10 / 83
1章-新たな出会い-
10話 王都到着
しおりを挟む
森を抜けてから9日後の昼、ようやく街が見えてきた。
「やっと着いた…」
「思ってたより時間かかっちゃったね」
「ああうん、そうだね…
ここまでくれば王都まで馬車があるんだっけ?」
道中でユリスが寝不足だったり、シエラが駄々を捏ねて朝なかなか起きなかったりと色々あったせいで予定よりも丸1日遅れてしまったのだ。
そのせいかユリスの言葉遣いも若干崩れ始めている。
「そうだよ。
次の出発がいつなのかは調べないと分からないから、宿をとったらまずは調べに行かないとね」
街の門まで来たところでシエラが衛兵に話しかけられる。
「すみませんが身分証の提示をお願いできますか?」
「ええ、確認をお願いします。
それと帰りの途中でこの子を保護したのですけれど、身分証を持っていないようなので仮の身分証を作成していただけますか?」
「わかりました。
それでは少々お待ちください」
そう言って衛兵の1人が詰所に戻っていく。
戻ってきた時には水晶のようなものを持っていた。
「それでは、念のため犯罪履歴を調べますのでこの水晶に手を乗せて貰えるかな?
それと身分証に載せる名前も教えて欲しい。これは鑑定で照会される場合があるから正直に答えるように」
「わかりました。名前はユリスです」
この水晶は触れた人の犯罪歴があるかどうかを判定できる魔道具のようだ。
ユリスが水晶に手を乗せると青く光りだした。
「はい、大丈夫ですよ。
それでは仮身分証を作りますのでもう少々お待ちください。
…はい、これが仮の身分証になります。
騎士様はご承知だと思いますが、使用できるのはこの街だけで期間は1ヶ月になりますのでお気をつけください。
それでは通っていただいて構いませんよ」
「ええ、わかってるわ。
ありがとうね」
どうやら青く光るのは犯罪歴がない証らしい。身分証も仮のためかすぐに用意されて街の中に入ることができた。
「なんか随分丁寧な対応だったね。いつもあんな感じなの?」
「うーん、騎士の格好をしているからかな?
あまり評判が良くない街でも大体丁寧な対応してくれるよ。
基本的に他の服で街の外に出ないから実際は分からないかな」
街の近くになった時からシエラは元々着ていた騎士鎧に着替えていた。
「そっか」
(シエラのことばかり見てたし門にいた衛兵は男ばっかだったし、まあ多分そういうことだろうな)
そんな話をしながら宿に向かい、到着したユリスの目に入ってきたものは一目で高級だとわかるような旅館だった。
高さこそは3階建くらいだが、庭も含めてかなり広く外観が周りと明らかに違う和風の建物だったのだ。
ちなみに途中で教えてもらったが、この街はシャトル子爵領の街で名前はタルミというらしい。
「え…?ここに泊まるの?」
(こんな高級旅館なんて前世でも泊まったことないぞ)
「うん。前もここだったんだけど、部屋もよかったし対応もしっかりしてたからね。
あ、お金のことは気にしなくていいよ。これでもお金には結構余裕があるからね」
途中に普通そうな宿はいくつもあったが、それらに目もくれず一直線にやってきたのは前にも泊まったことがあるからのようだ。
シエラは部屋の手配を進めるが、なにやら従業員と交渉を始めてしまう。
ユリスはエントランスの休憩スペースで寛いでいるが、正式な身分証を持たない子供だけでは部屋が取れないのでシエラに任せることにしている。
「ユリスくん、部屋とれたよー
ただ、ちょっと時間かかるみたいだから先に馬車の確認をしに行こっか」
「ん、わかった」
(交渉してたし、なんとか部屋を空けてもらったのかな?)
