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セックスをした後、相手が愛おしくてたまらなくなるタイプと、相手がどうでもよくなるタイプに別れるらしい。
漏れなく後者の京馬はベッドのヘッドボードに背を預け、煙草を銜えて紫煙を燻らせている。
俺はもう精魂尽き果ててドロドロのシーツの上でくたばっていると、京馬が煙草を灰皿に揉み消して「シャワー浴びてくる」と立ち上がった。
「どーぞー」
とりあえずギシギシと軋む腰を擦りながら起き上がると、俺は汚れたシーツを引っぺがして再びベッドにダイブする。
すると、寝室から出ていったはずの京馬がひょっこり顔を覗かせて、「お前も一緒に入るか?」などと声を掛けてきやがる。
(どういう風の吹き回しだ?)
「嫌な予感しかしねぇ」
「まぁ、もう一回くらい追加で抱いてやろうと思ったんだけど」
「死ね! 一人で行け! クソジジイ!」
「残念」
クツクツと笑った京馬が部屋から出ていくのを見送ると、俺はベッドの上に大の字に寝そべった。
(ところでこれ……恋人になったってことなのか?)
モヤモヤと考えている間に猛烈な睡魔に襲われて、今度こそ俺は眠りの淵に誘れていった。
***
ぱちり、目が覚めると、汗と体液塗れで眠っていたはずの身体がやけにさっぱりしていて、上半身こそ裸だが、ちゃんと下着とスウェットを身に纏っている。
(マジか。アイツ、頭がイカれたか)
「おはよう、遥」
「は、はよ……な、なぁ、アンタ……頭は大丈夫か?」
「は?」
「こんな甲斐甲斐しく世話を焼くなんて、どういう風の吹き回しだ? 怖ぇーよ……」
思わず後ずさると、京馬がクツクツと笑って、「恋人には優しい男だぞ? 俺は」と片目を閉じて嘯いた。
「……俺たちって恋人なのか?」
「俺はお前が好きだ。お前も俺が好きなんだろ? 恋人以外のなんだっていうんだ?」
「なんかアンタの口から言われるとすべてが嘘くせぇんだよ……」
言ったら、京馬が気味が悪いくれぇニッコリと微笑んだ。
「朝のセックスでもするか?」
「死ね!」
どうやら俺に最高の上玉で、最低の暴君な恋人が出来たらしい。
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