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第5話/入れ替わる世界
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私は”私が英傑高校を受けた世界”で、
奏華を殺した。
私が殺したんだ。
私が横断歩道で、奏華を呼び止めて
しまった。
そのせいで、彼女はスピード違反の
車に轢かれて死んだ。
私はこれから、それを背負って
生きていく。
そして、現実世界は、私が英傑高校に
通った世界線になっている。
でも、奏華は生きていない。
この世界と、並行世界が入れ替わった
からだ。
これから私は彼女を助ける為、
再び並行世界に入る。
でも、正直怖い。
奏華を殺した事で、精神が少し病んで
いる事もそうだが、あの店に
もう一度入り、チケットを買う。
それはつまり、またあの店員に会うと
いう事だ。
本当に、あの店員には会いたくない。
また、あの時みたいに襲われそうに
なったと考えると、ゾッとするんだ。
とりあえず、私は色々な出来事が
重なって、疲れている。
久しぶりに家に帰る事にした。
「お母さん、ただいま。」
そう言えば、英傑高校に行った私は
どんな仕事をしているんだろう。
もしかして、年的に大学生かも。
でも、私のただいまの後に、
お母さんから発せられた言葉は、
衝撃的なものだった。
「ねえ夏草、今日も大学ほったらかして
どこ行ってたの?」
どういう事?
私は英傑高校に通って、私は華やかな
人生を歩んでいると思っていた。
でも、現実は違った。
その後、お母さんに詳しく話を
聞く限り、私は精神を病んで、
大学生の頃から不登校になったらしい。
でも、英傑から大学まで順調に
進んでいた私が、なぜいじめられて
いるのか。
環境の変化に対応できなかったか。
もしくは、奏華が死んだ事による
ストレスかもしれない。
何にせよ、早く奏華を助けないと。
私は、奏華を死なせたかった
わけじゃない。
まずは、奏華が1番幸せな世界線に
入り込んで、その世界でミッションを
クリアする。
そして、この奏華のいない世界と、
奏華がいる世界を入れ替える。
~翌日の朝5時~
昨日の夜、私は早くに就寝したため、
こんなに早い時間に起きてしまった。
早く起きたは良いものの、特に
する事はない。
あの店がいつ開店するかも分からない。
だから、今はする事が無いのだ。
でも、せっかく早く起きたんだ。
久しぶりに、外を散歩してこよう。
~2029年3月3日5時23分~
私は家の鍵を開け、外に出た。
外には少しの雪が、土と混じって
溶け残っていた。
今年の受験日は、3月5日らしい。
受験生は、今は受験で忙しい時期
だろう。
でも、所詮不登校の私は、受験だろうが
そうじゃなかろうが、この世界の私も
前の世界の私も、結局は暇なんだ。
そんな私のする事と言えば、
散歩程度しかなかったのだ。
3月の朝5時は、まだ日が昇りかけた
頃で、かなり肌寒かった為、部屋着に
部屋にこの世界で私が買ったであろう
コートを見に纏い、玄関のドアを
開けた。
もう3月なのに、外ではシンシンと
雪が降っていた。
地面はほんの少しだけ白くなっていた。
恐らく、雪はついさっき降り始めた
のだろう。
家の庭を出て、ゆっくりと道路を
歩いた。
道路にある街灯には明かりが灯っていて
その周りだけ、雪がはっきりと見えた。
気がつくと、私のコートは、雪で
少しだけ白くなっていた。
雪を払おうとしても、それはなかなか
落ちなかった。
何分か、雪を落としながら歩いて、
私は街路樹の下に入った。
そこでも少し雪を落として、
冷たくなった手を擦り合わせたり、
自分の息を吹きかけたりして温めた。
冷たくて少し手が痒い。
足の指先も、少しづつ寒さで痛く
なってきた。
そろそろ家に戻ろうかとも思ったが、
まだ時刻は6時すら過ぎていない。
今家に戻っても、またする事がなく、
自分の部屋で、何も考えずにベットに