そうして王都行きの馬車乗り場まで行き、次の出発がいつなのかを聞く。
「お客さんちょうどよかったね。
昨日王都からの便が到着したばかりだから、次の出発は2日後だよ。その次は15日後になるね」
「ほんと!?じゃあ次の便で2人分お願いね」
「はいよ、毎度あり。
料金だが半分は前金で2人分3000フォートだよ。残りの3000は王都で降りる時に払ってくれ」
「はい、これでお願いね」
(ふーん、貨幣の名称はフォートっていうのか)
シエラは銀貨を3枚渡していた。
ユリスは貨幣について全く知らなかったためにシエラの取引を見て覚えようとしているが、銀貨1枚で1000フォートになるようで端数がないためにそれ以上のことが分からなかった。
「はい確かに。
王都までは5日かかるけど、野営の準備とかは各自でやってもらうことになってる。準備は忘れないようにね」
「ええ、わかったわ。
それじゃあ、また2日後にね」
そうして馬車の予約も終わり、2人は宿に戻っていく。
宿側の準備も終わったようなのでそのまま部屋に入っていくが、奥に着いたところでユリスが違和感に気づく。
「ねえ…」
「どうしたの?部屋が気に入らなかった?」
「いや、そうじゃないんだけどね?
なんでベッドが1つしかないの?
2人部屋って普通ベッドは2つあると思うんだけど」
「いや~…なんでかしらね?」
シエラは顔を逸らしながらそう言ってくる。
どうやら確信犯のようだ。
「はぁ…直してもらうのも申し訳ないしもういいや。
…どうせいつものことだし」
(さっき従業員と交渉してたのはこれだったのか)
「そっか♪じゃあこのままね…ふふふ…
あ、そうだ!途中に水浴び用の部屋が有るからそこにお風呂用意して貰える?」
「はいはい。
食事はどうする?」
「そうねえ、気は進まないけど食堂を使う?屋台はもう大体閉まっていたし。他だとお高めの料理店だから予約が必要だし」
「食堂に何かあるの?」
「いや、まあ…ね。とにかく行こっか」
食堂につき、ユリスはメニューを見るが知らない料理ばかりだったので、シエラに任せることにする。
「えーと、アオギのバター焼きにギーラスープ2つずつ、あと黒チーズのサラダをお願いね。あと飲み物はアルルの果汁2つね」
「承りましたー!」と店員が下がっていく。
高級な宿のはずなのだが、併設されている食堂はリーズナブルかつ宿泊客以外でも利用できるようで、客の多い酒場のような雰囲気だった。
「おっ、いい女がいるじゃねえか。
おい姉ちゃん!俺たちと一緒に飲もうぜ!」
(なるほど、食堂に来たがらなかった理由はこれか)
食堂ではシエラの容姿に見惚れるものが多く、ついには酔っ払いまで絡んできた。
どうやらいつものことのようで、シエラは完全に無視をしている。
「…!……!
この…俺様を無視するとはいい度胸だ!
おい!表にでろ!
この街で俺様をバカにするとどうなるか教育してやる!そこのガキも一緒にな!」
めげずに話しかけても無視され続ける状況に勝手にヒートアップした酔っ払い男がついてこいと外へ出ていく。が、シエラはそれでも反応しなかった。
少しして、顔を真っ赤にした男が戻ってきた。
周りの客の中には見せ物を見るかのように男を笑いながら酒を飲んでいる者もいる。
「お前ら…!俺様をここまでコケにしやがって!覚悟しろっ!
…なっ!?」
男が持っていた剣を抜き、勢いよく振り下ろしたがシエラは素手で掴んで止めてしまった。
そして、シエラが殺気を感じる目で睨みつけると男は酔いが吹っ飛んだのか急に大人しくなって縮こまってしまう。
少しして店員が呼んだ衛兵がやってきて男を連行していった。
「はあ…だからあまり来たくなかったのよ…
あんなんで落とせる女がいると本気で思ってるのかしら…?」
いつもこうなのだろう。
シエラはうんざりしたように愚痴をこぼす。
「まあ、シエラさんは美人だからね。あれはやりすぎにしても声をかけたくなる気持ちはわかるかな」
「え…そ、そう?
