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「――それに、お前もそろそろ独立を考えているって聞いた。俺もお前の歳くらいの頃に経営に回ったからな。真夜まやは俺に恩義があるから店は辞めないと言ってくれてる。だから、宇大うたがいま引退時ってことは……真夜とはこのまま終わらせた方がいい」

 確かに、俺はもうプレイヤー(すなわち現役)からは身を引いて経営に回る時期だと前々から考えてはいた、いたけれど――。

九条くじょうさんの言うとおり、俺はそろそろ独立を考えていました。でも……。真夜とこんな状態で……真夜も俺を好きなばかりに苦しんでいるなんて言われたら……。俺はアイツを置いて辞めることは出来ません」

「だけど、お前は真夜を苦しめただろ? 真夜はそれに酷く落ち込んでる。もう見ていられない程に。もともとかたくなだったアイツの心は更に疑心暗鬼だ。もう宇大のことは信じられないかもしれない。信じたとしても……また不安になるだけだ。俺は真夜が苦しむ姿を見たくないんだ」

 俺がいることで真夜が苦しんでいる……。

 真夜を愛していた気持ちも本当だが、真夜を傷付けてしまったのも本当だ……だとしたら、俺はやはりアイツの前から去らなければ苦しめるだけなのだろうか。

「真夜と……話がしたいです。駄目……ですか?」

「話しても無駄だと思うぞ? 真夜の心は親代わりの俺でさえかしてやれない。まして、真夜を愛して、そして傷付けたお前と話すなんて残酷だと思わないか?」

 確かに残酷かもしれない。
 残酷かもしれないけれど、このまま性別を越えてまで渇望した真夜を手放して去るだなんて我が儘だけれど俺には無理だ。

 俺は絶対に真夜を裏切らないし、絶対に離れたりなんかしないと信じてもらいたい。

 だけど――。

 それを証明するには、俺が行った暴行はあまりに酷すぎて……傷を負って生きてきただけではなく、まだ年若い真夜の心を打ち砕くようなことをしてしまった俺はやはり去るしかないのだろうか……?
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