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12歳の少年がサムライになれる学校へ
友愛の決意 ~僕のやるべきこと~
しおりを挟む【その人物】はいつから日本警察にいたかはわからない。
しかし気がつけば警視庁公安部の捜査員にまで登りつめていた。
公安警察官はその任務の秘匿性から警察庁内の人事データベースにも名前などの個人情報が一切記載されていない。
いわば一般の警察官とは違う【存在しない集団】、影の捜査員として扱われているんだ。
だから、公安捜査員同士もペアやグループで捜査しない限りお互いの存在を知ることもない。
とにかく目立ってはいけないから存在を消しているんだ。
ただし、1つだけ例外で公安内部で目立つことがある。
それは事件を解決した時だ。
その人物はそれまで未解決だった大きな事件をいくつも解決し、たちまち出世していった。しかし、その人物の顔や素性について知っている者は、公安部内でも誰一人としていなかった。
やがて、その人物は警視庁公安部からZEROのリーダー(裏理事官)へと大出世を遂げた。
これはあまりに異例のことだった。
捜査員は、ほとんどが【キャリア】と言われるエリートコースの人間ではなく【ノンキャリア】と呼ばれる出世できる階級が限られた普通の警察官たちだからだ。
なのにそいつはZEROのリーダーという本来キャリアがつくポストに大出世したからだ。
捜査員たちは最初こそ疑問を抱き不満を持ったが、次第に【その人物】は嫉妬の対象から憧れの【ノンキャリアの希望の星】となった。
だが、日本の警察がおかしくなってしまったのは、【その人物】がZEROのリーダーになってからだった。
【日本警察の暗黒時代】の幕開けだった。
公安の捜査員たちが潜入しているテロ組織にこちらの情報が筒抜けだったり、インターネットなどで捜査員の身元がバレることが続発し、犠牲者が数多く出たんだ。
また、ZEROのリーダーとなった【その人物】は明らかにおかしな命令ばかり下した。
捜査班の解体や優秀な捜査員へのクビ宣告、実働部隊の解散命令・・・
明らかにZEROをダメにする政策しかしないのだ。
おかしい、明らかにおかしい、ZEROは日本の治安、安全保障情報の要、ダメになったら仮想敵国の工作活動、危険な犯罪組織の動きもわからなくなり、どうすることもできなくなる。
そんなことは誰でもわかってるはず・・・まさか・・・リーダーは敵なのか?
そして、ちょうどその頃だった・・・・
友愛君のお父上が【玄勇会のスパイ】という身分を隠して、ZEROのメンバーの一員になりすまして警察にやってきたのは・・・・
そして、彼もリーダーの動向を伺っており、違和感を感じていたのだ。
そして、私もお父上と同じくリーダーに違和感を持っており、お父上となんとか出来ないかと相談していた。
友愛「え、じゃあ佐竹さんも元々は・・・」
佐竹さん「ああ、お父上と同僚でZEROの元メンバーだったよ。」
お父上は、私にだけは信用して自分が玄勇会の一員であると教えてくれた。
そして、自分がアメリカで起きた358テロ事件について疑問を抱いており、ZEROが事件に関してFBIやCIAさえも知らない秘密を知っているのではないか?と思って潜入してきたことまで教えてくれた。
だが、ZEROのリーダーである【その人物】は・・・・
【裏理事官にだけ与えられた権限】と呼ばれるPODAM(ポダム)という部屋に358テロに関する
極秘情報を隠してしまった。
PODAM(ポダム)は警察が保管している【国家を揺るがすほどの超重要機密】が大量に保存されている部屋だ。
そこに358テロに関する極秘情報を入れ、情報に暗号キーをかけ、奥深くどこかへ隠してしまった。
そもそも国も警察上層部も、358に関する事項に関しては、特に厳重な情報統制をしいていたため、
我々ZEROの一員でさえ、情報に触れることができなかったのだ。
このまま真相が闇に葬られないようにするために、そして日本の警察が【その人物】によって完全に腐らせられる前に【その人物】を倒すしかない
という結論に私とお父さんは至った。
やがて上から司令が来たよ、上もやっとリーダーがおかしいと気づいたんだろうな・・・・
上は、好き勝手に組織を荒らしているZEROの【裏理事官(リーダー)】を調べろと私と小島冬樹に任務を与えた。
私と冬樹はリーダーを徹底的に調べたよ。
厚いベールに覆われた謎だらけの人物で、出てきた情報はわずかだが決定的に味方ではないという証拠が1つだけ上がった。
それは全国の公安警察官の情報リストを警察庁の極秘データベースから勝手に持ち出し、それをネットに流出させ犯罪者たちにバラまいていたんだ。
だから、公安の情報が犯罪組織や敵国のスパイに筒抜けだったんだ。当然私と冬樹はこの謎だらけの裏切り者リーダーを逮捕することにした。