ちょうど料理も来たみたいだし食べましょうか!」
ユリスの言葉にシエラの機嫌が一気に戻ったところにちょうど料理が運ばれてくる。
どうやらタルミの名物は魚料理らしく、アオギは鯖、ギーラは鱈のような魚だった。黒チーズは見た目が真っ黒でキノコとチーズが混ざったような香りだった。
「どれも結構美味しいな」
(鯖のバター焼きなんて初めて食べた気がするけど、思ったよりいけるな。そしてこの黒チーズは香りもいいけど旨味がすごい。異世界の料理がどんな感じか不安だったけどこれでひとまず安心だな)
「そうね、この街は食材の豊富なダンジョンが近くにあるから美味しいものが多いのよね。
多分国中でこの街が1番じゃないかしら?
王都よりは確実に数段上よ。そもそも食材の種類が違うもの」
「そうなの?…なら今のうちに楽しんでおこうっと」
(マジか~…
これは、王都で良さげな店がなかったら自分でなんとかするしかないな)
安心したのも束の間、王都ではグレードが落ちると言われてユリスは落胆するが、最悪自分でなんとかすると決意して今を楽しむ事にしたようだ。
翌日、ユリスはダンジョン産の食材が気になったのかシエラに教えてもらいながら市場を見て回っていた。
また、結局は貨幣についても教えてもらっていた。
小銅貨が10フォート、大銅貨が100フォート、小銀貨が1000フォートのようにサイズや種類で桁が変わるようだ。そして銅、銀、金、白銀、白金、神銀、神金の順に高くなる。ただし、白銀、白金は素材自体が貴重なので大きいサイズがなく、上2つに至っては伝承にあるだけで見たことがないとのこと。
そうして過ごすうちに王都へ出発する日になった。
「それじゃあ向かいましょうか」
「はーい」
馬車乗り場に到着すると、ユリスたちの他にも2組ほど乗車するようだ。
片方は少年少女のカップル、もう片方は夫婦と女の子の家族のようだった。御者も男女1人ずついるようで、計9人となる。前日までの完全予約制なのでこの人数で旅をすることになるようだ。
「みなさん!
用意ができたので、そろそろ出発しますよ!」
御者がそう声をかけてきたので、馬車に乗り込み王都への旅が始まった。
とはいうものの、近くに天然ダンジョンがあって氾濫でもしなければ魔物がいないこの世界でそうそうトラブルが起きるはずもなく。
たまに他の乗客と話をするぐらいで、他はシエラと一緒に退屈な日々を過ごすだけだった。
そんな日々の中でカップルと女の子が学園の入学試験を受けにいくという話題で盛り上がっている時があった。年齢が近いということでユリスも話に参加していたが、ユリスはその時は学園に入れるかどうか分からなかったため、自分には関係のない体で参加していた。
ちなみに収納を使うわけにもいかないので風呂もお預けである。ユリスにとっては旅の中でそれが1番キツかったようだ。
そんなこんなで森を出てから16日後、ついに王都が見えてきた。すると門に着いたところでシエラが振り返り畏まったように声をかけてくる。
「ユリスくん、ようこそ『王都ミクスペル』へ」
「やっと着いた…」
「思ってたより時間かかっちゃったね」
「ああうん、そうだね…
ここまでくれば王都まで馬車があるんだっけ?」
道中でユリスが寝不足だったり、シエラが駄々を捏ねて朝なかなか起きなかったりと色々あったせいで予定よりも丸1日遅れてしまったのだ。
そのせいかユリスの言葉遣いも若干崩れ始めている。
「そうだよ。
次の出発がいつなのかは調べないと分からないから、宿をとったらまずは調べに行かないとね」
街の門まで来たところでシエラが衛兵に話しかけられる。
「すみませんが身分証の提示をお願いできますか?」
「ええ、確認をお願いします。
それと帰りの途中でこの子を保護したのですけれど、身分証を持っていないようなので仮の身分証を作成していただけますか?」
「わかりました。
それでは少々お待ちください」
そう言って衛兵の1人が詰所に戻っていく。
戻ってきた時には水晶のようなものを持っていた。
「それでは、念のため犯罪履歴を調べますのでこの水晶に手を乗せて貰えるかな?
