36 / 58
36
しおりを挟む
***
「風早先輩……怒ってますか?」
翌日、誰も居ない喫煙所で一服しているとまた小鳥遊が入ってきて窺うように上目遣いで見つめてくる。
「怒ってねぇって言ったら嘘になるな。俺には忘れらんねぇ奴がいるって話したのに身体の関係とか強引に迫るのはどうなんだ? 小鳥遊ってそんなに貞操観念の緩い奴だったのか?」
まぁ、今まで適当に付き合ってきた女も大概貞操観念が緩くて俺の見た目だけで群がってきた奴ばかりだったし、貞操観念の話をするのなら由貴が一番モラルがなかっただろう。
それなのに、何でこんなに執着しているんだろうかと深く煙を吐き出すと、小鳥遊が真剣な瞳を向けてきた。
「実は昨日私……あの後、風早先輩の後を追って見ちゃったんです。風早先輩が主任に抱き留められていたところ……。別れた恋人って主任なんですか? ――ゲイ……だったんですか?」
(よりにもよって小鳥遊に見られてたか……)
でも、あんなところを見られてしまっていたならもう何を言い訳しても無駄だなって思って。
「俺はゲイじゃねぇ。けど、主任は特別だったんだ。他の男なんて気色悪くて恋愛感情なんて全く湧かねぇよ。アイツだったから俺は惚れたし今も引きずってる」
「昨日……あの後、主任とどうなったんですか? 私の薬で縒りが戻っちゃったとかですか?」
昨日の話をされると頭が痛い。
「まぁ……勢いでそういうことにはなっちまったけど……アイツはもう俺を見てねぇよ。俺は当分引きずるだろうけどな」
「昨日はあんなことしちゃいましたけど……私の行ったことで風早先輩と主任がまた関係を持ったこと……嫉妬してます。でも、私は風早先輩のこと諦めませんから」
小鳥遊の俺への異常な執着は何だ?
(普通、好きな男が男と寝てるなんて知ったら百年の恋も冷めんだろ……)
……と思ったけれど、ある種俺が由貴に抱いている執着みたいなものを小鳥遊も俺にしているんだろうか。
だったら――。
小鳥遊も相当辛い思いをしているってことだよな。
なのに、俺はいとも簡単に裏切られることになるとは、情けないながらこの時は全く考えてもいなかった。
「風早先輩……怒ってますか?」
翌日、誰も居ない喫煙所で一服しているとまた小鳥遊が入ってきて窺うように上目遣いで見つめてくる。
「怒ってねぇって言ったら嘘になるな。俺には忘れらんねぇ奴がいるって話したのに身体の関係とか強引に迫るのはどうなんだ? 小鳥遊ってそんなに貞操観念の緩い奴だったのか?」
まぁ、今まで適当に付き合ってきた女も大概貞操観念が緩くて俺の見た目だけで群がってきた奴ばかりだったし、貞操観念の話をするのなら由貴が一番モラルがなかっただろう。
それなのに、何でこんなに執着しているんだろうかと深く煙を吐き出すと、小鳥遊が真剣な瞳を向けてきた。
「実は昨日私……あの後、風早先輩の後を追って見ちゃったんです。風早先輩が主任に抱き留められていたところ……。別れた恋人って主任なんですか? ――ゲイ……だったんですか?」
(よりにもよって小鳥遊に見られてたか……)
でも、あんなところを見られてしまっていたならもう何を言い訳しても無駄だなって思って。
「俺はゲイじゃねぇ。けど、主任は特別だったんだ。他の男なんて気色悪くて恋愛感情なんて全く湧かねぇよ。アイツだったから俺は惚れたし今も引きずってる」
「昨日……あの後、主任とどうなったんですか? 私の薬で縒りが戻っちゃったとかですか?」
昨日の話をされると頭が痛い。
「まぁ……勢いでそういうことにはなっちまったけど……アイツはもう俺を見てねぇよ。俺は当分引きずるだろうけどな」
「昨日はあんなことしちゃいましたけど……私の行ったことで風早先輩と主任がまた関係を持ったこと……嫉妬してます。でも、私は風早先輩のこと諦めませんから」
小鳥遊の俺への異常な執着は何だ?
(普通、好きな男が男と寝てるなんて知ったら百年の恋も冷めんだろ……)
……と思ったけれど、ある種俺が由貴に抱いている執着みたいなものを小鳥遊も俺にしているんだろうか。
だったら――。
小鳥遊も相当辛い思いをしているってことだよな。
なのに、俺はいとも簡単に裏切られることになるとは、情けないながらこの時は全く考えてもいなかった。
0
お気に入りに追加
87
あなたにおすすめの小説


【完結】生贄になった婚約者と間に合わなかった王子
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
フィーは第二王子レイフの婚約者である。
しかし、仲が良かったのも今は昔。
レイフはフィーとのお茶会をすっぽかすようになり、夜会にエスコートしてくれたのはデビューの時だけだった。
いつしか、レイフはフィーに嫌われていると噂がながれるようになった。
それでも、フィーは信じていた。
レイフは魔法の研究に熱心なだけだと。
しかし、ある夜会で研究室の同僚をエスコートしている姿を見てこころが折れてしまう。
そして、フィーは国守樹の乙女になることを決意する。
国守樹の乙女、それは樹に喰らわれる生贄だった。
【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。
ペガサスサクラ
BL
※あらすじ、後半の内容にやや二章のネタバレを含みます。
幼なじみの悠也に、恋心を抱くことに罪悪感を持ち続ける楓。
逃げるように東京の大学に行き、田舎故郷に二度と帰るつもりもなかったが、大学三年の夏休みに母親からの電話をきっかけに帰省することになる。
見慣れた駅のホームには、悠也が待っていた。あの頃と変わらない無邪気な笑顔のままー。
何年もずっと連絡をとらずにいた自分を笑って許す悠也に、楓は戸惑いながらも、そばにいたい、という気持ちを抑えられず一緒に過ごすようになる。もう少し今だけ、この夏が終わったら今度こそ悠也のもとを去るのだと言い聞かせながら。
しかしある夜、悠也が、「ずっと親友だ」と自分に無邪気に伝えてくることに耐えきれなくなった楓は…。
お互いを大切に思いながらも、「すき」の色が違うこととうまく向き合えない、不器用な少年二人の物語。
主人公楓目線の、片思いBL。
プラトニックラブ。
いいね、感想大変励みになっています!読んでくださって本当にありがとうございます。
2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。
最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。
(この回は箸休めのようなものなので、読まなくても次の章に差し支えはないです。)
番外編は、2人の高校時代のお話。
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
旦那様と僕
三冬月マヨ
BL
旦那様と奉公人(の、つもり)の、のんびりとした話。
縁側で日向ぼっこしながらお茶を飲む感じで、のほほんとして頂けたら幸いです。
本編完結済。
『向日葵の庭で』は、残酷と云うか、覚悟が必要かな? と思いまして注意喚起の為『※』を付けています。

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました
常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。
裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。
ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる