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 最後の客の見送りをしてバックヤードで私服に着替えて真夜まやがシャワーから出てくるのを待っていると、妙にかげりを帯びた表情で出てきた。

「……宇大うたくん」

「ん? どうした? 真夜」

「ごめん……俺、今日は帰れない……」

 半同棲を始めてここ一ヶ月、真夜は俺以外の男とは一切会わず一筋でいてくれたので突然の言葉に眉をひそめる。

「どうして?」

九条くじょうさんと会うんだ……」

「……は?」

 何故、今更になって九条さんと会う必要があるのか、真夜はもうフラフラと男漁りをする必要などなくなったのに何故だ?

「――それは九条さんと寝るという意味か?」

「寝ない! 九条さんだけは……特別なんだ。あの人がいなかったら俺は今も売りやってた。恩人なんだ……。でも、……相談したいことがあって……今日は九条さんに会って話したいことがある」

「話すだけなら遅くなってもいいから帰ってくればいいだろう。今日は帰れないなんて、朝まで九条さんと一緒にいるつもりか? それなのに寝ないだなんて誰が信じられる?」

 きつめの返事をしたら、真夜はまた一瞬酷く傷ついたような顔をするから少しばかり良心が痛まなくもなかったが、もう俺以外の男とは関係を持って欲しくなかった。

「宇大くんはそんなに俺のことが信用できない?」

「起きて待ってるから帰ってこい。話が済んだらすぐに。帰って来なかったら浮気と見なす。俺を失望させないでくれ」

「だ、だから帰れるかわかんないって言ってるじゃん! ちゃんと真剣に話がしたいだけ! 何もしないよ! どうして疑ってかかるわけ⁉ 宇大くんがそんなに俺を疑うんだったら俺だって信じられなくなる!」

 それだけ叫ぶと真夜はさっさと私服に着替えてバックヤードから出て行ってしまった。

 ――俺が悪いのか? 俺が狭量きょうりょうなのか?

 でも、これまで男を絶やしたことのない真夜だ。
 それにアイツの性依存は毎日解消してやらないといけないくらいのものなのに今晩はどうするつもりだと言うんだ?

(〝ずっと〟なんてそばにいられるかわからないと言ったあの言葉がわだかまる……。浮気しに行くって言ってるようなものだろう……)
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