横たわって、お母さんの朝ごはんの
支度を待つだけになってしまう。
仕方ないので、もう少しだけ歩く事に
した。
私が歩き出そうとした時、パッと雪が
止んだ。
街路樹の下にいたからか、
コートの雪もほとんど溶けて、
水滴になっていた。
少しコートが湿っている。
そして、私の手は、まだ少し痒みが
残っている。
再び手を温めながら、道を進む。
歩き始めてから、2分か3分
程だろうか。
気がつくと、空が少し明るく
なり始めていた。
どうやら、朝日が登り始めたらしい。
恐らく、時刻も6時を過ぎた頃だろう。「そろそろ、戻ろうかな。」
少しづつだが、さっき薄く積もった雪が
溶け始めている。
私が雪を踏んでも、周りの雪が
少な過ぎて、足跡がどこだか
分からなくなる程、雪が溶けている。
私は少し、早歩きで家まで歩いた。
自分の家に辿り着く頃には
時刻は、朝の6時21分を回っていた。
お母さんは、まだ起きていない。
いつも、朝ごはんが出来るのは6時
40分頃だ。
それまでは、またベットで横になって
YouTubeを観ながら暇を潰す事にした。
部屋に入った途端、何故か全身の
力が抜けた。
そのままベットに倒れ込んだ。
YouTubeを観ようと思っていたが、
そのまま俯けの状態で、ただ時間が
過ぎるのを待っていた。
体を動かしたくなかった。
何もしないでいると、やっぱり奏華の
事を思い出してしまう。
この先、奏華がいる世界に
なったとしても、この罪悪感はそう簡単に消えるものじゃ無い。
本に書いてあった。
並行世界も、1つの世界。
そこでも人が、現実と同じ様に生活して
いる。
自分の世界が良かったとしても、
並行世界が良くならない。
結局、私は何かを犠牲にしなければ、
奏華を助ける事が出来ない。
私は別に、人を傷つけたいわけじゃ
無いのに、必然的に人を傷つけて
しまうのだ。
そんな事を考えてるうちに、
いつの間にか寝てしまっていた。
夢を見た。
私が小学生の頃の夢だ。
奏華が、私の目の前で泣いている。
何故泣いているのか、理由を聞いても
何も答えないで、泣き続けている。
場所は公園だった。
最初は、公園の砂場で彼女は1人で
泣いている様に見えた。しかし、
よく見ると、周りには複数人の子供が
いる事に気づいた。
声は聞こえないが、奏華に何かを
話している。恐らく、
子供達は奏華をいじめているのだろう。
彼女は昔から泣き虫で、
心がガラスの様に脆かった。
だが、子供達の様子もおかしい。
すごく違和感を感じる。
何故か、子供達は奏華では無い何かに
対して、怒っている様に見えたからだ。
泣いている子供も何人か混じっていた。
彼女に怒っていないのなら、
一体何に対して怒りを表して
いるのだろうか。
少し時間が経つと、周りの
子供の1人が、ゆっくりと
奏華に近寄って、強く抱きしめ、
奏華に何かを呟いた。
その子の表情からするに、私は
奏華を慰めているのだろうと感じた。
そして、周りの子供は、ほとんどが涙を
流し始めた。
奏華の涙も、時間が経過するごとに
小さな涙から、大粒の涙へと
変わっていったのだ。
それから、他の子供達も奏華の方へと
近寄って、一緒に泣いていた。
周りに大人は1人もいない。
子供達だけが、この空間で泣いている。
周りに大人は居ないのか、それとも
大人は子供達が泣いているのを
見てみぬふりをしているだけなのか。
何にせよ、子供達だけが大人数で
泣いているのは、とても不気味に
感じてしまう。
そして、私は気がついた。
この公園は今、夜だという事に。
夜の公園で子供達だけが
泣いている映像をどれ程の間、
見続けていたのだろうか。
時間の感覚がまるで無い。
もう、何も考えられない。
だが、そこで初めて、奏華のと子供達の
声が、私の元に届いた。
奏華は最後にホロリと涙を溢し、
私に語りかけた。
その時に、子供達が怒っていた理由も
何となく察しがついた。
『何で、私を…、殺シタノ.. …?」
私、夏草ニ、何かシタカナァ…、。?
