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「それは……俺は理生のこと信じてるから」
そう声を発したと同時、瞳からポロリと雫がこぼれて──。
何の涙だろう。
俺は理生のことを信じているのに。
「馨? 泣いてる?」
「泣いて……ないよ……大丈夫」
涙を隠したかったのに、思わず鼻をすすってしまって。
理生がぐるりと俺を正面に向かせた。
フッと触れるだけの口付けを落として、壊れものを扱うような優しい指圧で涙をそっと拭ってくれる。
「泣いてる。やっぱ嫌なんじゃないですか、馨」
「俺は……理生より年上なのに情けないことばかりだ」
理生がぎゅっと俺を抱きしめる。
俺も縋る様に理生の背中に腕を回した。この涙が、自分の意志に反して流れてしまった涙が、ただただ情けなくて。
でも──。
「馨は情けなくなんかないですよ。僕が馨を弱くしたんだったら、ごめんなさい」
温かに包み込む腕に力を込めて、そんな風に謝るから。
俺は腕の中でフルフルと首を横に振った。
「いつの間にか俺の心の中は理生でいっぱいになってた。今も。だから、なんだろうね。ちょっとだけ、ちょっとだけ嫉妬しただけ。でも大丈夫だから。理生は生徒会を続けて?」
「馨……」
理生が意に染まないという顔で眉根を寄せる。
俺はせめて年上として、ここだけは譲っちゃいけないんだと思った。
自分の嫉妬心よりも、理生の立ち位置の方がずっと大切だから。理生を信じる気持ちを強く持つことの方がずっと大切だから。
「理生、学校に戻ろう?」
「え?」
理生が目を瞬かせる。
抜け出してきてしまったままだから、帰らなきゃいけないと思った。ちゃんと自分たちの非を清算しなきゃいけないと思った。
帰って、清宮さんに謝ろう。
そう声を発したと同時、瞳からポロリと雫がこぼれて──。
何の涙だろう。
俺は理生のことを信じているのに。
「馨? 泣いてる?」
「泣いて……ないよ……大丈夫」
涙を隠したかったのに、思わず鼻をすすってしまって。
理生がぐるりと俺を正面に向かせた。
フッと触れるだけの口付けを落として、壊れものを扱うような優しい指圧で涙をそっと拭ってくれる。
「泣いてる。やっぱ嫌なんじゃないですか、馨」
「俺は……理生より年上なのに情けないことばかりだ」
理生がぎゅっと俺を抱きしめる。
俺も縋る様に理生の背中に腕を回した。この涙が、自分の意志に反して流れてしまった涙が、ただただ情けなくて。
でも──。
「馨は情けなくなんかないですよ。僕が馨を弱くしたんだったら、ごめんなさい」
温かに包み込む腕に力を込めて、そんな風に謝るから。
俺は腕の中でフルフルと首を横に振った。
「いつの間にか俺の心の中は理生でいっぱいになってた。今も。だから、なんだろうね。ちょっとだけ、ちょっとだけ嫉妬しただけ。でも大丈夫だから。理生は生徒会を続けて?」
「馨……」
理生が意に染まないという顔で眉根を寄せる。
俺はせめて年上として、ここだけは譲っちゃいけないんだと思った。
自分の嫉妬心よりも、理生の立ち位置の方がずっと大切だから。理生を信じる気持ちを強く持つことの方がずっと大切だから。
「理生、学校に戻ろう?」
「え?」
理生が目を瞬かせる。
抜け出してきてしまったままだから、帰らなきゃいけないと思った。ちゃんと自分たちの非を清算しなきゃいけないと思った。
帰って、清宮さんに謝ろう。
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