テメェを離すのは死ぬ時だってわかってるよな?~美貌の恋人は捕まらない~

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「おかえりなさい、はやてくん」

「ああ……」

 相も変わらずシャワーを浴びてバスローブ姿でソファの上でなまめかしい染み一つない白い脚を見せつけながら組んでいる由貴ゆきに出迎えられる。

「今日、またあかりちゃんと寄り道していたんですね? 勝負は颯くんが勝ちそうですか? 僕も仕掛けてみたんですが、陽ちゃんはどう動きそうですか?」

「テメェのことは女よりも綺麗過ぎて憧憬しょうけいだとよ。俺を待つって言われた」

 由貴がソファの横に座るようにポンポンと叩いて促してくるのでスーツの上着を放ってネクタイを引き抜きながら隣に腰掛ける。

 すぐに唇を奪われて、熱い舌が咥内こうないを這い回るのを軽く抵抗するように由貴の胸を押してみるけれど、濡れた水音を立てながらこまやかに結わえられる。

(何で勝手に拒むんだ、俺の腕)

 銀糸を引いて離れた唇を由貴が己のあかい舌でぺろりと舐め取りながら「煙草吸われる前にキスしておきました」と微笑む。

「――ねぇ、今は颯くんが優勢みたいですが、キミは僕に勝ったら何を望みますか?」

 そんなの、俺だけを見ろに決まっている。

 だが――。

 俺はその言葉を素直に言える自信がなくて、きっと勝負に勝っても『なんもいらねぇよ』とか言ってしまいそうな自分を容易たやすく想像できる。

 それに、小鳥遊たかなしを捕まえることによって由貴を繋ぎ止めるのだとしたら、彼女があまりにも可哀想だ。

「なぁ、こんな勝負に何の意味がある? 仮にテメェが勝ったとしたら小鳥遊とちゃんと付き合うのか? 小鳥遊を捕まえてもお前は他の奴らと遊び歩くのか?」

「陽ちゃんを捕まえたら、一途に愛するつもりですよ? 相手が颯くんだから僕はこうなんです」

(意味がわからねぇ……。何で俺が相手ならフラフラ遊び回って許されると思うんだよ。俺が由貴に何をしたって言うんだよ)

「じゃあ、別れるか? そこまで俺が憎いなら別れるか?」

 なんて、心にもないことを言ってみたりする。

 俺は由貴を自分から放してやるつもりなんかない。

「颯くん。まだわからないんですか? 僕の言いたいことが……僕はこの二年間ずっと苦しんでいました。キミに」

 ――二年間ずっと……?

 由貴は最初から俺に不満を抱いていたっていうのか?
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