何も、シテ..ないよねェ、、?
(“)@@<+<‘ll私が、何か、シタァ?
ねェ、ネェねえ、ネェエヱェ..,?!?..?!’
ワタシ、カナシィョ?
ネェ、ナニカ、言ッッで、ホシイナァ。…?
,@,@“>>+€%==£”\”7~*<€••$•…!」
私は、彼女の言葉を聞いて、
全身から恐怖が込み上げてきた。
全く体が動かない。
この場から、今すぐにでも逃げ
出したいのに、体が全く言うことを
聞いてくれないのだ。
そして彼女は今まで、顔を下に向けて
泣いていた。
でも、この後の言葉を言言いながら、
彼女は初めて顔を上げた。
『ホラ、見テョ…、、。
ワタシノカオ、コンナに、ナッヂャッダ
んだケド..,??!’z、。..:”?!!? ?
ネェ、事故デ、ゴンナ顔ニ、
ナッヂャッダァァァアァ..:)/‘,,.??!,.?!?」
彼女の顔に目鼻は完全に潰れていて、
顔には大量の血が流れていて、
その血は、拭き取っても拭き取っても
またすぐにダラダラと流れてくる。
よく見ると、彼女が流していた涙は、
だんだんとドス黒い色に染まった血に
変わっていったのだ。
頭、目の中、鼻、口の中。
至る所から、血が吹き出す。
その顔を見て、私は絶望した。
それは、彼女が事故に遭った時の彼女の
傷にそっくりだった。
彼女の顔を見る事が出来なかった。
あまりにも悲惨で、見たくなかった。
現実を受け入れたくなかった。
あの時、私は責任から逃げたのだ。
それが今、私に襲いかかってきたのだ。
私は今、彼女と目を合わせる事が
出来ない。
何故って?
そんなの簡単な事だ。
だって、今の彼女には、
“目が無いから。”
彼女の泣き声と、その中にある、
とても大きな怒りを感じた。
そして彼女の顔を見て、
私は改めて自覚した。
私がした事は、
決して許される事ではないと。
そして、私は目が覚めた…
私のベッドと枕は汗と涙でグッショリと
濡れていた。
部屋の外から、お母さんの声が
少しだけ聞こえた。
多分、朝ご飯の支度が出来たのだろう。
私は自室からは出ずに、
今にも泣き出したい感情を抑えて、
大声でお母さんに言った。
「先に食べてて!」
私が自室から出たのは、それから
10分後のことだった。
~ご飯を食べる為にリビングへ移動~
リビングには、もう私のご飯しか
残っていなかった。
お父さんは、少し起きるのが遅かった
からか、寝癖を直さずに会社へ
向かった。
お母さんは、いつも通り洗面所で
ゆっくりと化粧をしている。
そして私は、箸を持った。
米を口に運んだが、食べる気には
ならなかった。
私はそれから味噌汁だけを、
少しづつすすっていた。
そんな事をしているうちに、
お母さんは、化粧が終わり、仕事の
用意が整った様だ。
お母さんは、何も言わずに玄関の扉を
開けて、外へ出て行った。
それから私は、味噌汁以外のご飯を
全て残して、自室に戻った。
昨晩までは、奏華を助けようと
していたのに、今はそんな気に全く
なれない。
あの夢を見て、奏華に恐怖を抱いたのか
彼女の事を考えるだけで、トイレに
行く事すら怖くなる。
それから私は、一度も自室から出ずに、
1日を過ごした。
~午後6時12分~
お母さんが家に帰ってきた。
私は極度の安心感に包まれた。
その時、私は初めて自室から出た。
今日は何も体を動かさなかったせいか、全身がダルく、体が動きずらい。
一度部屋から出たのだから、
せっかくなので、外に出る事にした。
6時の空はもう真っ黒で、空には
満天の星が輝いていた。
その夜空の下を私はゆっくりと
歩いていた。
何も考えずに、ただ前へと進む。
今日は何か甘いものを食べたい気分だが
目の前にあるコンビニには寄らずに、
道路を歩き続けた。
気がつくと、私はあの怪しいコンビニ
へと辿り着いていた。
そこで私は、もう一度世界を変えたいと
思い、店内に入った。
「確か、並行世界に行くには、
チケットが必要だから…
あった、これだ…。
どれにしよう。」
私が迷っていると、店員が私に
話しかけてきた。
「£<+%•%+€&(<€•#.‘&(“€!?…?」
