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「おーおー、真夜退院おめでとうー。そんでもって二人仲良く同伴出勤か。よっ! 元サヤ! 時也さんの恋のキューピッドのおかげだな? 平和で何よりだ」
真夜がブラウンの瞳を細めて「時也さん、ありがとうございます!」と笑った様子に倣って、俺も「時也さん、おはようございます」と笑顔を向けた。
「真夜引っ越したんだって? 新婚生活はどうよ?」
もはや他のキャストたちも俺たちのこんな会話は日常茶飯事で、誰も奇異の目を向けてくる者もいない。
「うーん、もうラブラブ? 熱々? 昨日も盛り上がっちゃって寝不足だもんね? 宇大くん?」
パチッとウインクして見せる真夜の口を手のひらで塞いで「恥じらいのない男はつまらんのじゃなかったのか?」と諌めてやれば「だって本当のことじゃーん」と嘯いた。
(ああ……もう俺の正真正銘ノンケ発言は誰にも信じてもらえそうにないな……)
「一時はどうなることかと思ったけど、やっぱ真夜は宇大にべったりしてる方が見てて安心するわ。お前らはペアで一つだかんな」
豪快に笑った時也さんに、真夜が「ですよね!」と満面の笑みを浮かべるので(まぁ……確かにこの日常が俺たちか……)と苦笑しつつ頷いた。
「宇大、独立の話はどうなったんだ?」
「とりあえず九条さんが退院するまでは引退はしません。まだ時也さんと真夜とナンバー争いしていたいので」
なんて言ってみせたら、真夜が何やら自信たっぷりに「そのうち俺、ナンバーワンになっちゃうかも?」と小首を傾げると、時也さんが「十年早ーよ、小童が」と笑った。
そこで俺は大事なことを思い出して。
「あ、真夜。俺……今日はアフターの予定あるから一緒に帰れない」
「宇大がアフター!? めっずらしー」
真夜がむぅと唇を尖らせて「新婚早々浮気!? 宇大くんのバカ!」とたちまち拗ねてしまった。
「そんなんじゃない。大事な人に真夜とのことをゆっくり報告したいんだ」
「俺との新婚生活のこと?」
「ああ、そうだ。だから何も心配しなくていい。枕とかじゃないから」
真夜が流し目を向けて、「浮気した分今夜はたーっぷり働いてもらうね? 宇大くん」なんて艶冶に笑んでみせるから。
「ああ、足腰立たなくさせてやるから安心しろ」
そこで時也さんが「あのー……俺もいるんだけど? 完全に二人の世界ってわけ? メルヘンだな、この色ボケどもが」と呆れたように笑って。
「えへ。蜜月の新婚ですからっ!」
(だから声がデカい!)
……と思いつつも、俺も満更でもなかったと言ったら、やはり真夜の言うとおり俺には素質があったんだろう。
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