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第2章/アイシクル王国

第14話/黒い炎を纏いし魔剣

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ゲーテとの戦闘は、唐突に始まった。

「僕からいかせてもらう。

 魔力解放40%”魔炎/紫”」

僕は、魔炎で先制攻撃をした。
紫色に輝く炎は、ゲーテに向かって勢いよく
飛んでいった。

「魔力解放30%”風刃/百”

 これくらい、俺が攻撃をくらうとでも?」

あの攻撃は、風刃か。
風刃は、その名の通り、風の刃を飛ばす。
この風の刃は、使用者によって数を
十→百→五百と、3段階で増やせる。

今回ゲーテが使ったのは百。
百もあるなら、魔炎は防がれるだろう。

だったら今度は、防ぎきれない攻撃をする。

「行くぞ、ゲーテ。
 
 魔力解放50%”爆炎/紫”」

さっき炎は防がれたが、爆炎によって起こる
風を全ては防ぎきれないだろう。

思った通り、ゲーテは少しだけ、爆炎の影響
を受けて、少し後ろに飛ばされた。

「なるほど、頭いいじゃん。
 でも、俺も負けてられないからな…

 魔力解放50%”魔風/烈火”」

やばいな、アイツ、魔風/烈火を使えるのか。
魔風/烈火は、普通の風ではなく、熱風を
吹かせる事が出来る魔術。
しかも、その風は普通の炎よりも、全然
上の熱さだ。

「ヤバい、避けれないっ…!
 なら、フォルトゥーナッ、
 俺の代わりに、攻撃を受けてくれ!」

「守護神だしね、それくらいしてあげる。」

そう言って、フォルトゥーナは魔風/烈火を
僕の代わりに受けてくれた。

「守護神か。確か、ニエンテが言っていた
 フォルトゥーナって奴か。」

ゲーテがそう言った時、ゼノンが動いた。

「そろそろ僕も、戦いたいんだけど…
 女王ヴィーネの仲間なら、早くこいつを
 殺さないといけないしな?

 魔力付与60%”魔炎/黒”→魔剣グレイス」

なるほど、ゼノンが魔剣士って言われる
理由はこれか。

今、ゼノンは炎魔術を使って攻撃するのでは
なく、その炎を剣に纏わせる。
剣に纏わせる事で、剣の攻撃力を上げれる。
しかも、この炎は継続して纏わせる事が出来ることで、攻撃する時の魔力の消費を抑えることが出来る。それにより、普通の魔術師
よりも、長く戦闘が続けられんだ。

「魔剣グレイス。この剣はただの剣じゃ
 ないんだ。魔力を纏った時に限って、
 攻撃力を底上げしてくれる。

 じゃ、行くぞ…?」

ゼノンは思いっきり、ゲーテに向かって
剣を振り下ろした。
当然、ゲーテはそれを避けた。
だが、避けた瞬間に、更にゼノンは、剣を
ゲーテの避けた方向に振り、剣を当てた。

「ゼノンの身体能力が想像以上に高い。
 今まで女王ヴィーネの側近で居られた
 理由は、この身体能力のおかげか。
 いいや、そもそも黒い炎を使えるのも
 すごい事だ。」

僕は改めて、魔剣士ゼノンの力を思い知る
ことになった。

ゼノンは魔王軍の幹部に、恐れることなく
剣を振っている。

「本当に強い人って、こんな人なんだな…」

僕は確実に、ゼノンよりも劣っていると
感じてしまった。
僕は、自分よりも強い敵には絶対にビビる。
だから、ゼノンが凄く羨ましい。

僕はこれから、ゼノンにたくさん、助けて
もらうんだろうな…

僕は、自分の弱さに嫌気がさした。

「僕も、負けてられないから。
 そろそろ攻撃しないとな…

 固有スキル:ディープ メシア
(攻撃の後に、同じ威力の黒い光の斬撃
 を自動的に追撃してくれるスキル)

 魔力解放60%”魔炎/紫 デュアル”」

ゼノンに負けてられない。
いずれ魔王エルデに、勝たないといけないの
だからな。

ゲーテは紫一色に染まった。
そして、黒い光の刃に身体を裂かれた。

「何だ、この光の刃は…
 まさか、これが英雄ライメルこ固有
 スキルなのか…?」

よし、僕の攻撃をしっかり受けてる。
ダメージは確実に入っているんだ。
このまま2人で攻め続ければ、僕らは
コイツに勝てるんだ…

「ゼノン、このまま攻める。
 ここで絶対、コイツを始末するぞ。」

するとゼノンは、更に魔剣に魔力を込めて
ゲーテを斬りつけた。

ゲーテは、少しよろけた。

「魔剣士ゼノン、お前がヴィーネの側近
 でいられた理由は分かっさ。
 その強さ、並外れた力を持ってる。

 でも、俺らの事を舐めないで貰いたいな。

 俺らは、魔王の幹部なんだよ…?

