その執着、愛ですか?~追い詰めたのは俺かお前か~

ちろる

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 十八時前になって、かなめ先輩が帰ってきた。
 朝は少ししか話せなかったせいか、パタパタとスリッパの音を鳴らせて急いでリビングに入ってきた。ミルクが要先輩の足元に擦り寄る。

「おかえりなさい、要先輩」

「ただいま、伊吹いぶきくん。一人で大丈夫だった? 大変だったよね……ちゃんと寝た? 何か食べた?」

 俺はフルフルと首を横に振った。
 社長と電話を切った後も、ただひたすら真白ましろの無事を祈ってぼんやりするのみで、何も手に着かなかった。

「社長から電話が来ました」

 要先輩が目を丸くしている。
 無理もないだろう。俺だって、まださっき社長が言ってくれた言葉が信じられないんだから。何かの夢だと思っているんだから。

 社長と話したことを、そのまま要先輩に伝えると、要先輩が俺の手をぎゅっと握ってきた。

「よかった……認めてもらえたんだ、伊吹くん。待とう? 佐伯さえき先輩が帰ってくるの。佐伯先輩は絶対に伊吹くんを置いていったりしないから。伊吹くんの気持ち、ちゃんと届いてるはずだから。ね? まず、寝よう? ちゃんと、連絡が来たら万全に佐伯先輩のところに行けるように。夕飯作ってるから、伊吹くんは寝てきて?」

 本当に真白は俺を置いていかないかな? 気持ち、届いてるかな?
 要先輩に、泣いて縋りたい自分がいて、でも俺が信じなきゃどうするんだって気持ちを奮い立たせてみるけれど、微かに瞳に涙を滲ませてしまって。

 でも──。

「要先輩。俺、明日から真白の家に帰ります。真白の家で真白を待ちます」

 要先輩が心配そうに瞳を揺らしたけれど。
 俺の手を握る指にますます力を込められて、崩れ落ちそうになったけれど。

「わかった。伊吹くんのやりたいようにして? とりあえず今は寝てきて? ね?」

 俺は唇を嚙みしめてゆっくり頷いて、借りている一室に入り、スーツを脱ぎ捨ててスウェットに着替えてから布団に潜り込んだ。

 疲弊していた身体はすぐに睡眠を欲し、意識が微睡まどろむ。

 明日からはちゃんと会社に行かなければならない。
 ずっとずっと、真白のことだけを考えていたいけれど、俺は俺の日常をこなさなければならない。

 真白も今、闘っているんだから俺も頑張らなくちゃいけない。

 そっと、スマートフォンを取り出して、真白にメッセージを送った。
 見るのは社長なんだってわかっているけれど、他に真白に言葉を伝える術がないから。気持ちはたくさん送っているけれど、形にならないから。

『真白、待ってるよ』

 本当は、『愛してるよ』って添えたかったけれど、見るのは社長だから。
 それは、心の中でギュッと真白に想いが届くように祈りながら。

 真白が恋しくて、会いたくて。

 こめかみに我知らず涙を伝わせながら、俺は意識を手放した──。
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