイルカラーが一斉に飛び立ち鱗粉を辺りに撒き始める。キラープラントがいる為か第1フロアの時のような惨状にはなっていなかったようだ。
だが、そうなるのも時間の問題ということで早速風魔術を発動。現れたのは広場全体を覆う程の巨大な竜巻だ。その内側で風の刃が無数に舞っているためか、威力も相当なもので数秒でスケイルカラーが切り刻まれている。
「あ、キラープラントも今ので倒せたのか」
「…障壁を張る間もありませんでした」
スケイルカラーを全て倒せた事を確認してから解除したユリスであったが、キラープラントの方も一緒に倒してしまっていたようで広場の中央には転移装置が出現していた。
「まあ楽に終わったのはいい事だね。次のフロアから難易度が一気に上がるらしいから。詳しくは教えてもらえなかったけど」
「次を攻略できれば次から第1フロアは通らなくてもいいのですよね。必ず無事に突破しませんと…!」
実は中級ダンジョン以降は攻略した好きなフロアから再開する事が出来るのだ。と言っても離脱装置のあるフロア毎なので最低でも第3フロアのボスを攻略しなくてはいけないのだが。しかもパーティーではなく個人登録なため、途中でやられて離脱した人は登録されないという厳しさである。
その仕様のためか離脱装置のあるフロアは道中から難易度が高くなるのだ。その上、ここ最近の利用者の多さによって入ダンが遅くなる事が多いため、限られた探索時間内で3フロアを攻略しなくてはならないという制限もある。
戦力としては厳しくなる事が予想されるレイラだが、先輩の体験として聞いたその難易度を思い、途中でやられて離脱するような事だけはしないと意気込むのであった。
そこには白や淡い黄色の草花の他に沢山の木の実がなっている果樹なども生えていた。
「あら?綺麗に場所に出ましたね」
「ここは…採取地点みたいだね。おそらくは鉱脈なんかと似た扱いなのかな?
生えているのは…魔化草と黄色のヒールフラワーが半々くらいで果樹がバスベリーだね」
「魔化草とヒールフラワーは商店で調薬用の薬草として売られているのを見た事がありますが…バスベリーですか?」
「バスベリーも含めてどれもポーションの材料だよ。
ヒールフラワーはHP回復ポーション、バスベリーはアビリティ変動系のポーションに使うやつだね」
ゲームや異世界モノ創作物でお馴染みのポーションだが、この世界ではステータスに影響を与える薬の総称を指す言葉である。代表的なものでHPMPの回復やダメージ、バフデバフの付与や消去、スキルの制限や効果上昇などの効果がある。肉体の損傷や特定の毒、病を一瞬で治す薬もあるがこちらは魔法薬と呼ばれている。
また、ポーションの作成には魔化草が必須なため調薬に詳しくない人でもこれだけは知っているというパターンが多い。
ちなみにデバフと状態異常の違いは何かというとアビリティによる抵抗が可能かどうかという点である。デバフに分類されるものはVITやRESのランクによって付与確率や持続時間が変動するのだ。状態異常は耐性スキルでしか防げない。なお、どちらもステータスの“状態”という欄に個別に表記され。
なお、この分類はあくまでも厳密に定義した場合のものであり、世間一般ではあまり浸透しておらず、同一のものを指す言葉として使用される事が多い。わざわざ使い分けるのは研究者くらいのものである。
「ダンジョンだし全部採取していこうか。いらなければ売ればいいしね」
「承知しました」
そうして周囲にある素材をどんどん収納していく2人。そう、正式に婚約者になったこともありレイラはユリスに収納のスキルをおねだりしていたのだ。そのため、2人のダンジョン探索は他と比べて圧倒的に効率の良いものとなっている。
そこから先の探索ではめぼしいアイテムは見つからず、出現する魔物もモリダンゴの群体型であるヤマモリダンゴが出現したものの相変わらず攻撃方法は転がるだけなので全く苦戦することはなかった。
特筆することと言えばレイラのレベルが20になり尻尾が3本になったことくらいだろうか。
そうして進んでいると今までで1番大きな広場を見つける。
「いかにも何か起きそうな広場だよなぁ」
「…中級ダンジョンの仕様って確かフロアの終わりに強制戦闘があるんでしたよね?」
「そうなんだ?
