テメェを離すのは死ぬ時だってわかってるよな?~美貌の恋人は捕まらない~

ちろる

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 一呼吸置いた小鳥遊たかなしが、何か出来の悪い子供に呆れるような双眸そうぼうでポツンと呟いた。

「好きって言ってないからですよ」

 小鳥遊の言葉にポカンとしてしまうと、念を押すようにもう一度「好きって言ってないからです。風早かざはや先輩が主任に一度も!」と繰り返した。

(迷い……?)

「俺、アイツに一度も好きだと言っていなかったのか……?」

「はい、ただの一度も。付き合う時も『わかった』って言ったっきりで、愛してるどころか好きとも言わない。求めるのはいつも主任ばかり。面と向かって何も言ってくれないのは男と付き合う迷いがあるんじゃないか……ノンケの風早先輩を捕まえて置くのは間違っているのかもしれない。風早先輩のために解放したって言っていました」

(好きだと言っていない……?)

 小鳥遊がそのまま続ける。

「でも、そのことを風早先輩が否定して自分から追い求めて来てくれたら元に戻りたいって。風早先輩を失いたくないんだって。主任も意地を張ってるけど本当は心から愛してるんだって」

「……心から……愛してる……?」

 オウム返しのようにそれだけ呟くと小鳥遊は再び肩をすくめて見せた。

「もう私の取り付く島もないくらい二人共お互いに夢中で意地っ張りでどうしようもないんですからね? いい大人がここまで意地の張り合いしてるなんて、はたから見たら何やってるんだろうって感じですよ。私のことはあんなにハッキリ拒絶したのに、主任にはたった一回もハッキリ想いを伝えていないんです。早く迎えに行ってあげてください。主任、風早先輩のこと、ずっと待ってるんですから」

 俺はタクシーも小鳥遊も捨て置いて、今しがた後にしたばかりの市役所へ駆け出していた。

(迷いなんてねぇよバカ野郎!)
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