その執着、愛ですか?~追い詰めたのは俺かお前か~

ちろる

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「僕は怖いんだ。伊吹いぶきが離れていくことが」

 俺の後孔に指を挿し込んで、吐き出した熱を掻き出しながら真白ましろがポツリとそうこぼした。まだ痛みが残るそこをうごめく指の動きに「んっ」と吐息を漏らしながら、その言葉を耳に入れた。

「離れていくようなことをしているのは真白だろ? 真白は変わった。前はもっと優しかった。最近は、俺を苦しめることしかしない。真白の考えていることが全然わからない」

「伊吹。僕はね? その気になれば伊吹をこの部屋に閉じ込めることだって出来るんだよ? 本当ならそうしておきたいんだ。でも何故それをしないかわかる? 伊吹の体裁を考えているから。僕はいつだって伊吹のことを最優先に考えているよ? それがわからない?」

 違う、全然違う。
 閉じ込める? 俺の体裁? そもそもまず、そんな発想がおかしいことにどうして真白は気付かないんだろうか。

 昔の真白は純粋に俺を愛して最優先してくれていた。
 けれど今は、真白の歪んだ愛情で俺を括り付けているだけだ。

「シャワー行ってくる」

 立ち上がった俺の手首を真白が掴んだ。
 そのまま引き寄せられ噛みつくように口付けられる。無理やり唇を割って舌を絡め取られ、強引に固着させられ、そっと離れた。

「伊吹。僕はちゃんと愛してる。だから伊吹も僕をちゃんと見て?」

 何も言葉を返すことが出来なかった。
 黙って真白の手を振りほどいてベッドから降りた。

 真白に背を向けた途端、瞳が滲み出す。
 じわじわと視界に水滴が溜まって、やがて頬を伝った。

 出来ることなら一人になって距離を取りたかった、今は。
 でも、俺たちは真白のマンションで同棲しているから、一人になることも叶わない。常に真白の監視下に置かれている。

 逃げ場など、どこにもない──。
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