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由貴がシャワーから出て寝室に入っていくのを見届けてから俺はリビングで煙草に火を点ける。
(これから、どうすりゃいいんだろう……)
小鳥遊を落とさなかったら由貴と別れなきゃいけない……でも俺は彼女をそんな勝負に巻き込ませて傷つけたくないし、由貴以外の誰かと付き合うなんて考えられない。
しかも、由貴は俺が勝った場合の望み次第じゃ別れる道を選ぶとか言い始めるし……勝っても負けても由貴と離れなきゃいけないんじゃないのか?
由貴が俺に望んで欲しいものって何だよ。
俺は由貴にどんな不満を抱かせてるっていうんだよ。
他に女や男を作りまくっているアイツに俺が不満を抱くことはあっても、由貴と離れたくないがためにじっと我慢して耐え忍んでいる俺が何をしたっていうんだよ。
煙草を灰皿に押し付けて寝室へ入っていくとやっぱり由貴はもう夢の中にいて、あどけない寝顔を晒していた。
そっとベッドに入って、由貴の年齢の割には恐ろしいほどに肌理細やかな頬に手を添えて撫で擦る。
「由貴……俺の何が不満なのか言ってくれないか……? 直すから……。言葉にしてくんなきゃわかんねぇよ。どうやって察しろっつーんだよ……。俺はお前と離れたくねぇんだ……」
やっぱり、由貴が起きている時には言えない本音がぼろぼろこぼれてきて、何なら涙まで出かかって思わず鼻をすする。
(情けねぇ……。泣きそうとか女々しすぎんだろ、俺)
小鳥遊と付き合えないって言ったら由貴はアイツを手に入れて俺から離れて行ってしまうだろうか。
そうなるくらいなら小鳥遊を傷つけるとしても――。
だが、やっぱり俺にはそんなことが出来るわけもなくて、由貴のように恋人がいながら小鳥遊を二股かけるような真似が出来そうにないから。
この美貌の恋人は、初めから俺が捕まえられるような存在じゃなかったのかもしれない、そう諦めなきゃいけないのに。
どうしても、俺から離れてやることなんて出来そうもないから。
せめて、その時が来るまでそばにおいてもらえるだけで……それで諦めるしかないんだなって思ったら。
また悔し涙が浮かびそうなタイミングで由貴が「颯くん……」なんて寝言をこぼすから、その呼び名に応えるべく掠めるだけの口接けを落とした。
煙草吸った後で悪いな、と思いながら。
(これから、どうすりゃいいんだろう……)
小鳥遊を落とさなかったら由貴と別れなきゃいけない……でも俺は彼女をそんな勝負に巻き込ませて傷つけたくないし、由貴以外の誰かと付き合うなんて考えられない。
しかも、由貴は俺が勝った場合の望み次第じゃ別れる道を選ぶとか言い始めるし……勝っても負けても由貴と離れなきゃいけないんじゃないのか?
由貴が俺に望んで欲しいものって何だよ。
俺は由貴にどんな不満を抱かせてるっていうんだよ。
他に女や男を作りまくっているアイツに俺が不満を抱くことはあっても、由貴と離れたくないがためにじっと我慢して耐え忍んでいる俺が何をしたっていうんだよ。
煙草を灰皿に押し付けて寝室へ入っていくとやっぱり由貴はもう夢の中にいて、あどけない寝顔を晒していた。
そっとベッドに入って、由貴の年齢の割には恐ろしいほどに肌理細やかな頬に手を添えて撫で擦る。
「由貴……俺の何が不満なのか言ってくれないか……? 直すから……。言葉にしてくんなきゃわかんねぇよ。どうやって察しろっつーんだよ……。俺はお前と離れたくねぇんだ……」
やっぱり、由貴が起きている時には言えない本音がぼろぼろこぼれてきて、何なら涙まで出かかって思わず鼻をすする。
(情けねぇ……。泣きそうとか女々しすぎんだろ、俺)
小鳥遊と付き合えないって言ったら由貴はアイツを手に入れて俺から離れて行ってしまうだろうか。
そうなるくらいなら小鳥遊を傷つけるとしても――。
だが、やっぱり俺にはそんなことが出来るわけもなくて、由貴のように恋人がいながら小鳥遊を二股かけるような真似が出来そうにないから。
この美貌の恋人は、初めから俺が捕まえられるような存在じゃなかったのかもしれない、そう諦めなきゃいけないのに。
どうしても、俺から離れてやることなんて出来そうもないから。
せめて、その時が来るまでそばにおいてもらえるだけで……それで諦めるしかないんだなって思ったら。
また悔し涙が浮かびそうなタイミングで由貴が「颯くん……」なんて寝言をこぼすから、その呼び名に応えるべく掠めるだけの口接けを落とした。
煙草吸った後で悪いな、と思いながら。
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