相変わらず、言葉は全く分からないが、
不思議と恐怖は感じなかった。
私はチケットを手に取り、店員に
それを手渡した。
「これ、1つお願いします..,…。」
私はお会計を済ませて、店の外に出た。
“この世界は、貴方が殺人を犯す
並行世界です。
この世界での貴方のミッションは、
この世界に住む夏草より先に、
彼女が殺したい相手を殺害
する事です。
それでは、健闘を祈ります。
イッテラッシャイ。”
第5章/入れ替わる世界
奏華を殺した。
私が殺したんだ。
私が横断歩道で、奏華を呼び止めて
しまった。
そのせいで、彼女はスピード違反の
車に轢かれて死んだ。
私はこれから、それを背負って
生きていく。
そして、現実世界は、私が英傑高校に
通った世界線になっている。
でも、奏華は生きていない。
この世界と、並行世界が入れ替わった
からだ。
これから私は彼女を助ける為、
再び並行世界に入る。
でも、正直怖い。
奏華を殺した事で、精神が少し病んで
いる事もそうだが、あの店に
もう一度入り、チケットを買う。
それはつまり、またあの店員に会うと
いう事だ。
本当に、あの店員には会いたくない。
また、あの時みたいに襲われそうに
なったと考えると、ゾッとするんだ。
とりあえず、私は色々な出来事が
重なって、疲れている。
久しぶりに家に帰る事にした。
「お母さん、ただいま。」
そう言えば、英傑高校に行った私は
どんな仕事をしているんだろう。
もしかして、年的に大学生かも。
でも、私のただいまの後に、
お母さんから発せられた言葉は、
衝撃的なものだった。
「ねえ夏草、今日も大学ほったらかして
どこ行ってたの?」
どういう事?
私は英傑高校に通って、私は華やかな
人生を歩んでいると思っていた。
でも、現実は違った。
その後、お母さんに詳しく話を
聞く限り、私は精神を病んで、
大学生の頃から不登校になったらしい。
でも、英傑から大学まで順調に
進んでいた私が、なぜいじめられて
いるのか。
環境の変化に対応できなかったか。
もしくは、奏華が死んだ事による
ストレスかもしれない。
何にせよ、早く奏華を助けないと。
私は、奏華を死なせたかった
わけじゃない。
まずは、奏華が1番幸せな世界線に
入り込んで、その世界でミッションを
クリアする。
そして、この奏華のいない世界と、
奏華がいる世界を入れ替える。
~翌日の朝5時~
昨日の夜、私は早くに就寝したため、
こんなに早い時間に起きてしまった。
早く起きたは良いものの、特に
する事はない。
あの店がいつ開店するかも分からない。
だから、今はする事が無いのだ。
でも、せっかく早く起きたんだ。
久しぶりに、外を散歩してこよう。
~2029年3月3日5時23分~
私は家の鍵を開け、外に出た。
外には少しの雪が、土と混じって
溶け残っていた。
今年の受験日は、3月5日らしい。
受験生は、今は受験で忙しい時期
だろう。
でも、所詮不登校の私は、受験だろうが
そうじゃなかろうが、この世界の私も
前の世界の私も、結局は暇なんだ。
そんな私のする事と言えば、
散歩程度しかなかったのだ。
3月の朝5時は、まだ日が昇りかけた
頃で、かなり肌寒かった為、部屋着に
部屋にこの世界で私が買ったであろう
コートを見に纏い、玄関のドアを
開けた。
もう3月なのに、外ではシンシンと
雪が降っていた。
地面はほんの少しだけ白くなっていた。
恐らく、雪はついさっき降り始めた
のだろう。
家の庭を出て、ゆっくりと道路を
歩いた。
道路にある街灯には明かりが灯っていて
その周りだけ、雪がはっきりと見えた。
気がつくと、私のコートは、雪で
少しだけ白くなっていた。
雪を払おうとしても、それはなかなか
落ちなかった。
何分か、雪を落としながら歩いて、
私は街路樹の下に入った。
そこでも少し雪を落として、
冷たくなった手を擦り合わせたり、
自分の息を吹きかけたりして温めた。
冷たくて少し手が痒い。
足の指先も、少しづつ寒さで痛く
なってきた。
そろそろ家に戻ろうかとも思ったが、
まだ時刻は6時すら過ぎていない。
