テメェを離すのは死ぬ時だってわかってるよな?~美貌の恋人は捕まらない~

ちろる

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 由貴ゆきがこの間片付けて行った部屋は、一週間も経たないうちに元の荒れ果てた状態に逆戻りした。

 灰皿には吸殻が山積みになっていて、もはや揉み消すスペースもない。

 二十二時過ぎ、缶ビールを何本も開けながら現実逃避に明け暮れていると不意に部屋のインターフォンが鳴った。

(こんな時間に誰だよ、うるせぇな……)

 ノロノロと立ち上がって玄関の扉を開けると小鳥遊たかなしが立っていた。

「……小鳥遊? 何でお前がここを知ってる?」

「主任に訊きました。夜這いに来たんですけど、入れてもらえますか?」

 思わずハァと溜め息を吐いた。

「本当に犯すぞ?」

「本望です」

 とりあえずわざわざやって来たものを追い返すわけにもいかず、「すげぇ散らかってるから覚悟しろな?」と言ってリビングへ通すと小鳥遊が固まった。

風早かざはや先輩、どんな生活してるんですか?」

「見てのとおりの生活だ。アイツが居なくなって、俺は完全に腑抜けちまってる。また主任に告げ口するか? 俺が未練タラタラだって」

 小鳥遊がどこか憐れむような視線を俺に向けて「ゴミ袋出してください」と溜め息を吐いた。

「いいよ、別に。何しに来た? まぁ、座れ」

 言いながら、ソファの上に散乱していた空き缶を適当に床に放って小鳥遊を座らせると、仕方がないからインスタントコーヒーを出してやった。

「風早先輩……そんなに主任のことが好きですか? 私じゃ駄目ですか?」

「だから、小鳥遊のことはただの後輩だと思ってるし、俺は主任をずるずる引きずってるっつってんだろ? もう俺のことは追ってくんな。あと一週間ちょいで、俺はお前らの前から消えるから……」

 すると、ソファに座っていた小鳥遊がフローリングに座っていた俺の隣にくっついてきて背に腕を回してきた。

 そのままゆっくり俺の胸を押してフローリングに押し付けて馬乗りになり、スウェットの上から下腹に手を這わせてくる。

「私はいつも寡黙でかっこいい先輩が好きなんです。こんな覇気のない風早先輩は見たくないんです。私で忘れませんか? 主任のこと。夜這いに来たって言いましたよね?」
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