それと身分証に載せる名前も教えて欲しい。これは鑑定で照会される場合があるから正直に答えるように」
「わかりました。名前はユリスです」
この水晶は触れた人の犯罪歴があるかどうかを判定できる魔道具のようだ。
ユリスが水晶に手を乗せると青く光りだした。
「はい、大丈夫ですよ。
それでは仮身分証を作りますのでもう少々お待ちください。
…はい、これが仮の身分証になります。
騎士様はご承知だと思いますが、使用できるのはこの街だけで期間は1ヶ月になりますのでお気をつけください。
それでは通っていただいて構いませんよ」
「ええ、わかってるわ。
ありがとうね」
どうやら青く光るのは犯罪歴がない証らしい。身分証も仮のためかすぐに用意されて街の中に入ることができた。
「なんか随分丁寧な対応だったね。いつもあんな感じなの?」
「うーん、騎士の格好をしているからかな?
あまり評判が良くない街でも大体丁寧な対応してくれるよ。
基本的に他の服で街の外に出ないから実際は分からないかな」
街の近くになった時からシエラは元々着ていた騎士鎧に着替えていた。
「そっか」
(シエラのことばかり見てたし門にいた衛兵は男ばっかだったし、まあ多分そういうことだろうな)
そんな話をしながら宿に向かい、到着したユリスの目に入ってきたものは一目で高級だとわかるような旅館だった。
高さこそは3階建くらいだが、庭も含めてかなり広く外観が周りと明らかに違う和風の建物だったのだ。
ちなみに途中で教えてもらったが、この街はシャトル子爵領の街で名前はタルミというらしい。
「え…?ここに泊まるの?」
(こんな高級旅館なんて前世でも泊まったことないぞ)
「うん。前もここだったんだけど、部屋もよかったし対応もしっかりしてたからね。
あ、お金のことは気にしなくていいよ。これでもお金には結構余裕があるからね」
途中に普通そうな宿はいくつもあったが、それらに目もくれず一直線にやってきたのは前にも泊まったことがあるからのようだ。
シエラは部屋の手配を進めるが、なにやら従業員と交渉を始めてしまう。
ユリスはエントランスの休憩スペースで寛いでいるが、正式な身分証を持たない子供だけでは部屋が取れないのでシエラに任せることにしている。
「ユリスくん、部屋とれたよー
ただ、ちょっと時間かかるみたいだから先に馬車の確認をしに行こっか」
「ん、わかった」
(交渉してたし、なんとか部屋を空けてもらったのかな?)
そうして王都行きの馬車乗り場まで行き、次の出発がいつなのかを聞く。
「お客さんちょうどよかったね。
昨日王都からの便が到着したばかりだから、次の出発は2日後だよ。その次は15日後になるね」
「ほんと!?じゃあ次の便で2人分お願いね」
「はいよ、毎度あり。
料金だが半分は前金で2人分3000フォートだよ。残りの3000は王都で降りる時に払ってくれ」
「はい、これでお願いね」
(ふーん、貨幣の名称はフォートっていうのか)
シエラは銀貨を3枚渡していた。
ユリスは貨幣について全く知らなかったためにシエラの取引を見て覚えようとしているが、銀貨1枚で1000フォートになるようで端数がないためにそれ以上のことが分からなかった。
「はい確かに。
王都までは5日かかるけど、野営の準備とかは各自でやってもらうことになってる。準備は忘れないようにね」
「ええ、わかったわ。
それじゃあ、また2日後にね」
そうして馬車の予約も終わり、2人は宿に戻っていく。
宿側の準備も終わったようなのでそのまま部屋に入っていくが、奥に着いたところでユリスが違和感に気づく。
「ねえ…」
「どうしたの?部屋が気に入らなかった?」
「いや、そうじゃないんだけどね?
なんでベッドが1つしかないの?