僕がざっと聞いた話は3フロア毎にボスクラスとの戦闘で全15フロアって話だけだったからそれは知らなかったな。
って事はここの広場は多分道中の魔物を強めにした感じかな?」
2人は広場へと近づきながら各自で仕入れた中級ダンジョンの情報を擦り合わせる。
「ならあそこにはモリダンゴとスケイルカラーが…ユリス様、あの広場キラキラしてません?」
「あー…確かに。鱗粉かぁ…
鱗粉が見えるって事は既にスケイルカラーが飛び回ってるのか…しかもモリダンゴは居ないけど赤以外の色が混ざってる。えーと…居るのは赤と青と緑かな?効果はアビリティ低下、魔毒、毒ね。MPダメージの魔毒はレイラがかかると少し厄介な状態異常だね…っていうかあの鱗粉が舞う中で戦闘しろと?」
「…行きたくないのですが」
「ですよねー…なら自分の周囲を障壁で覆える?こんな感じで。多分これなら鱗粉を防げるんじゃないかな?細かいとはいえ目で見えるレベルだし」
「あ!確かにそれなら浴びる心配がなさそうです!
んー…こう、ですね!…でも結構集中しないと保てなさそうです」
「まあそこは慣れしかないね。
とりあえず今回は僕がちゃちゃっと片付けるよ。
レベル上げの目的もあったけど、そっちの効率はある程度進むかメダルを使うかしないと下級ボスラッシュとそう大きくは変わらないかなぁ…」
ユリスの手本を元にレイラが周囲を半球状に覆う障壁を展開するが、不慣れなせいで歩く程度の動作しか出来そうにない。経験値の取得には最低でも一撃入れるか食らうかする必要があるため、この状態では無理だろう。そう判断したユリスは今回の探索でレイラのレベル上げをすることを断念。3フロア目のボスを倒すと出てくるらしい離脱装置で戻るつもりな上、それまでにスケイルカラーがいなくなるとは思えなかったためだ。
「さーてとっ…風でいいかな。
『魔纒・断裂』…いくぞっ…!」
ユリスにしては珍しく発声してスキルを発動し、スケイルカラーを次々と撃破していく。レイラは入口付近で待機しているが、案の定広場の出入り口は塞がれているようだ。
魔纒の後についている単語は属性によって変化するもので、風属性では『断裂』となる。効果は竜巻のように纏った風が攻撃時に斬撃の追撃を行うというものだ。
故に殴っているのにスケイルカラーが切り裂かれていくという不思議な光景を次々に作り出しながらユリスは広場を跳び回っている。
そうして実に20体ものスケイルカラーを屠ったところで中央に次階層への転移装置が出現した。
「終わったけど…鱗粉は消えない、と。
レイラ、さっさと次のフロアに行こうか」
「はい!…あ、私の障壁だと積もったやつは透過するんですね…」
早くこの鱗粉まみれの広場から抜け出したいレイラは自分の障壁がユリスのとは違う事に気付くが、今はそんな事などどうでもいい。前を歩いて道を作っているユリスの後ろにピッタリとついて行くのであった。
「レイラ、魔力は後どれくらい残ってる?」
「先ほどの障壁で少し使い過ぎた気はしますが、少なくとも半分は残っていますよ?尻尾2本分は充填してありますし、すぐになくなる事はないかと」
「それならこのフロアも道中は攻撃してもらおうかな?充填分以外を使い切ったら教えて。そこからはこっちでやるから」
「分かりました」
そうして第2フロアの探索を始めるが、スタート地点を出るや否やユリスの左上方から鞭のような何かが振り下ろされる。
「あたっ…急にきたね。
えーっと、キラープラントの蔓タイプね。大体は頭上にいるから今みたいな奇襲に警戒、な魔物なんだけど…今後はしっかり感知するから」
「はい、お願いしますね」
ただ忘れていただけなのだが、あたかも解説のためにわざと食らいましたとでも言っているかのようなユリスの言動に対してレイラは微笑みで返す。
本来ならば下級の魔物とは比べ物にならない威力な筈なのだが、道中は魔纒を常時発動して耐久を高めているためにこの程度の反応で済んでしまっている。もし今のレイラが食らったら一撃でHP3割は持っていかれるだろう。
「おっと…やっぱりまだスケイルカラーはいるみたい。しかも赤と緑の2色混合の個体で体当たりしてくると…まあ威力ないし意味ないけど」
「うう…まだ奴が居るという事はこのフロアの最後にも居ますよね…憂鬱です」
スケイルカラーのランクが上がることで今後もしばらく続投するであろうことが確定した瞬間である。
ただ、道中では遠くから一方的に攻撃できるのでレイラもそこまで忌避しているわけではない。あくまでもフロア最後の広場で待ち構えているであろう大量のスケイルカラーが憂鬱なだけなのだ。
「…あら?
