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「本当か……?」

「本当だよクソジジイ。俺が先に惚れてた」 

 途端、京馬きょうまが立ち上がって俺の隣りに腰掛け、掻き抱くようにギュッと抱きしめてきた。

(……らしくねぇな、オッサン) 

 なんて考えちまう反抗的な俺の腕は、京馬の背中に回してやることが出来ねぇ。

 だが――。

「うるさい。先に惚れたのは俺だ。異論は認めない」

 などと、どこまでも勝手なことを言い放ってくるから、俺の口から情けねぇくらい本音がぽろぽろこぼれ出す。

「好きだったよ……ずっと、アンタが。でもアンタが俺を犬にしかしてくんねぇから。だから俺は苦しんでたんじゃねぇか。……ふざっけんなよ」

「黙れ。苦しんでたのは俺の方だ。お前が犬じゃなきゃ捕まってくれないと思ってたから――何度好きだと言いたかったかわかるか?」

(だーから、こっちのセリフだバカ!)

「そんな素振りまったく見せねぇのに気付けるわけねぇだろ。俺さ、察しろって言ったよな? あれもうほぼほぼ告白だったじゃん? なのにかわしたのアンタだろ」

「俺はそんなにポジティブ思考じゃないんだ。そういうことなら、もうかわさない。離すつもりもない。二度とな。――はるか、好きだ。俺だけのものになれ。異論は認めない」

(こっの、暴君野郎が……)

「異議ねぇよ! 死ね! クソジジイ!」

 反抗的だった俺の腕は、その言葉とともにやっとコイツの背中に回った。

 抱き締め返された腕の力に(どんだけ遠回りしたんだよ)と心の中で悪態をつきながら、俺は京馬の口付けを受け入れた。
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