2人部屋って普通ベッドは2つあると思うんだけど」
「いや~…なんでかしらね?」
シエラは顔を逸らしながらそう言ってくる。
どうやら確信犯のようだ。
「はぁ…直してもらうのも申し訳ないしもういいや。
…どうせいつものことだし」
(さっき従業員と交渉してたのはこれだったのか)
「そっか♪じゃあこのままね…ふふふ…
あ、そうだ!途中に水浴び用の部屋が有るからそこにお風呂用意して貰える?」
「はいはい。
食事はどうする?」
「そうねえ、気は進まないけど食堂を使う?屋台はもう大体閉まっていたし。他だとお高めの料理店だから予約が必要だし」
「食堂に何かあるの?」
「いや、まあ…ね。とにかく行こっか」
食堂につき、ユリスはメニューを見るが知らない料理ばかりだったので、シエラに任せることにする。
「えーと、アオギのバター焼きにギーラスープ2つずつ、あと黒チーズのサラダをお願いね。あと飲み物はアルルの果汁2つね」
「承りましたー!」と店員が下がっていく。
高級な宿のはずなのだが、併設されている食堂はリーズナブルかつ宿泊客以外でも利用できるようで、客の多い酒場のような雰囲気だった。
「おっ、いい女がいるじゃねえか。
おい姉ちゃん!俺たちと一緒に飲もうぜ!」
(なるほど、食堂に来たがらなかった理由はこれか)
食堂ではシエラの容姿に見惚れるものが多く、ついには酔っ払いまで絡んできた。
どうやらいつものことのようで、シエラは完全に無視をしている。
「…!……!
この…俺様を無視するとはいい度胸だ!
おい!表にでろ!
この街で俺様をバカにするとどうなるか教育してやる!そこのガキも一緒にな!」
めげずに話しかけても無視され続ける状況に勝手にヒートアップした酔っ払い男がついてこいと外へ出ていく。が、シエラはそれでも反応しなかった。
少しして、顔を真っ赤にした男が戻ってきた。
周りの客の中には見せ物を見るかのように男を笑いながら酒を飲んでいる者もいる。
「お前ら…!俺様をここまでコケにしやがって!覚悟しろっ!
…なっ!?」
男が持っていた剣を抜き、勢いよく振り下ろしたがシエラは素手で掴んで止めてしまった。
そして、シエラが殺気を感じる目で睨みつけると男は酔いが吹っ飛んだのか急に大人しくなって縮こまってしまう。
少しして店員が呼んだ衛兵がやってきて男を連行していった。
「はあ…だからあまり来たくなかったのよ…
あんなんで落とせる女がいると本気で思ってるのかしら…?」
いつもこうなのだろう。
シエラはうんざりしたように愚痴をこぼす。
「まあ、シエラさんは美人だからね。あれはやりすぎにしても声をかけたくなる気持ちはわかるかな」
「え…そ、そう?
ちょうど料理も来たみたいだし食べましょうか!」
ユリスの言葉にシエラの機嫌が一気に戻ったところにちょうど料理が運ばれてくる。
どうやらタルミの名物は魚料理らしく、アオギは鯖、ギーラは鱈のような魚だった。黒チーズは見た目が真っ黒でキノコとチーズが混ざったような香りだった。
「どれも結構美味しいな」
(鯖のバター焼きなんて初めて食べた気がするけど、思ったよりいけるな。そしてこの黒チーズは香りもいいけど旨味がすごい。異世界の料理がどんな感じか不安だったけどこれでひとまず安心だな)
「そうね、この街は食材の豊富なダンジョンが近くにあるから美味しいものが多いのよね。
多分国中でこの街が1番じゃないかしら?
王都よりは確実に数段上よ。そもそも食材の種類が違うもの」
「そうなの?…なら今のうちに楽しんでおこうっと」
(マジか~…
これは、王都で良さげな店がなかったら自分でなんとかするしかないな)
安心したのも束の間、王都ではグレードが落ちると言われてユリスは落胆するが、最悪自分でなんとかすると決意して今を楽しむ事にしたようだ。
翌日、ユリスはダンジョン産の食材が気になったのかシエラに教えてもらいながら市場を見て回っていた。
また、結局は貨幣についても教えてもらっていた。
小銅貨が10フォート、大銅貨が100フォート、小銀貨が1000フォートのようにサイズや種類で桁が変わるようだ。そして銅、銀、金、白銀、白金、神銀、神金の順に高くなる。ただし、白銀、白金は素材自体が貴重なので大きいサイズがなく、上2つに至っては伝承にあるだけで見たことがないとのこと。
そうして過ごすうちに王都へ出発する日になった。
「それじゃあ向かいましょうか」
「はーい」
馬車乗り場に到着すると、ユリスたちの他にも2組ほど乗車するようだ。
片方は少年少女のカップル、もう片方は夫婦と女の子の家族のようだった。御者も男女1人ずついるようで、計9人となる。前日までの完全予約制なのでこの人数で旅をすることになるようだ。
「みなさん!
