その火遊び危険につき～ガチで惚れたら火傷した模様～

５８

「エミリさん、それはどういう意味ですか？　真夜まやと俺にストーカーでもしていたということですか？」

　真夜の太客ふときゃくだとは言え、こんな見過ごせない罪に思わず棘のある声音で問い掛けるとエミリさんは一瞬怯んだ様子を見せたが、すぐに開き直ったかのようにヒステリックな声を上げた。

「真夜は私だけのものなの！　どうしてこの三週間一度も家に帰らないの!?　どうして真夜はあなたの家に入り浸っていたのに突然消えたの!?　あなたが隠したとしか思えないじゃない！　あなたが監禁でもしているの!?」

　このさえストーカーはさておき、エミリさんが一日中真夜の部屋を見張っても真夜は帰ってきていないということになる……。

「エミリさん、教えてください。最後に真夜を見たのはいつですか？　欠勤する前に見かけましたか？」

「……最後に見たのは……三週間ちょっと前にオーナーと一緒にタクシーに乗っていったけど……」

（九条くじょうさんと一緒に……？）

　三週間ちょっと前とは、真夜が行方をくらませた日と重なるんじゃないだろうか……？

「すみません、エミリさん。ちょっと電話を掛けてもいいですか？　真夜のことで気がかりなことがあります……」

「か、構わないけど……本当に真夜のことでしょうね!?」

　ヒステリックに喚わめくエミリさんを横目に俺はスマートフォンを取り出して少し離れた場所に移動して九条さんに電話を掛けた。

『もしもし？』

　電話に出た九条さんはいつもと変わらない様子だった。

　だけど――。

「……九条さん？　真夜はそこにいるんですか？」