ユリス様、あの木なのですが他のと違って傷がついたままですよ?」
「あれ本当だ。ダンジョンの一部なら修復される筈だから素材かな?…うん、やっぱり木材で『カシ』の木だって。よく見つけたね?
ただ、今回は伐採用の装備がないから見送りかな。採掘と同じで専用装備がないと品質下がるみたいだし」
「お役に立ててよかったです。
伐採用の斧なら購買ですぐに見つかるでしょうし戻ったら買いに行きましょうか?カシはランクは低くとも汎用性は高くて人気ですから採っておいて損はありません。それに、上位のものがいつ見つかるか分かりませんし」
それからは何度かカシを見つけるが全てスルーして、魔物を倒しつつ奥へ進んでいく。
最奥の広場に着く頃にはレイラのレベルもいくつか上がったが、残りの魔力がユリスの提示したラインに達してしまっていた。
「外から見る限りは地面に草タイプのキラープラント5体、空中には道中にもいた複合型のスケイルカラー10体かな…レイラも魔力が多くは残ってないみたいだし、次のフロアにいるらしいボス用に温存しておいて」
「分かりました。
では念のため障壁は張っておきますが、じっとしていますので戦闘の方はお願いしますね」
「ん、おっけー
といっても今回は魔術で一気に片付けちゃうからそんなに時間はらないでしょ」
そう言って2人が広場に突入すると、スケイルカラーが一斉に飛び立ち鱗粉を辺りに撒き始める。キラープラントがいる為か第1フロアの時のような惨状にはなっていなかったようだ。
だが、そうなるのも時間の問題ということで早速風魔術を発動。現れたのは広場全体を覆う程の巨大な竜巻だ。その内側で風の刃が無数に舞っているためか、威力も相当なもので数秒でスケイルカラーが切り刻まれている。
「あ、キラープラントも今ので倒せたのか」
「…障壁を張る間もありませんでした」
スケイルカラーを全て倒せた事を確認してから解除したユリスであったが、キラープラントの方も一緒に倒してしまっていたようで広場の中央には転移装置が出現していた。
「まあ楽に終わったのはいい事だね。次のフロアから難易度が一気に上がるらしいから。詳しくは教えてもらえなかったけど」
「次を攻略できれば次から第1フロアは通らなくてもいいのですよね。必ず無事に突破しませんと…!」
実は中級ダンジョン以降は攻略した好きなフロアから再開する事が出来るのだ。と言っても離脱装置のあるフロア毎なので最低でも第3フロアのボスを攻略しなくてはいけないのだが。しかもパーティーではなく個人登録なため、途中でやられて離脱した人は登録されないという厳しさである。
その仕様のためか離脱装置のあるフロアは道中から難易度が高くなるのだ。その上、ここ最近の利用者の多さによって入ダンが遅くなる事が多いため、限られた探索時間内で3フロアを攻略しなくてはならないという制限もある。
戦力としては厳しくなる事が予想されるレイラだが、先輩の体験として聞いたその難易度を思い、途中でやられて離脱するような事だけはしないと意気込むのであった。
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