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「宇大ちゃん何かあった? めっちゃ表情暗いけど……」
「……え?」
今日も亜美さんが来店してくれていたのだけれど、公私混同しているつもりはないし完璧に営業スマイルを貼り付けていたはずだが、さすがに長年の付き合い。
「すみません……。顔に出てましたか? 亜美さんには敵わないですね……」
「何年宇大ちゃんと付き合ってると思ってんの。この間はあんなにフェロモン振りまいてたくせに今日は別人だよ?」
「実は……恋人が行方をくらませたんです……。今どこでどうしているのかもわからなくて……」
亜美さんのグラスにシャンパンを注ぎながら(情けなさ過ぎるな……)と思わず自嘲しつつも正直に答えると、やけに真摯な眼差しを向けられてしまった。
「大丈夫なの? 売りやってたんでしょ? またそっちに戻っちゃったとか?」
「俺もそれを心配しているんです……。ただ、ずっと俺の家で半同棲みたいに過ごしていたので相手の家すらわからないから、どこを探せばいいのかもわからなくて……。まだ行方不明になって一日なので様子を見てもいいんですが……。でも――」
思わず言葉を切ると、亜美さんは心配そうに俺の顔を覗き込んでくるからどこまでも縋りつきたい気持ちになってしまう。
「俺、最低なことをして傷付けてしまって……。例えまた会えてももう恋人に戻ることは出来そうになくて……」
「なーに弱気になってるの! 傷付けていなくなったんなら宇大ちゃんのことでいっぱいいっぱいになるくらい宇大ちゃんのことしか考えてないってことでしょ? それが例えプラスな気持ちでもマイナスな気持ちでも。その子の中に宇大ちゃんがいる限り何かを動かせるチャンスがあるの! それが何かはわからないけれど……必ず何かは動くの。共通の知り合いとかいないの? 駄目で元々なら諦めるのは取り戻す努力してからでも遅くないでしょ? 後悔だけはしちゃだめよ?」
「本当に……亜美さんには敵わないです」
(真夜、いま何をして何を思っている? 俺は真夜にしてしまったことを後悔しているが、このまま会えなくなる後悔だけはしたくない……。勝手を許せ)
「……え?」
今日も亜美さんが来店してくれていたのだけれど、公私混同しているつもりはないし完璧に営業スマイルを貼り付けていたはずだが、さすがに長年の付き合い。
「すみません……。顔に出てましたか? 亜美さんには敵わないですね……」
「何年宇大ちゃんと付き合ってると思ってんの。この間はあんなにフェロモン振りまいてたくせに今日は別人だよ?」
「実は……恋人が行方をくらませたんです……。今どこでどうしているのかもわからなくて……」
亜美さんのグラスにシャンパンを注ぎながら(情けなさ過ぎるな……)と思わず自嘲しつつも正直に答えると、やけに真摯な眼差しを向けられてしまった。
「大丈夫なの? 売りやってたんでしょ? またそっちに戻っちゃったとか?」
「俺もそれを心配しているんです……。ただ、ずっと俺の家で半同棲みたいに過ごしていたので相手の家すらわからないから、どこを探せばいいのかもわからなくて……。まだ行方不明になって一日なので様子を見てもいいんですが……。でも――」
思わず言葉を切ると、亜美さんは心配そうに俺の顔を覗き込んでくるからどこまでも縋りつきたい気持ちになってしまう。
「俺、最低なことをして傷付けてしまって……。例えまた会えてももう恋人に戻ることは出来そうになくて……」
「なーに弱気になってるの! 傷付けていなくなったんなら宇大ちゃんのことでいっぱいいっぱいになるくらい宇大ちゃんのことしか考えてないってことでしょ? それが例えプラスな気持ちでもマイナスな気持ちでも。その子の中に宇大ちゃんがいる限り何かを動かせるチャンスがあるの! それが何かはわからないけれど……必ず何かは動くの。共通の知り合いとかいないの? 駄目で元々なら諦めるのは取り戻す努力してからでも遅くないでしょ? 後悔だけはしちゃだめよ?」
「本当に……亜美さんには敵わないです」
(真夜、いま何をして何を思っている? 俺は真夜にしてしまったことを後悔しているが、このまま会えなくなる後悔だけはしたくない……。勝手を許せ)
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