そう、忘れもしないあの日・・・・
8年前・・・その日は大雨だった。奴の尻尾を掴むため俺達は奴を尾行していた。奴だけではなく奴の仲間、情報の取引相手も一気に検挙してやろうと考えてな。
やがて、工事が行われているマンションの真下の路地裏に来たところで奴の足が止まった。奴は黙ってこちらを振り向いたよ、真っ黒なレインコートで顔まですっぽり隠したその姿はまるで幽霊や死神その者だった。雨が打ち付け、鉄の匂いが漂うその現場には異様な不気味さが辺りを包んでいた。
佐竹さん「あんたのせいで日本の安全はガタガタだよ、どうしてくれるんだい?」
冬樹「日本の安全神話を守るのが俺達の役目だったんじゃなかったのかい?ところがそのリーダーが犯罪者や他国と内通してるときた。」
その人物「・・・・・・・・・・・・」
奴は黙ったままだった・・・・
佐竹さん「組織もガタガタ、犯罪者に行動は読まれる、よくも好き勝手にしてくれたな・・・」
その人物「・・・・・・・・・・・・」
冬樹「この期に及んでだんまりかい?ふざけんな!」
そう言って冬樹は奴に襲い掛かったよ。
それからのことはあまりに壮絶過ぎて私もハッキリとは覚えていない・・・あまりに辛すぎて必死だったんだ。
奴は化け物だった。特殊警棒1つで我々をズタボロにしてしまった。私と父上は傷だらけ、血まみれになり雨が打ち付けるコンクリートに倒れた。
不思議とコンクリートが冷たくなかったのは、傷だらけで体が熱くなっていたからだろう・・・・
奴は冬樹を警棒でめった打ちにしてから、何度も何度も蹴り飛ばし殴り続けていた。まさにリンチだった。しかし私は、冬樹を助けるために立ち上がることができなかった。動けないように奴に両脚も両腕も折られていたからだ・・・・戦闘不能状態にされていた・・・
そして、何より奴が怖かった・・・奴は戦闘のプロだ、実際に戦場で闘ったことのある人間の動きだった・・・勝てるはずのない怪物だったんだ。
私は卑怯者だ、自分が助かるために死んだふりをするので精一杯だった。
「おい、待て何をしている!」
と 騒ぎに気が付いた警察官や近くの野次馬たちのおかげで、奴は冬樹へのリンチを辞め逃走した。
その時の冬樹はもう私が呼びかけても、口が聞けないほど酷い状態になっていた・・・顔は原型を失い、痣だらけ・・・当然腕も脚も折られており身動きはできなくなっていた。
佐竹さん「ふ、冬樹・・・・・」
冬樹「ぐぅぅぅ・・・ぐぐ・・・こ、このちっぽけな命1つであの化け物にかすり傷を負わせることができたんだ、上出来さ。」
佐竹さん「な、なに言ってんだ、まだ死なせねえよ・・」
冬樹「俺はもうダメだよ・・・後は託したぜ、俺の命・・ちゃんとあいつの逮捕に紡いでくれよな・・・・」
佐竹さん「冬樹・・・冬樹?冬樹!」
それから一時間後、冬樹は亡くなった・・・まだ三十歳の若さで
佐竹さん「私を攻めろ、私を殴ってくれ!私は自分にリンチの矛先が向くことが怖くて君の父さんを犠牲に・・・見殺しにした・・・」
佐竹さんは、泣きながら歯を食いしばり、そう叫んだ。
「・・・・・・・・・・・」
紗江「佐竹さんは何も悪くないわ、同じ立場なら私も何もできなかった・・・・」
母さんは静かにそう言った。
友愛「そいつは警官や野次馬が入らなければ、父さんを完全に殺した後、佐竹さんも殺していたはず・・・順番がたまたま父さんが先だっただけ・・・僕にも母さんにも誰も佐竹さんを攻める資格はないです・・・・でも・・・・」
友愛の涙をこらえた震える声・・・・・
友愛「やっぱり、悔しいな・・・・」
友愛は大泣きした、気が済むまで・・・・
友愛「佐竹さん、そいつの名前は何て言うんですか?」
本名不明、国籍不明、性別不明、年齢不明・・・・ただ1つ、奴はZERO内部で誰にも顔も見せていない、声も聞かせていない・・・・
本当に存在するかしないか疑った者までいたよ・・・味方にさえ顔を明かさないその姿勢は公安警察の鏡とされ、敬意を払われ、姿を見せない0のような存在だった。まさに奴こそZEROそのものだ、と言われ、今、彼を追って捜査している捜査員の間ではコードネームで【0】とあだ名をつけられているよ。
友愛「伝説のZEROか・・・僕のやるべきことが決まりましたよ・・・・」
友愛は涙をふいて、不敵に笑みをこぼす。
友愛「父さん見ていてくれよ・・・・・僕、父さんよりも何千倍、何万倍も強くなっていつか仇をとるから・・・だからまずは国家防衛員養成学校へ入って強くなるよ、父さんの貫いた正義を僕も貫くために・・・」
友愛のその顔には、いつものような弱ヶしさは微塵もなく、たくましい王者のオーラをまとい、ライオンのような勇者の魂が目に宿っていた。
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