 魔力解放60%”セラフィム ゼファー”」

何だ、この風は…?
どこから吹いているんだ、全く分からない。
まさか、今ゲーテが使った魔術のせい…?

周辺にある木々や雑草は揺れ、辺りは
風で埋め尽くされていく…
それだけじゃない。この魔術をゲーテが
使った瞬間、黒い雲が空を覆った。

「こんなに広範囲の魔術は、初めて見た。」

僕は、驚きを隠せない。でも、辺りに風が
吹くだけなら、全く問題はない。
そう思っていた。この攻撃が来るまでは。

辺りに吹いていた風は、一箇所に集中した。
その風は、やがて灰色に染まった。
そして、黒い雲からは雨が溢れ落ちて、
風は更に勢いを増す。

「魔剣士ゼノン、英雄ライメル。
 残念だけど、戦いはここまでかもな。
 君たちは、確かに強かった。
 でも、まだまだ考えが甘かったな。

 黒い風は今から、お前らを殺す…」

ゲーテがそう言った瞬間に、風は僕らの
方に向かって飛んできた。
避けようがないスピードだった。

よく見ると、無数にある風は、1つ1つが
斬撃になっていて、その威力は、さっきの
攻撃より、何倍も上の様に感じた。
見ただけで分かる。”格が違う”って。

その風は、僕らに直撃した。
無数の斬撃が、僕らの体をズタズタに切り
裂き、最後には、その風はものすごい勢いで
弾け飛んだ。
風が弾き飛んだ影響で、僕らは空へと舞い
上がり、その後地面に叩きつけられた。

僕らは、かなりのダメージを受けた。

「コイツは本当に、本気で戦ってたんだ…
 僕らは、本気のディバイン•ラメントの
 実力を、舐めすぎていたんだ…」

僕はこの時、負けを確信してしまった。
でも、ゼノンは諦めていなかった。
目は怒りに満ちていて、魔剣を握るその手は
ずっと力が入っている。
視線はゲーテに向いていて、”いつでも
かかって来いよ…!”って目をしてる。

「ほら、どうしたんだよ、ゲーテッ…!
 僕たちはまだ、死んじゃいない。
 ほら、殺すんだろ?
 早く殺してみろよ、出来るんならなっ!

 魔力付与”爆炎/黒”→魔剣グレイスッ!」

ゼノンは再び、ゲーテに向かって走り出す。
その足が止まる事はなかった。
ただひたすらに、走り続けている。
そして、魔剣を振った。
当然、体力がほとんど残っていないゼノンは
攻撃が当たるはずもない。

「そんなボロボロの体で…
 よくもまぁ俺に向かってくるな。」

「ボロボロ?関係ないだろそんなの。
 僕がお前を殺したいから、僕はこうして
 魔剣を今日も振り続けるんだ。
 僕にも、夢ってやつがあるからな。」

「…夢?どんな夢なのか気になるが。
 残念ながら、お前はその夢を叶えられずに
 俺に殺されて死ぬんだろうな…
 でも、それがお前の選択なんだろ?」

「そうだな、全部俺の選択だ。
 だからせめて、後悔しない死に方を…!

 魔力付与90%”ヘル メア”→魔剣グレイス
 これで、最後の攻撃だろうな…

 この攻撃で、僕は動けなくなるだろう。
 だからせめて、最強の一撃で、お前に
 抗うんだ…!」

ゼノンは、最後の力で、最大の攻撃を
仕掛けようとしている。

魔剣は藍色の光を炎を纏って、なんとも
美しい色をしていた。
その炎の熱は、ゼノンからかなり距離が
離れている、僕の元にも伝わってきた。

そして、ゼノンは剣を振った。

「これで、最後だ…」

第14話/黒い炎を纏いし魔剣














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