用意ができたので、そろそろ出発しますよ!」
御者がそう声をかけてきたので、馬車に乗り込み王都への旅が始まった。
とはいうものの、近くに天然ダンジョンがあって氾濫でもしなければ魔物がいないこの世界でそうそうトラブルが起きるはずもなく。
たまに他の乗客と話をするぐらいで、他はシエラと一緒に退屈な日々を過ごすだけだった。
そんな日々の中でカップルと女の子が学園の入学試験を受けにいくという話題で盛り上がっている時があった。年齢が近いということでユリスも話に参加していたが、ユリスはその時は学園に入れるかどうか分からなかったため、自分には関係のない体で参加していた。
ちなみに収納を使うわけにもいかないので風呂もお預けである。ユリスにとっては旅の中でそれが1番キツかったようだ。
そんなこんなで森を出てから16日後、ついに王都が見えてきた。すると門に着いたところでシエラが振り返り畏まったように声をかけてくる。
「ユリスくん、ようこそ『王都ミクスペル』へ」
0
お気に入りに追加
574
あなたにおすすめの小説
転生してギルドの社畜になったけど、S級冒険者の女辺境伯にスカウトされたので退職して領地開拓します。今更戻って来いって言われてももう婿です
途上の土
ファンタジー
『ブラック企業の社畜」ならぬ『ブラックギルドのギル畜』 ハルトはふとしたきっかけで前世の記憶を取り戻す。
ギルドにこき使われ、碌に評価もされず、虐げられる毎日に必死に耐えていたが、憧れのS 級冒険者マリアに逆プロポーズされ、ハルトは寿退社(?)することに。
前世の記憶と鑑定チートを頼りにハルトは領地開拓に動き出す。
ハルトはただの官僚としてスカウトされただけと思っていたのに、いきなり両親に紹介されて——
一方、ハルトが抜けて彼の仕事をカバーできる者がおらず冒険者ギルドは大慌て。ハルトを脅して戻って来させようとするが——
ハルトの笑顔が人々を動かし、それが発展に繋がっていく。
色々問題はあるけれど、きっと大丈夫! だって、うちの妻、人類最強ですから!
※中世ヨーロッパの村落、都市、制度等を参考にしておりますが、当然そのまんまではないので、史実とは差異があります。ご了承ください
※カクヨムにも掲載しています。現在【異世界ファンタジー週間18位】
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜
ワキヤク
ファンタジー
その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。
そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。
創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。
普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。
魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。
まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。
制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。
これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。
俺の武器が最弱のブーメランだった件〜でも、レベルを上げたら強すぎた。なんか伝説作ってます!?〜
神伊 咲児
ファンタジー
守護武器とは、自分の中にあるエネルギーを司祭に具現化してもらって武器にするというもの。
世界は皆、自分だけの守護武器を持っていた。
剣聖に憧れた主人公マワル・ヤイバーン。
しかし、守護武器の認定式で具現化した武器は小さなブーメランだった。
ブーメランは最弱武器。
みんなに笑われたマワルはブーメランで最強になることを決意する。
冒険者になったマワルは初日から快進撃が続く。
そんな評判をよく思わないのが2人の冒険者。立派な剣の守護武器の持ち主ケンゼランドと槍を守護武器とするヤーリーだった。
2人はマワルを陥れる為に色々と工作するが、その行動はことごとく失敗。その度に苦水を飲まされるのであった。
マワルはドンドン強くなり! いい仲間に巡り会える!
一方、ケンゼランドとヤーリーにはざまぁ展開が待ち受ける!
攻撃方法もざまぁ展開もブーメラン。
痛快ブーメラン無双冒険譚!!
他サイトにも掲載していた物をアルファポリス用に改稿いたしました。
全37話、10万字程度。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる