こんな僕の想いの行き場は~裏切られた愛と敵対心の狭間~

ちろる

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「初めまして、葵晴あおはくん? 俺は斗真とうま。よろしく」

「初めまして……」

 どうしよう、帰りたい。

 目の前の白髪はくはつな男性の弧を描くような細い瞳と、口元に湛える笑みは、明らかに色欲を含んだそれで。

 話など何も出来ないと思ったし、そればかりか、僕はこれからこの男性に何をされるかわからないと思った。

 そんな恐怖に苛まれて、指をブルブルと震わせて立ちすくんでいると、斗真さんが「まぁ、座って」と隣の席に促してくれる。

 僕は恐る恐る、斗真さんの隣のバースツールに腰かけて、マスターにいつものジンフィズを注文すると、斗真さんも同じものを頼んだ。

「葵晴くんもゲイなんだって? フリーで俺に会いに来たってことはそういうことだよね?」

「ち、違いますっ……! 僕は、同じ性癖の人に相談したいことがあって来ました」

 斗真さんが訝し気な目で僕を見つめた。

 会ってすぐ、行為に及ぼうとでも思っていたのだろう。僕の乗り気じゃない態度に眉根を寄せた。

「相談?」

 斗真さんが訊き返したタイミングで、僕の目の前にジンフィズが出されて、それを一口、口に含んで、グラスをぎゅっと握りしめた。

「はい……。僕、六年付き合ったノンケの彼氏に女性と浮気されて別れて……でも、その彼がやっぱり僕を好きだって戻ってきて……それで、僕も彼をまだ好きなのに、また裏切られるのが怖くて、ヨリを戻したいのに戻せないんです……。斗真さんはそんな風に裏切られた経験はありますか?」

 斗真さんがクスッと笑った。
 僕をねぶるように見つめて、ややして口を開いた。

「ノンケなんかダメだよ。理解し合えない。俺はテキトーにネットとかで知り合った男と性欲処理してる。付き合うとか、そんなのは求めてない。葵晴くんもそうした方がいいよ。気持ちとか、そんなの求めても無駄なだけ」

 ──そうだろうか。

 僕は、この孤独を埋めてくれる人を探している。気持ちを、求めている。

「僕は……孤独なんです。こんな性癖の僕は、一人で生きていかなきゃいけないってわかってるけど、でも独りが辛いんです」

 思わず瞳を滲ませると、斗真さんが溜め息を吐いて、僕の肩に腕を回してきた。

「じゃあ、俺がその孤独、埋めてあげるよ。──身体で」

 カウンターの下で、片手を下腹部に這わせられて、思わず腰を跳ねさせる。

「やっ……だ! 僕、もう帰ります! すみません!」

 財布から札を出してカウンターに置いて慌てて立ち上がる。

 だけど──。

 斗真さんが僕の手首をぎゅっと握った。
 また、色欲をはらんだ瞳で射抜いてくる。

「帰すと思う? 葵晴くん」
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