俺様執着男が忠犬になれと命じてくるがアンタに飼われる気などない

１６

　相変わらず京馬きょうまは汗と体液塗まみれの俺をベッドに転がして、俺のすぐそばでヘッドボードに背を預けて煙草に火を点けて紫煙を燻くゆらせ始めた。

「俺、いつまでアンタの拾われ犬してりゃあいいわけ？　どう躾ようとしようが俺はアンタの従順な犬にはならねぇぞ？」

「そう焦るな。まだ品定め中だ」

（何で俺、こんなオッサンに品定めされてんだ？）

「俺は犬になる気はねぇから、従順な忠犬が欲しいなら他所よそ当たれよ。アンタなら選より取りみどりだろ？　それに何か……急に名前呼ばれて不愉快だった」

「女みたいな名前だからか？」

「違ぇよ。変態セフレにいきなり人間扱いされたら、俺がどうしたらいいのかわからなくなる」

　そうだ――。

　まるで人間として求められているようなことをされたら、俺はこの男を正直邪険に出来ない。

　何か、何かよくわかんねぇけど、この男には何かある。

　俺に執着する理由が過去なのかなんなのか知らねぇけど、ただのセフレにしようとされているだけじゃないことくらいはわかる。

「――俺はもう一度、犬を飼えるかな」

「……あ？」

「何でもない。お前まだヤリたりないだろ？　のんびり寝てないで、尻向けろよ。お前が俺の飼い犬になりたいって懇願してくるくらい、いくらでも突っ込んでやるから。――そのくらいじゃないとお前の飼い主にはなれない。いつまで経っても、ただの訓練中の犬だ」

　また、勝手に身体を動かされる。

　グチャグチャに汚された快楽の受け口が男が中に放った粘液で泡立っている。

　そこに容赦なく情動の証が突き立てられ身体を揺すぶられる。

　今日も俺の身体は美味いか？

　アンタにとって、この身体は何か甘いモンとして、疲れた時に舐める飴玉みたいなモンとして、心が融とけるような癒しになっていたりするのか？

（何で俺、こんな奴に気遣ってるんだ？）

　しかし、俺の身体は確実に野火のびのように全身を覆い尽くす快楽に支配され、溺れ、呼吸すらままならない。

（ムカつくけど、コイツといると気持ちいい）

　けれど――。 

　従順な忠犬になってしまったら、すべてが壊れてしまうような脆さを感じてしまうのは何故だろう。

（俺はコイツのそばにいたいがために忠犬になることを反発してんのか？　ありえねぇ）