その執着、愛ですか?~追い詰めたのは俺かお前か~

ちろる

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 真白ましろの家に着いて、インターフォンを鳴らしてみても真白は出てこない。
 仕方なく合鍵で玄関を開ける。

 リビングに続く廊下を歩くと、心臓が胸の外へ飛び出しそうに動悸を打つ。
 真白に、第一声、何て声をかけたらいいんだろう。今更、俺は真白に何を話しかけたらいいんだろう。もう真白は俺を追って来ていないのに。

 真白は、最後まで俺に愛していると言ってくれていたのに。

 そっとリビングをくぐると真白が居なかった。
 時間も時間だし、もう寝たのかな?と静かに寝室のドアを開けてみても真白が居ない。

 どこかへ出かけているのか? まさか、もう俺以外の人と……?
 今日、会社を休んでいたのだって、俺以外の人と会っていた可能性もある。そう考えたら、なんだか涙が滲みそうになって。

 とりあえず、今しがたまで南波ななみちゃんと呑んでいた酒の酔いを醒まそうと、水を取るために冷蔵庫があるキッチンへ向かう。

 キッチンは対面式のカウンターでL字型に仕切られていて、俺は冷蔵庫のすぐそばにある電気のスイッチを押した。真っ暗なキッチンに照明が灯る。

 そこで──。

 真白が、血まみれで倒れていた。
 腹に包丁が刺さっている。

「ま……しろ……?」

 気が動転して、頭が思考を停止して床に膝を折りそうになったけれど、すぐに真白に駆け寄って、呼吸をしているかどうかを確認する。

 意識はないけれど、幸い、脈はあって。
 けれど、おびただしい出血量に焦ってスマートフォンを取り出して救急車を呼んだ。たった、三文字をタップするだけなのに指がブルブル震えて。

 真白の倒れているすぐ側に、何か白い用紙があった。
 少しだけ、真白から流れる血で汚れている白い用紙があった。

 何だろうと、手を伸ばしてすくい上げてみると──。

伊吹いぶき、愛してる』

 たった、たったそれだけ書かれていた。
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