今家に戻っても、またする事がなく、
自分の部屋で、何も考えずにベットに
横たわって、お母さんの朝ごはんの
支度を待つだけになってしまう。
仕方ないので、もう少しだけ歩く事に
した。
私が歩き出そうとした時、パッと雪が
止んだ。
街路樹の下にいたからか、
コートの雪もほとんど溶けて、
水滴になっていた。
少しコートが湿っている。
そして、私の手は、まだ少し痒みが
残っている。
再び手を温めながら、道を進む。
歩き始めてから、2分か3分
程だろうか。
気がつくと、空が少し明るく
なり始めていた。
どうやら、朝日が登り始めたらしい。
恐らく、時刻も6時を過ぎた頃だろう。「そろそろ、戻ろうかな。」
少しづつだが、さっき薄く積もった雪が
溶け始めている。
私が雪を踏んでも、周りの雪が
少な過ぎて、足跡がどこだか
分からなくなる程、雪が溶けている。
私は少し、早歩きで家まで歩いた。
自分の家に辿り着く頃には
時刻は、朝の6時21分を回っていた。
お母さんは、まだ起きていない。
いつも、朝ごはんが出来るのは6時
40分頃だ。
それまでは、またベットで横になって
YouTubeを観ながら暇を潰す事にした。
部屋に入った途端、何故か全身の
力が抜けた。
そのままベットに倒れ込んだ。
YouTubeを観ようと思っていたが、
そのまま俯けの状態で、ただ時間が
過ぎるのを待っていた。
体を動かしたくなかった。
何もしないでいると、やっぱり奏華の
事を思い出してしまう。
この先、奏華がいる世界に
なったとしても、この罪悪感はそう簡単に消えるものじゃ無い。
本に書いてあった。
並行世界も、1つの世界。
そこでも人が、現実と同じ様に生活して
いる。
自分の世界が良かったとしても、
並行世界が良くならない。
結局、私は何かを犠牲にしなければ、
奏華を助ける事が出来ない。
私は別に、人を傷つけたいわけじゃ
無いのに、必然的に人を傷つけて
しまうのだ。
そんな事を考えてるうちに、
いつの間にか寝てしまっていた。
夢を見た。
私が小学生の頃の夢だ。
奏華が、私の目の前で泣いている。
何故泣いているのか、理由を聞いても
何も答えないで、泣き続けている。
場所は公園だった。
最初は、公園の砂場で彼女は1人で
泣いている様に見えた。しかし、
よく見ると、周りには複数人の子供が
いる事に気づいた。
声は聞こえないが、奏華に何かを
話している。恐らく、
子供達は奏華をいじめているのだろう。
彼女は昔から泣き虫で、
心がガラスの様に脆かった。
だが、子供達の様子もおかしい。
すごく違和感を感じる。
何故か、子供達は奏華では無い何かに
対して、怒っている様に見えたからだ。
泣いている子供も何人か混じっていた。
彼女に怒っていないのなら、
一体何に対して怒りを表して
いるのだろうか。
少し時間が経つと、周りの
子供の1人が、ゆっくりと
奏華に近寄って、強く抱きしめ、
奏華に何かを呟いた。
その子の表情からするに、私は
奏華を慰めているのだろうと感じた。
そして、周りの子供は、ほとんどが涙を
流し始めた。
奏華の涙も、時間が経過するごとに
小さな涙から、大粒の涙へと
変わっていったのだ。
それから、他の子供達も奏華の方へと
近寄って、一緒に泣いていた。
周りに大人は1人もいない。
子供達だけが、この空間で泣いている。
周りに大人は居ないのか、それとも
大人は子供達が泣いているのを
見てみぬふりをしているだけなのか。
何にせよ、子供達だけが大人数で
泣いているのは、とても不気味に
感じてしまう。
そして、私は気がついた。
この公園は今、夜だという事に。
夜の公園で子供達だけが
泣いている映像をどれ程の間、
見続けていたのだろうか。
時間の感覚がまるで無い。
もう、何も考えられない。
だが、そこで初めて、奏華のと子供達の
声が、私の元に届いた。
奏華は最後にホロリと涙を溢し、
私に語りかけた。
その時に、子供達が怒っていた理由も
何となく察しがついた。
『何で、私を…、殺シタノ.. …?」
私、夏草ニ、何かシタカナァ…、。?
