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「風早先輩……怒ってますか?」
翌日、誰も居ない喫煙所で一服しているとまた小鳥遊が入ってきて窺うように上目遣いで見つめてくる。
「怒ってねぇって言ったら嘘になるな。俺には忘れらんねぇ奴がいるって話したのに身体の関係とか強引に迫るのはどうなんだ? 小鳥遊ってそんなに貞操観念の緩い奴だったのか?」
まぁ、今まで適当に付き合ってきた女も大概貞操観念が緩くて俺の見た目だけで群がってきた奴ばかりだったし、貞操観念の話をするのなら由貴が一番モラルがなかっただろう。
それなのに、何でこんなに執着しているんだろうかと深く煙を吐き出すと、小鳥遊が真剣な瞳を向けてきた。
「実は昨日私……あの後、風早先輩の後を追って見ちゃったんです。風早先輩が主任に抱き留められていたところ……。別れた恋人って主任なんですか? ――ゲイ……だったんですか?」
(よりにもよって小鳥遊に見られてたか……)
でも、あんなところを見られてしまっていたならもう何を言い訳しても無駄だなって思って。
「俺はゲイじゃねぇ。けど、主任は特別だったんだ。他の男なんて気色悪くて恋愛感情なんて全く湧かねぇよ。アイツだったから俺は惚れたし今も引きずってる」
「昨日……あの後、主任とどうなったんですか? 私の薬で縒りが戻っちゃったとかですか?」
昨日の話をされると頭が痛い。
「まぁ……勢いでそういうことにはなっちまったけど……アイツはもう俺を見てねぇよ。俺は当分引きずるだろうけどな」
「昨日はあんなことしちゃいましたけど……私の行ったことで風早先輩と主任がまた関係を持ったこと……嫉妬してます。でも、私は風早先輩のこと諦めませんから」
小鳥遊の俺への異常な執着は何だ?
(普通、好きな男が男と寝てるなんて知ったら百年の恋も冷めんだろ……)
……と思ったけれど、ある種俺が由貴に抱いている執着みたいなものを小鳥遊も俺にしているんだろうか。
だったら――。
小鳥遊も相当辛い思いをしているってことだよな。
なのに、俺はいとも簡単に裏切られることになるとは、情けないながらこの時は全く考えてもいなかった。
「風早先輩……怒ってますか?」
翌日、誰も居ない喫煙所で一服しているとまた小鳥遊が入ってきて窺うように上目遣いで見つめてくる。
「怒ってねぇって言ったら嘘になるな。俺には忘れらんねぇ奴がいるって話したのに身体の関係とか強引に迫るのはどうなんだ? 小鳥遊ってそんなに貞操観念の緩い奴だったのか?」
まぁ、今まで適当に付き合ってきた女も大概貞操観念が緩くて俺の見た目だけで群がってきた奴ばかりだったし、貞操観念の話をするのなら由貴が一番モラルがなかっただろう。
それなのに、何でこんなに執着しているんだろうかと深く煙を吐き出すと、小鳥遊が真剣な瞳を向けてきた。
「実は昨日私……あの後、風早先輩の後を追って見ちゃったんです。風早先輩が主任に抱き留められていたところ……。別れた恋人って主任なんですか? ――ゲイ……だったんですか?」
(よりにもよって小鳥遊に見られてたか……)
でも、あんなところを見られてしまっていたならもう何を言い訳しても無駄だなって思って。
「俺はゲイじゃねぇ。けど、主任は特別だったんだ。他の男なんて気色悪くて恋愛感情なんて全く湧かねぇよ。アイツだったから俺は惚れたし今も引きずってる」
「昨日……あの後、主任とどうなったんですか? 私の薬で縒りが戻っちゃったとかですか?」
昨日の話をされると頭が痛い。
「まぁ……勢いでそういうことにはなっちまったけど……アイツはもう俺を見てねぇよ。俺は当分引きずるだろうけどな」
「昨日はあんなことしちゃいましたけど……私の行ったことで風早先輩と主任がまた関係を持ったこと……嫉妬してます。でも、私は風早先輩のこと諦めませんから」
小鳥遊の俺への異常な執着は何だ?
(普通、好きな男が男と寝てるなんて知ったら百年の恋も冷めんだろ……)
……と思ったけれど、ある種俺が由貴に抱いている執着みたいなものを小鳥遊も俺にしているんだろうか。
だったら――。
小鳥遊も相当辛い思いをしているってことだよな。
なのに、俺はいとも簡単に裏切られることになるとは、情けないながらこの時は全く考えてもいなかった。
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