何も、シテ..ないよねェ、、?
(“)@@<+<‘ll私が、何か、シタァ?
ねェ、ネェねえ、ネェエヱェ..,?!?..?!’
ワタシ、カナシィョ?
ネェ、ナニカ、言ッッで、ホシイナァ。…?
,@,@“>>+€%==£”\”7~*<€••$•…!」
私は、彼女の言葉を聞いて、
全身から恐怖が込み上げてきた。
全く体が動かない。
この場から、今すぐにでも逃げ
出したいのに、体が全く言うことを
聞いてくれないのだ。
そして彼女は今まで、顔を下に向けて
泣いていた。
でも、この後の言葉を言言いながら、
彼女は初めて顔を上げた。
『ホラ、見テョ…、、。
ワタシノカオ、コンナに、ナッヂャッダ
んだケド..,??!’z、。..:”?!!? ?
ネェ、事故デ、ゴンナ顔ニ、
ナッヂャッダァァァアァ..:)/‘,,.??!,.?!?」
彼女の顔に目鼻は完全に潰れていて、
顔には大量の血が流れていて、
その血は、拭き取っても拭き取っても
またすぐにダラダラと流れてくる。
よく見ると、彼女が流していた涙は、
だんだんとドス黒い色に染まった血に
変わっていったのだ。
頭、目の中、鼻、口の中。
至る所から、血が吹き出す。
その顔を見て、私は絶望した。
それは、彼女が事故に遭った時の彼女の
傷にそっくりだった。
彼女の顔を見る事が出来なかった。
あまりにも悲惨で、見たくなかった。
現実を受け入れたくなかった。
あの時、私は責任から逃げたのだ。
それが今、私に襲いかかってきたのだ。
私は今、彼女と目を合わせる事が
出来ない。
何故って?
そんなの簡単な事だ。
だって、今の彼女には、
“目が無いから。”
彼女の泣き声と、その中にある、
とても大きな怒りを感じた。
そして彼女の顔を見て、
私は改めて自覚した。
私がした事は、
決して許される事ではないと。
そして、私は目が覚めた…
私のベッドと枕は汗と涙でグッショリと
濡れていた。
部屋の外から、お母さんの声が
少しだけ聞こえた。
多分、朝ご飯の支度が出来たのだろう。
私は自室からは出ずに、
今にも泣き出したい感情を抑えて、
大声でお母さんに言った。
「先に食べてて!」
私が自室から出たのは、それから
10分後のことだった。
~ご飯を食べる為にリビングへ移動~
リビングには、もう私のご飯しか
残っていなかった。
お父さんは、少し起きるのが遅かった
からか、寝癖を直さずに会社へ
向かった。
お母さんは、いつも通り洗面所で
ゆっくりと化粧をしている。
そして私は、箸を持った。
米を口に運んだが、食べる気には
ならなかった。
私はそれから味噌汁だけを、
少しづつすすっていた。
そんな事をしているうちに、
お母さんは、化粧が終わり、仕事の
用意が整った様だ。
お母さんは、何も言わずに玄関の扉を
開けて、外へ出て行った。
それから私は、味噌汁以外のご飯を
全て残して、自室に戻った。
昨晩までは、奏華を助けようと
していたのに、今はそんな気に全く
なれない。
あの夢を見て、奏華に恐怖を抱いたのか
彼女の事を考えるだけで、トイレに
行く事すら怖くなる。
それから私は、一度も自室から出ずに、
1日を過ごした。
~午後6時12分~
お母さんが家に帰ってきた。
私は極度の安心感に包まれた。
その時、私は初めて自室から出た。
今日は何も体を動かさなかったせいか、全身がダルく、体が動きずらい。
一度部屋から出たのだから、
せっかくなので、外に出る事にした。
6時の空はもう真っ黒で、空には
満天の星が輝いていた。
その夜空の下を私はゆっくりと
歩いていた。
何も考えずに、ただ前へと進む。
今日は何か甘いものを食べたい気分だが
目の前にあるコンビニには寄らずに、
道路を歩き続けた。
気がつくと、私はあの怪しいコンビニ
へと辿り着いていた。
そこで私は、もう一度世界を変えたいと
思い、店内に入った。
「確か、並行世界に行くには、
チケットが必要だから…
あった、これだ…。
どれにしよう。」
私が迷っていると、店員が私に
話しかけてきた。
「£<+%•%+€&(<€•#.‘&(“€!?…?」
相変わらず、言葉は全く分からないが、
不思議と恐怖は感じなかった。
私はチケットを手に取り、店員に
それを手渡した。
「これ、1つお願いします..,…。」
私はお会計を済ませて、店の外に出た。
“この世界は、貴方が殺人を犯す
並行世界です。
この世界での貴方のミッションは、
この世界に住む夏草より先に、
彼女が殺したい相手を殺害
する事です。
それでは、健闘を祈ります。
イッテラッシャイ。”
第5章/入れ替わる世界
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ある日、勤務時間内に、私服姿でホストクラブに出入りする数人の同僚の不正行為を発見するに至り、それを上司に報告するが、そのことが原因で、先輩や同僚から不審の目で見られるようになる。これにより、彼の組織への嫌悪感は決定的なものになる。警察という組織の腐敗というテーマよりも、むしろ、社会全体における犯罪と正義の境界と疑念をひとつの作品にまとめました。よろしくお願いいたします。
この作品は完全なフィクションです。登場する組織、個人名、店舗名は全て架空のものです。
2020年10月19日→2021年4月29日
顔の見えない探偵・霜降
秋雨千尋(あきさめ ちひろ)
ミステリー
【第2回ホラー・ミステリー小説大賞】エントリー作品。
先天性の脳障害で、顔を見る事が出来ない霜降探偵(鎖骨フェチ)。美しい助手に支えられながら、様々な事件の見えない顔に挑む。
ダブルネーム
しまおか
ミステリー
有名人となった藤子の弟が謎の死を遂げ、真相を探る内に事態が急変する!
四十五歳でうつ病により会社を退職した藤子は、五十歳で純文学の新人賞を獲得し白井真琴の筆名で芥山賞まで受賞し、人生が一気に変わる。容姿や珍しい経歴もあり、世間から注目を浴びテレビ出演した際、渡部亮と名乗る男の死についてコメント。それが後に別名義を使っていた弟の雄太と知らされ、騒動に巻き込まれる。さらに本人名義の土地建物を含めた多額の遺産は全て藤子にとの遺書も発見され、いくつもの謎を残して死んだ彼の過去を探り始めた。相続を巡り兄夫婦との確執が産まれる中、かつて雄太の同僚だったと名乗る同性愛者の女性が現れ、警察は事故と処理したが殺されたのではと言い出す。さらに刑事を紹介され裏で捜査すると告げられる。そうして真相を解明しようと動き出した藤子を待っていたのは、予想をはるかに超える事態だった。登場人物のそれぞれにおける人生や、藤子自身の過去を振り返りながら謎を解き明かす、どんでん返しありのミステリー&サスペンス&ヒューマンドラマ。
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